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【TKA術後の臨床分析】必須ポイントから、伸展可動域制限の結論、残存障害の本質まで説明|2023/2/28配信予定

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はじめに

「TKA術後について基本的な知識を復習したい」
「TKA術後の可動域制限や痛みについて知りたい」

そのうち調べようでは、そのうちなんて一生きません。

この動画では、TKA術後の基本から裏側まで説明していきます。

りはメモの活動概要はこんな感じ。

おかげさまで、Instagramでは数千人を超えるセラピストから支持いただいています。

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では本編に進みましょう~。

本編

TKAと術後の対応

TKA(人工膝関節全置換術)は、変形性膝関節症の治療によく用いられる手術になりますね。

まずは復習がてら、変形性膝関節症についても説明しましょう。

変形性膝関節症は、女性や高齢者に多い疾患で、

主な症状は立ち上がりや歩き初めの膝の痛みになります。

末期になると安静時でも痛みが取れず、アライメントの不良が目立ち、

膝が曲がったままの歩容になるのも特徴ですね。

原因は関節軟骨の老化が多く、

関節軟骨が加齢と共に、弾性力が低下し、

使いすぎによりすり減り関節が変形して、痛みを生じさせていきます。

話をTKAに戻して、

変形性膝関節症の病巣は、関節面なので最も深層にあり、

オペを行うには、大腿骨、脛骨、膝蓋骨を露出しなくてはいけません。

人の体は層構造になっていて、骨に達するまでには、

皮膚、脂肪層、筋肉層があり、

これらの層を切開して骨を露出する必要があります。

もちろんですが、切開された軟部組織は損傷されているため、

炎症反応が生じ、

また、修復過程においても柔軟性が低下します。

筋組織が切開されれば、その筋の出力は低下しますし、

伸長性も低下しかねません。

そのためセラピストは、

TKAの手術進入によってどの組織が切開されているのか?
その術式によってどのような影響が出るか?

の2点を押さえて考えを進めるのが大切になります。

この動画では、内側型変形性膝関節症に対する 、

TKA の進入路で幅広く用いられているparapatellar approachを例に説明を続けていきましょう。

押さえるべきポイントは「どの組織が切開されているのか?」と「どのような影響が出るのか?」の2つ。

まずは、どの組織が切開されているのか?について。

多くの場合、前内側進入法を用いて10~12cm皮膚切開し、

オペを開始します。

ちなみに前内側進入法は、内側傍膝蓋切開と正中切開があるのでついでに押さえておきましょう。

皮膚・脂肪層を切開した後は、

膝蓋支帯と膝蓋靱帯の間、そして膝蓋支帯と膝蓋骨の間を切開し、

次に内側広筋を切開します。

すると、前方関節包が現れるので、

関節包を脛骨付着部から膝蓋骨よりも近位の高さまで切開します。

ここまで切開を進めると、大腿骨と脛骨の関節面が見えてき始めますが、

さらに視野を広げるために膝蓋骨を外側に脱臼させ、大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節を露出させます。

