ネオ東京の謎解き「青い部屋の悪夢」

　それは、深海の底を思わせる、異様な静けさに包まれた部屋であった。壁、天井、床、そして調度品のすべてが、不気味な青色に染められている。その中央に、一人の男が倒れていた。男の名は、神崎公平。資産家として知られる彼は、その青い部屋で、誰にも気づかれることなく、息絶えていたのだ。

　部屋は、完璧な密室であった。窓は内側から施錠され、扉もまた、厳重に閉じられていた。外部からの侵入を思わせる痕跡は、一切ない。それどころか、室内にも、争った形跡すら見当たらない。神崎は、まるで眠るように、静かに死んでいた。

「密室、か……」

　事件の知らせを受け、現場に駆けつけた明智光輝は、青い部屋をじっと見つめ、そう呟いた。彼の瞳は、いつものように、好奇心と知的好奇心で輝いている。

「しかし、これはただの密室ではない。何か、異様なものが漂っている……」

　明智は、部屋の中をゆっくりと歩き始めた。彼の目は、まるでレントゲンのように、あらゆるものを透視していく。壁の染料、床の材質、そして神崎の遺体。そのすべてが、彼にとっては、謎を解くための手がかりとなる。

「この青色……」

　明智は、壁に手を触れた。その冷たい感触が、彼の脳裏に、ある映像を呼び起こした。それは、深海の底で見た、青い光景。

「まさか……」

　明智は、部屋の隅に置かれた、一つの水槽に目を留めた。その中には、熱帯魚が泳いでいる。しかし、その水は、ただの水ではなかった。それは、青い染料で染められた、異様な水であった。

「この水が、密室の鍵か……」

　明智は、水槽の水を調べ始めた。そして、ついに、彼は発見した。水の中に、微量の毒物が溶け込んでいることを。

「神崎は、この水を飲んだのか……？」

　しかし、それでは、密室の謎は解けない。神崎が毒を飲んだとしても、部屋が密室であることには変わりない。明智は、再び、部屋の中を調べ始めた。そして、ついに、彼は、ある事実に気づいた。

　部屋の壁には、微細な穴が開いていた。それは、まるで、針で刺したような、小さな穴であった。そして、その穴は、水槽へと繋がっていた。

「この穴が、密室のトリックか……」

　明智は、穴に耳を当てた。すると、微かな音が聞こえてきた。それは、水の流れる音。

「神崎は、この穴を通して、毒水を飲んだのか……？」

　明智は、神崎の遺体を調べ始めた。そして、ついに、彼は、ある事実に気づいた。神崎の口の中に、微量の毒物が残っていることを。

「やはり、神崎は、この毒水を飲んだのか……」

　しかし、それでは、まだ謎は残る。誰が、どのようにして、神崎に毒水を飲ませたのか？そして、なぜ、密室にする必要があったのか？

　明智は、部屋の中を、再び調べ始めた。そして、ついに、彼は、ある事実に気づいた。部屋の隅に置かれた、一つの額縁。その中には、一枚の絵が飾られていた。それは、深海の底を描いた、青い絵であった。

「この絵が、事件の真相を握っているのか……？」

　明智は、絵をじっと見つめた。そして、ついに、彼は、すべてを理解した。

「犯人は、この絵の中に、毒水を隠したのだ……」

　犯人は、神崎に、この絵を見せた。そして、神崎が絵に見入っている隙に、穴を通して、毒水を飲ませたのだ。

「そして、密室にしたのは、犯行を隠蔽するため……」

　犯人は、神崎が自殺したように見せかけたかったのだ。

「しかし、その計画は、私の前では、無意味だ……」

　明智は、犯人に告げた。そして、彼は、犯人の名前を、高らかに叫んだ。

「犯人は、あなただ！神崎の妻、美沙子！」

　美沙子は、驚愕の表情を浮かべた。しかし、それは、一瞬のことであった。すぐに、彼女は、冷たい笑みを浮かべた。

「さすがは、明智先生。しかし、証拠はあるのかしら？」

「証拠なら、いくらでもある。まず、この絵だ。絵の中に、毒水の成分が残っている。そして、あなたの指紋も、絵の裏側に付着している。さらに、あなたの部屋からは、毒水の原料となる薬品が発見された。そして、何よりも、あなたが、神崎の遺産を相続することになっている」

　美沙子は、何も言わなかった。彼女は、ただ、冷たい笑みを浮かべていた。

「あなたは、神崎の遺産が欲しかった。そして、そのために、彼を殺した。しかし、あなたの計画は、私の前では、無意味だった」

　明智は、美沙子に告げた。そして、彼は、彼女を逮捕した。

　青い部屋の悪夢は、こうして幕を閉じた。しかし、明智の心には、まだ、深い闇が残っていた。それは、人間の心の闇。そして、その闇は、いつまでも、彼を苦しめるのであった。