腰部脊柱管狭窄症による馬尾性間欠破行に対する理学療法案|2023.01.23配信
はじめに
腰部脊柱管狭窄症の基本的な知識について自信がない〜
間欠破行が出てるけど何をすれば効果的なのか分からない💦
腰部脊柱管狭窄症による間欠破行で悩んでる方は、以外と沢山いますよね。
病院で会う患者さんもそうですし、
在宅で生活している方も、
意外と腰部脊柱管狭窄症由来の間欠破行を呈している方が多いです。
数多く向き合う症例なのに、基本的な知識が全然ないのはマズイですよね、、。
この動画では、腰部脊柱管狭窄症における馬尾性間欠破行に対して、
超基本的な知識を説明していきます。
それほど深くはありませんが、その代わりに超最低限必要な事を説明しています。
もっと深く知りたい方は、この知識をベースに学習を進めると、
勉強が捗るはず。
ちなみに、「りはメモ」の活動内容はこんな感じ。
臨床で悩んでいるPT、
無知で悪目立ちしたくないPT、
後輩指導で悩んでいるPTに向けて、
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ではでは、本編に進みましょう〜。
本編
腰部脊柱管狭窄症における馬尾性間欠破行について
腰部脊柱管狭窄症(LCS or LSS)における馬尾性間欠破行は、
「骨増殖,靭帯の肥厚,椎間板の膨隆」などの物理的な狭窄状態下で、
障害されている神経根の虚血やうっ血などの循環障害が加味されることで発現すると考えられています。
今説明した通り、馬尾の血流状態の変化は、
馬尾性間欠破行を考える上で重要になるので、
血管系の解剖学的知識についての理解が必要になります。
特に、静脈に関する知識がポイントになるので、
その辺りを中心に説明を続けていきましょう〜。
ちなみに脊柱管は、椎体・椎間板・後縦靭帯・椎弓・黄色靭帯で囲まれた、
脊髄が通るトンネルのようなもので、
脊髄は、脳の延髄から続く神経線維の束の事ですね。
そしてこの脊髄は、
内側から順に「軟膜→くも膜→硬膜」の3層の膜に覆われていて、
軟膜とくも膜の間の空間が「くも膜下腔」、
硬膜と脊柱管の間の空間が「硬膜外腔」と呼ばれています。
くも膜下腔は、脳室からつづく脳脊髄液で満たされていて、
硬膜外腔は、主に静脈血管と脂肪などで満たされています。
話を静脈に戻しまして、
押さえるべきポイントは、
次の二つのルートになります。
どの様に静脈が循環しているか、確認していきましょう〜。
前正中脊髄静脈
前脊髄静脈
前根静脈
椎間静脈
前内椎骨静脈叢
後正中脊髄静脈
後脊髄静脈
後根静脈
椎間静脈
後内椎骨静脈叢
前内椎骨静脈叢は、硬膜と椎体・椎間板・後縦靭帯の間に、
後内椎骨静脈叢は、硬膜と椎弓・黄色靭帯間に位置して、
硬膜内から硬膜外へ、血液を灌流させています。
次の章で説明しますが、馬尾性間欠破行では、
硬膜周囲の血流がポイントになるので、
しっかり確認しておきましょう〜。
姿勢と馬尾神経症状の関係
腰部脊柱管狭窄症に伴う馬尾神経症状は「歩行,立位,腰椎伸展」で症状が誘発され、
「座位,臥位,腰椎屈曲」などで症状が軽快するとされています。
では、なぜこのように、姿勢の変化によって、
症状が変わるのか?