膝蓋骨を脱臼させる時、膝蓋骨下脂肪体は鈍的に剥離されるのでコチラも覚えておきましょう。

ここまできて、大腿脛骨関節と、

膝蓋大腿関節が露出し、TKA術が可能になります。

切開などにより損傷された組織をまとめると、

皮膚、脂肪組織、膝蓋支帯と膝蓋靱帯の間、膝蓋支帯と膝蓋骨の間、内側広筋、前方関節包、膝蓋骨下脂肪体になりますね。

ちなみに、内側広筋の損傷を抑えるために、midvastus approach(ミッドバスタスアプローチ)や、

「subastus approach(サブバスタスアプローチ)」が適応されることもあります。

midvastus approachは、

膝蓋靱帯から膝蓋骨上部の腱膜板付着部~内側広筋の斜走線維の走行に沿って筋験のみを切開し、その間から関節内に進入する方法で、

subastus approachは、

膝蓋靱帯から内側広筋付近まで切開して、膝蓋支帯と内側広筋の間から、関節内に進入する方法です。

損傷が少ない分、回復も早くて良いのですが、

オペ技術が必要だったり、困難さゆえな手術時間が伸びてしまう可能性もあるアプローチ方法になりますね。

ではでは、次は「どのような影響が出るのか?」について。

考えなければいけないのは「炎症」と「癒着」になります。

それぞれ説明していきます。

まずは炎症。

TKA術後のリハビリは、損傷をうけた軟部組織の炎症との戦いと言っても過言ではありません。

先ほど説明した通り、たくさんの組織が損傷されるので、

術後の炎症は避けられませんよね。

特に、術後から1週間は炎症が活発で、

腫脹や熱感、痛みが強くなります。

この時期にできる対策としては、RICE(安静、冷却、圧迫、挙上)による、腫脹の管理になりますね。

次は、癒着について。

炎症が落ち着いてくると、組織の修復活動が活発になり始めます。

修復が進むのは嬉しいことなのですが、ここで一つ問題が。

それが組織間の癒着になります。

特に注意が必要なのは、

皮膚ー皮下組織の癒着と、

膝蓋上嚢の癒着。

皮膚ー皮下組織に関して、

皮膚の修復過程は組織の中でも最も速く、1週間程度になるので、

癒着が進みやすい部位でもあります。

これらの組織の癒着が進むと、

膝関節の屈曲が困難になので、

創部の保護や感染に注意しつつ、

術直後から柔軟性の維持・向上を目指した介入は行っておきましょう。

膝蓋上嚢に関して、

この組織は膝関節伸展時に、折りたたまれた構造をして、

その重なっている部分が癒着しやすくりなります。

この折りたたまれている部分が動くことで、膝関節が屈曲でき、

ここが癒着してしまうと、膝関節の屈曲が困難になるので注意が必要ですね。

膝蓋上嚢は、内側広筋と連結を持っているので、

パテラセッテイングなどにより、内側広筋の収縮が行えれば、

癒着は防げます。

TKA術後の伸展可動域制限

術後の伸展可動域制限について説明を続けましょう。

主な要因は「後内側支持機構の緊張」で、

対策としては「後内側支持機構の選択的介入」になります。

それぞれ説明しましょう。

まずは後内側支持機構の緊張について。

TKAでは、膝関節屈曲・伸展位で、

各靱帯が適切に緊張し、適切な可動域を確保できるよう、

コンポーネントの設置位置や、軟部組織の剥離によって調整を行います。

屈曲や内反拘縮に関しては、「内側側副靱帯、後内側の関節包、鵞足」などの、

後内側支持機構を中心とした剥離操作が行なわれ、

膝関節の正常な可動域の確保を目指します。

術前に屈曲・内反拘縮を呈していた症例では、この操作によって、

健常に近い生理的外反位と膝関節伸展位を獲得しますが、

術前に短縮位にあった、その他の軟部組織は、

膝関節伸展・外反方向に、急に伸長される事になります。

ここで主に伸長されるのが、後内側支持機構。

アライメントの急な変化により、後内側支持機構の組織が緊張し、

それにより膝関節伸展時に、後内側支持機構が過度に伸長され、

後内側部の痛みを生じさせます。

膝伸展時に後内側部に痛みがあるから、膝関節伸展できない、

これが膝関節伸展制限の原因になりますね。

また、術中に剥離された組織は、

再癒着しようともするため、剥離した部分に伸長ストレスが加わる事でも痛みが生じます。

これに関しては、痛みと相談しながら、

癒着の予防を行うのが望ましいですね。

次は、後内側支持機構の選択的介入について。

伸展可動域を改善するためには、

制限となっている組織を、選択的に介入し、緊張を解くのがポイントになります。

主に対象となる組織は、以下の5つ。

半膜様筋
後斜靱帯
斜膝窩靱帯
大内転筋腱性部
腓腹筋内側頭

それぞれの走行を確認し、リラクセーションやストレッチを行いましょう。

今回は、起始停止と、簡単な介入方法を説明します。

半膜様筋
起始:坐骨結節
停止:脛骨内側顆内側部から後部、斜膝窩靱帯、膝窩筋靱帯、膝後方関節包、後斜靱帯、内側半月板

肢位:腹臥位
手順:
①大腿遠位内側に存在している、半腱様筋を触知する
②半腱様筋より深部で内側に存在している、半膜様筋を触知する
③半腱様筋と半膜様筋の筋間に手を差し込んで、リラクセーションする

大内転筋腱性部
起始:坐骨枝、坐骨結節
停止:内側上顆上方の内転筋結節

肢位:腹臥位
手順:
①大腿骨顆部を両手で挟み込み、大腿骨内側上顆を触知する
②大腿骨内側上顆から骨に沿って近位に触知を進め、大内転筋腱性部を触知する
③大内転筋腱性部を把持し、大腿骨内側上顆から引き剥がすようにストレッチを加える

腓腹筋内側頭
起始:大腿骨内側上顆
停止:踵骨隆起
肢位:腹臥位
手順:
①高めのクッションなどを用いて、治療側の膝関節を屈曲位にする
② 大腿骨顆部の中央を、セラピストの指で軽く圧迫する
③そこから内側に指を滑らせて半腱様筋・半膜様筋の深部にある、腓腹筋内側頭にストレッチをかける

後斜靱帯
起始:内転筋結節
停止:[主幹部]脛骨後縁と内側半月板 [内側部]半膜様筋腱 [外側部]半膜様筋腱と共に斜膝窩靱帯を形成

肢位:背臥位 or 腹臥位
手順:
①パテラ下縁から膝内側に手を進め裂隙を触知する
②裂隙の境が不明瞭になる部分まで指を進め、内側側副靱帯を触知する
③内側側副靱帯の内側縁から2cm外側にある、後斜靱帯に軽く圧迫を加えつつ上下左右に指をずらす

