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下腿義足のソケットの種類

義足のソケットは体重支持による分類懸垂方法による分類に分けて考えると分かりやすいです。

体重支持方法による分類

体重支持方法による分類ではTSB(Total Surface Bearing)式、PTB(Patellar Tendon Bearing)式、差し込み式とに分けられます。

TSB式はシリコーンライナーが登場してから提唱されるようになった体重支持方法です。ソケット全体で体重支持させるという考え方です。

PTB式は主に体重支持に強い膝蓋腱周囲で体重を受けて、その他部分的に体重支持が可能な部位でも体重を支えるというものです。

差し込み式は断端の膝蓋腱で体重は受けるものの、その上にある大腿コルセットでも体重を支えるというものです。大腿部でも体重を支えるというのが前出の2者とは違う点です。

実際の下腿義足ではTSB式とPTB式を合わせたような体重支持方法になっていることが多いようです。

懸垂方法による分類

まず第一にお馴染みのピンロック式です。義足というとこの懸垂方法を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。この懸垂方法はピンと義足ががっちり連結されるので義足が外れなくて安心ですが、シリコーンライナーをきちんと正しく履ける必要があります。そうでないと陰圧吸引現象(またどこかで解説したいと思います)が起きて、断端末に水疱ができたり、潰瘍ができたりします。ですから万人に使える懸垂方法ではありません。

次に近位固定のカフベルト懸垂という方法があります。簡単に言うとベルトでソケットを吊り下げるというタイプのものです。吊り下げると言ってもベルトがきちんと締まっていればピンロック懸垂と遜色のない懸垂能力が得られます。装着方法がシンプルなため高齢者でも扱いやすいです。遠位で強制的に固定されているわけではないので、陰圧吸引現象も起きにくいです。

私の病院では高齢の下腿切断者にはカフベルト懸垂の義足を処方することが多いです。古い義足と感じる方もいるようなのですが、今一度見なされてもいい懸垂方法だと思います。

吸着(吸引)式は懸垂力で言ったら最も理想的な方法だと思います。ソケットと断端でピタッと吸着されれば、断端と義足が一体化し、義足のコントロール性も上がります。よほど適合もいいと、足の裏の感覚が分かる、というユーザーもいるそうです。吸引式は吸着効果が持続するように作られたシステムです。オズールの製品だとユニティシステム(https://www.ossur.com/ja-jp/prosthetics/unity)がそれに当たります。

弱点は断端のボリューム変化に弱いことです。切断術後初期の断端の大きさが変わりやすい時期はこの懸垂方法は避けておいたほうが無難です。緩くなりすぎると義足が脱げてしまいます。

大腿コルセットにより大腿部を締め上げて義足を懸垂させる大腿部固定という方法があります。差し込み式のソケットとセットで使います。断端の負荷を減らせるというメリットがある反面、大腿コルセットが装着者にとって煩わしいのがデメリットです。断端の状態が悪くて他の懸垂方法ではうまくいかない時の手段としては今でも有用な懸垂方法です。

PTS式、KBM式といった懸垂方法も教科書には書かれていますが、これらの懸垂方法は大腿骨の顆部で懸垂させる自己懸垂型の懸垂方法ですが、座った時に膝を曲げるとソケットの壁がズボンを突き上げて膝が曲げられない、ズボンが破れるというトラブルの元になります。他の懸垂方法もあるので、現在ではこの懸垂方法はほとんど用いられることはないと思います。

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