それは、「硬膜を圧迫する力が、姿勢変化に伴って増減する」からです。
具体例を用いて、もう少し詳しく説明していきましょう。
まずは次のグラフを確認してください。
これは、L4/5高位での硬膜外圧の変化を研究したもので、その結果を示しているグラフです。
背が高いほど、硬膜外圧が高いという事ですが、
腹臥位(後屈)、立位(後屈)、立位(前屈)で、グラフの背が高くなているのが分かりますよね。
これは、腹臥位(後屈)、立位(中間位)、立位(後屈)で、硬膜外圧が高くなっているという事です。
章の初めの方で、腰部脊柱管狭窄症に伴う馬尾神経症状は、
「歩行,立位,腰椎伸展」で症状が誘発されるとお伝えしましたが、
これは、腹臥位(後屈)、立位(中間位)に当てはまり、
硬膜外圧が高まる肢位で、症状が誘発されると考える事ができるかと思います。
ついでに、症状が軽快する肢位と、硬膜外圧の関係もついでに見てみましょう。
症状が軽快する肢位は、「座位,臥位,腰椎屈曲」、
このグラフで、この肢位に近いモノは、
背臥位、腹臥位、座位、立位(前屈)になりますね。
それぞれのグラフを確認してみると、硬膜外圧が低い値となっている事が分かります。
別の研究結果についても、お伝えしましょう〜。
次の2つのイラストを確認してください。
これは、通常歩行、前屈歩行、自転車駆動での硬膜外圧の変化を調べた研究です。
通常歩行では、硬膜外圧が60~100mmHg程度、
前屈歩行では、10〜30mmHg程度となっていて、
前屈歩行で、硬膜外圧が著しく低下している事がわかりますね。
腰部脊柱管狭窄症に伴う間欠破行が出ている症例では、
身体を前屈させて歩行する症例が多いと思いますが、
この歩容は、体を前屈させることで、
硬膜外圧を低下させ、症状を軽快させているためと考えることができますね。
ではでは、そろそろなぜ硬膜外圧が高まると、
症状が誘発されるのか、気になっている頃だと思うので、
説明しちゃいましょう。
大まかな流れはこんな感じ。
「歩行,立位,腰椎伸展」で硬膜外圧が高まる
硬膜周囲の静脈が圧迫される
圧迫により、硬膜周囲の静脈が閉塞する
静脈の閉塞により、馬尾内のうっ血が生じる
馬尾内のうっ血により、動脈血の流入が障害される
馬尾内の虚血が生じる
馬尾内の虚血により、馬尾神経症状が出現する
馬尾の動脈系はそれぞれ
動脈→平均血圧以上
毛細血管→40mmHg以上
静脈→10〜30mmHg以上
の圧で閉塞するとされているので、
静脈が一番最初に閉塞する事が分かるかと思います。
その後の流れについては、
静脈が閉塞すると、血液が循環されなくなるので、
馬尾がうっ血し、うっ血すると血液が入らなくなるので、
動脈血が馬尾に届かなくなり、
血液が届かなくなると、馬尾が機能しなくなるので、
馬尾神経症状が現れる。
こんな感じになります。少しややこしいかもしれませんが、
整理して考えると、そんなに難しくないと思うので、
十分に理解できるまで、動画を止めてもいいので確認しましょう。
アプローチ案について
最初の章で説明しましたが、馬尾性間欠破行の発生は、
物理的な要因による馬尾の狭窄に、循環不良が加わる事で生じると考えられています。
物理的な要因は、骨増殖・靭帯の肥厚・椎間板の膨隆が当てはまり、
これらは、理学療法介入では改善不可能なので、
循環不良の改善に向けた、介入を試みましょう〜。
馬尾神経症状は、腰椎伸展で誘発されるので、
「腰椎伸展」をポイントとした介入が必要ってことになりますね。
ここでは、2種類のアプローチ案を説明していきましょう〜。
①股関節伸展可動域改善
②腰椎後弯可動域改善
まずは、①股関節伸展可動域改善について。
股関節の伸展可動域が低下している状態で、
無理に体を起こそうとすると、
代償として、腰椎の伸展が生じます。
腰椎伸展は、馬尾神経症状を誘発する要因でしたよね。
そのため、腰椎の伸展を起こさないためには、
股関節伸展可動域の改善がポイントになります。
具体的には、
大腿直筋・腸腰筋・長内転筋あたりの柔軟性向上訓練を行うのをお勧めします。
ちなみにこれらの筋肉は、股関節屈曲運動において、大きな寄与率を占める筋肉になります。
大腿直筋が、30.0%、
腸腰筋が、20.8%、
長内転筋が、15.0%、
それぞれの割合は、こんな感じになりますね。
これらの筋肉の柔軟性を高められれば良いので、
方法は、リラクセーションでもストレッチでも、
なんでも構いません。
今回は、ストレッチ方法について簡単に説明しましょう〜。
大腿直筋のストレッチ
大腰筋のストレッチ
長内転筋のストレッチ
大腿直筋のストレッチ
肢位:
腹臥位、股関節軽度外転位
手順:
①片方の手で対象者の足背部を、もう片方の手で対象者の大腿前面の遠位部を把持する
②対象者の膝関節を、痛みのない範囲で最大屈曲させる
③膝関節屈曲位を保ちながら、股関節を伸展させる
ポイント:
・膝関節を屈曲した時に殿部が浮き上がる場合、大腿直筋の短縮を疑える
・膝関節伸展を持つため、膝関節屈曲する事で十分に伸長させる事ができる
・股関節屈曲作用を持つため、股関節伸展で十分に伸長させる事ができる
大腰筋のストレッチ
肢位:
腹臥位、股関節軽度外転位
手順:
①片方の手を対象者の腰部におく
②もう片方の手を、対象者の大腿内側〜前面の遠位部におく
③骨盤の後傾を許容しながら、股関節の伸展を他動的に行う
ポイント:
・股関節屈曲作用を持つため、股関節伸展により伸長できる
・股関節軽度外転位にする事で、腸骨筋への干渉を防げれる
・骨盤の後弯を許容する事で、腸骨筋への干渉を防げれる
長内転筋のストレッチ
肢位:背臥位、股関節屈曲位、膝関節屈曲位
手順:
①片方の手を対側の上前腸骨棘におく
②もう片方の手を、下腿前面の近位部におく
③骨盤の回旋を制限しながら、股関節の屈曲・外転・外旋を他動的に行う
ポイント:
・特に外転を強調して行うと良い
・股関節内転作用を持つため、股関節が外転で伸長できる
・股関節外転運動に不安感や恐怖心を抱き防御性収縮が認められる症例も多いため、その場合は防御性収縮の改善に取り組む方が良い
次は、②腰椎後弯可動域改善について説明していきます。
現在の腰椎後弯可動域を確認できる有用な評価方法として、「PLFテスト」と呼ばれるものがあるので、
そちらも併せて説明していきます。
PLFテストは、腰椎椎間関節の可動性を評価するもので、
この検査の「陰性結果」と、腰部脊柱管狭窄症患者の歩行能力が大きく関わるとも報告されている評価になります。
この検査が陰性になれば、腰部脊柱管狭窄症患者の歩行能力が大幅に上がると言われてるって事ですね。
検査方法は、こんな感じ。
検査肢位:
側臥位
手順:
①両側の股関節を45°屈曲位にする
②上側の股関節を多動的に屈曲させ、大腿が抵抗なく胸部に接触するか確認する
判断:
対象者の大腿が、抵抗なく胸部に接触すれば「陰性」
対象者の大腿が胸部に接触しない、もしくは接触するがかなり抵抗がある場合「陽性」
ポイント:
・腰椎の十分な後弯可動域が確保されると陰性になる
・腰椎前弯さようのある多裂筋のリラクセーションにより、後弯可動域の改善が見込める
・脊柱管狭窄症に伴う間欠性破行の改善のためには、PLFテストの陰性化が重要とされている
この検査が陽性の場合、PLFテストの陰性化を目指した介入を行うのが望ましでしょう。
今回は、具体的なアプローチとして、多裂筋のリラクセーションをお伝えしましょう。
また、多裂筋の筋緊張が亢進していたり、伸長性が低下している場合は、
生活の中で、多裂筋がうまく使えていない可能性が考えられます。
この場合リラクセーションで、馬尾神経症状を一時的に緩和させる事ができても、また再発しかねません。
対策としては、不動状態の多裂筋を、
軽く活動させてあげるのが良いかと思います。
アプローチ方法は、
《【治らない腰の痛み】椎間関節由来の慢性腰痛に対する理学療法》で、
「腰椎に対するエクササイズ」として、紹介しているので、
よければご確認ください。
話を戻して、多裂筋のリラクセーション方法はこんな感じになります。
肢位:腹臥位
手順:
①左右の腸骨稜を結んだ線の中央付近にある、突起を触診する
②突起のすぐ横に付着している多裂筋を、圧を加えながら前後左右に動かす
③「②」を、正中仙骨陵まで行う
ポイント:
・深部まで深く分布している筋肉のため、痛みのない範囲で十分に圧を加える
・第4腰椎や第5腰椎のレベルで、多裂筋の表層を覆うものが筋膜だけになるため多裂筋を効果的にリラクセーションできる
・正中仙骨稜のレベルでは厚い筋膜に覆われていている為、仙骨に押し当てるように痛みのない範囲で強く圧を加えると良い
おわりに
勉強にお金や時間を使うのは勿体無い。
僕もそう思っていた事がありますし、おそらく多くの人が思った事がある悩みだと思います。
それでいて、「周りに取り残されたくない」「知識がなくて困っている」なんて言うのは当たり前ですよね。
たった小さな一歩でも、一歩踏み出す事で、
必ずその世界は変わります。
そんなこんなで、今日のまとめです。
復習用の資料も提供しているので、
欲しい方は、概要欄をご確認ください。
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ではでは、また次の動画でお会いしましょう~。