斜膝窩靱帯
起始:脛骨顆部後内側で半膜様筋腱の合流部位、関節包後内側
停止:腓腹筋外側頭、関節包後外側
肢位:腹臥位
手順:
①高めのクッションなどを用いて、治療側の膝関節を屈曲位にする
② パテラ下縁から膝内側に手を進め裂隙を触知し、そのまま膝関節後面の中央まで指を進める
③「②」の位置から1横指近位にある斜膝窩靱帯に、軽く圧迫を加えつつ上下左右に指をずらす

それぞれ参考にして下さい。

術後残存する障害

ではでは、術後残存する障害について説明していきましょう。

ざっと2つの障害が残存するケースが多いので、これらを説明しましょう。

「知覚異常」
「内側広筋斜走線維の機能不全」

まずは、知覚異常について。

TKA術後では、膝蓋骨内側下部の知覚異常が認められるケースが多く、

これは、TKA手術時の膝蓋靭帯を切開する際、膝蓋下枝と呼ばれる、

知覚を司る神経の一部を切除する場合があるからになります。

ちなみに、神経について軽く説明しておくと、

末梢神経は、運動枝、関節枝、皮枝に分けられ、

運動枝は筋肉に侵入し、筋収縮や弛緩を支配、

関節枝は関節包や靭帯に侵入し、位置覚や運動覚を支配、

皮枝は皮膚に侵入し、皮膚の近くを支配します。

今回ポイントになる神経は、伏在神経と呼ばれる皮枝で、

この神経は、股関節レベルで大腿神経から分岐後、

Hunter管と呼ばれるトンネルを通って、

さらに枝を分岐させながら(膝蓋下枝)、膝蓋骨下部や下腿遠位内側の感覚を支配します。

TKA症例で、膝蓋骨下部や下腿遠位内側に、

何らかの知覚異常がある場合は、このケースを疑いましょう。

また、Hunter管の絞扼である場合も、

同様の部位に知覚障害が生じるのですが、

この場合は、Hunter管を圧迫し、症状が変わるか確認してみましょう。

症状が変わらなければ、膝蓋下枝が切断されている可能性が高いですね。

この場合は、理学療法介入で、

改善させるのは、困難になります。

Hunter管由来の場合は、

Hunter管を構成する、長内転筋、内側広筋、大内転筋、方向筋などの筋肉に原因がある場合が多いので、

これらの筋に対して、リリースなどのアプローチを試みるのがいいですね。

次は、内側広筋斜走線維の機能不全について。

TKA後は、ほぼ前例と言ってもいいほど、

内側広筋斜走線維の機能が低下し、その機能改善に難渋します。

ちなみに、内側広筋斜走線維は、

内側広筋の遠位に存在する線維で、

起始に大内転筋腱をもち、

膝関節の最終伸展や、膝関節の動的安定化のために

重要とされる筋肉ですね。

この重要な筋肉が、機能しなくなってしまう原因としては、

①切開による影響、②神経による影響の2パターンが考えられます。

①切開による影響に関しては、

序盤で説明した通り、TKAでは、

内側広筋を切開するので、切開に伴う損傷の影響や、

栄養血管の損傷による影響、

加えて、血管損傷に伴う出血が血腫を形成し、

その血腫が筋線維内に、浸潤し、

筋線維間の滑走を妨げてしまう可能性も考えられます。

②に関しては、大腿神経や伏在神経の損傷による影響が考えられます。

内側広筋斜走線維には、大腿神経の分枝が最も豊富に存在しているとされていて、

また、伏在神経の運動枝も存在しているとされています。

これらの神経が手術により、切開されてしまっていたり、

何らかの支障をきたしている場合、

内側広筋斜走線維が機能しなくなり、

筋収縮が得られなくなってしまいます。

早期からパテラセッティングなどの訓練を実施しているのにもかかわらず、

内側広筋斜走線維の筋力が改善しない場合、

それ以上の回復が見込めない可能性があるので、

代償手段や、代償動作などを考えていくのもいいかもしれません。

おわりに

正直、1年目の時は、右も左も分からず、

何ならTKAって何の略かも、すぐには答えられないレベルでしたが、

コツコツ勉強するコツをつかみ、

今では、以前とは比べ物にならない知識を手に入れることができました。

まずは1月に30分とかでもいいので、

初めの一歩を進んでみましょう。

大きな一歩は無理でも、小さな一歩なら、

踏み出しやすいはずです。

「勉強しする→臨床で結果が出る→また勉強したくなる→臨床で結果が出る→・・・」のループに入れれば、

今後のPT人生は大きく変わります。

そんなところで、今日のまとめです。

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基礎を身につけて、今後のPT人生を変えたい!という方は、

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携帯がブルっと震えますよ。

ではでは、また次の動画でお会いしましょう。

今日も最後まで見てくださり、ありがとうございました。

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