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心に残ることば_7(賑やかな孤独)

「孤独」について描かれた私の好きな詩を紹介します。
茨木のり子「一人は賑やか」という詩です。

一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな森だよ
夢がぱちぱち はぜてくる
よからぬ思いも 湧いてくる
エーデルワイスも 毒の茸も

一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな海だよ
水平線もかたむいて
荒れに荒れっちまう夜もある
なぎの日生まれる馬鹿貝もある

一人でいるのは賑やかだ
誓って負けおしみなんかじゃない

一人でいるとき淋しいやつが
二人寄ったら なお淋しい
おおぜい寄ったなら
だ だ だ だ だっと 堕落だな

恋人よ
まだどこにいるのかもわからない 君
一人でいるとき 一番賑やかなヤツで
あってくれ

茨木のり子『おんなのことば』童話屋


思わず口ずさみたくなるリズム感と、爽やかな読後感。
「孤独」を描いているのに、こんなにも軽やかで清々しい。

「孤独」は悪だと思われることが多い。
「孤独」は淋しいものだと思い込んでいる人が多い。
だから人は群れたがる。繋がりたがる。

でも、そうやって群れて繋がっても、何だか居心地が悪いものだ。
「一人でいるとき淋しいやつが、二人寄ったらなお淋しい」

作者の茨木のり子は、「孤独」に対する固定観念を根底から覆す。
「一人でいるのは賑やかだ」と高らかに詠う。

そして「恋人」は、「一人でいるとき一番賑やかなヤツ」であってほしいと願う。
一人で賑やかに過ごせる人、真の「孤独」を知る人は、お互いに惹かれあうのかもしれない。

それは、群れるのとは違う。
「淋しいやつ」のもたれあいではなく、真の「孤独」を知る人こそがお互いに惹かれあい、「恋人」や「友」となるのだ。

「孤独」に足を置いた者の最低限の想像力によって、他者も自分と同じように「孤独」という状況を生きていることに気が付くこと。それが「愛」の出発点であると、精神科医であり評論家でもある泉谷閑示氏は言う(『「普通がいい」という病』)。

そんなかかわり方ができたらいいなと私は思う。
「一人でいるとき一番賑やかなヤツ」
そんな人間に私はなりたい。


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