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【上腕骨外側上顆炎の臨床分析】テニス肘と肘外側の痛みに対する理学療法|2023/2/15配信予定

本ブログはYouTubeの台本を、そのまま掲載しています。分かりやすいオリジナルイラスト付きで確認したい方は、YouTubeKindleで確認してください。


はじめに


「テニス肘について、ほとんど知識がない、、」
「上腕骨外側上顆に痛みが生じる仕組みを知りたい、、」

症例は突然やってきます。

いきなりよく知らない疾患の治療をするのは、

大変ですし、

知識がない事で患者さんとの信頼関係に、傷が入ってしまうかもしれません。

この動画では、上腕骨外側上顆炎について、

PTが知っておくべき基本的な知識を説明していきます。

りはメモの活動概要はこんな感じ。

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では、本編に進みましょう〜

本編

疾患概要と動作との関係

  • 疾患概要

まずは、疾患概要について軽く説明しましょう〜。

症状は、

抵抗性背屈運動時に、

(ものをつかんで持ち上げる動作や、タオルをしぼる動作)

上腕骨外側上顆に痛みが出現する事になります。

上腕骨外側上顆に炎症が起きて痛みを生じさせるから、上腕骨外側上顆炎ってわけですね。

また、テニスプレーヤーに発症する事が多いため、

テニス肘とも呼ばれています。

多くの場合、安静時の痛みはないのもポイントですね。

具体的には、次のような動作で痛みが生じます。

・ドアノブを捻るor開く動作
・スーパーの荷物など物を持ち上げる動作
・フライパンを使うなどの家事動作
・雑巾を絞る動作
・テニス
・コップを持つ動作
・マウス操作やタイピング動作
・ゴルフ
・ペットボトルの蓋を開ける動作

中年以降のテニス愛好家に生じやすいのでテニス肘と呼ばれて、

Thomsenテスト、Chairテスト、中指伸展テストなどを用いて、診断を進めます。

Thomsenテスト
前腕回内位・手関節背屈で保持してもらい、手関節掌屈方向に抵抗を加えて、上腕骨外側上顆の痛みの有無を調べるテスト

Chairテスト
前腕回内位・手関節背屈で椅子を持ち上げてもらい、上腕骨外側上顆の痛みの有無を調べるテスト

中指伸展テスト
第3指を伸展位で保持してもらい、手指屈曲方向に抵抗を加えて、上腕骨外側上顆の痛みの有無を調べるテスト

基本的には保存療法が適応され、難治例では観血療法が選択されます。

保存療法では、ストレッチ、スポーツや家事の休息、湿布や外用薬、ステロイド注射、テニス肘用バンドの装着、などが適応されます。

観血療法は、筋膜切開術、切除術、前進術、肘関節鏡視下手術などがありますね。

それぞれ覚えておきましょう〜。

また、肥厚してヒダ状になった滑膜が、

関節の間に挟まって痛みが生じる、腕頭関節の滑膜ヒダ障害でも、

上腕骨外側に痛みを生じることがあります。

滑膜ヒダ障害の場合、運動時にクリック音が聴取できるので、

上腕骨外側上顆炎と、しっかり鑑別できるといいですね。

  • 動作との関係

次は、動作との関係について。

2つの関係する動作を例に、説明していきましょう。

次の章で、詳しくお話しするのですが、

上腕骨外側上顆炎は、前腕伸筋群の張力がポイントになります。

この章では、前腕伸筋群に強い負荷が加わると、

痛みが生じやすくなる、くらいの認識で進めていきましょう。

テニス
パソコン作業

まずはテニスについて。

テニスでボールを打つ動作は、

フォアハンドストロークとバックハンドストロークなどがありますが、

外側上顆炎は、特にバックハンドストロークで痛みが誘発されます。

バックハンドストロークでは、

ボールをラケットで受けた際に、ボールから強い掌屈力を受けます。

その掌屈力に打ち勝つための、強い背屈筋力が必要になり、

この背屈に作用するのが、前腕伸筋群になります。

結果として、前腕伸筋群に強い負荷が加わり、上腕骨外側上顆に痛みが生じます。

次は、パソコン作業について

上腕骨外側上顆炎では、パソコン作業でも疼痛が発生します。

キーボードを打つ時は、手指のMP関節が屈曲しますよね。

この手指MP関節の屈曲に関わるのが、浅指屈筋、深指屈筋で、

浅指屈筋・深指屈筋が機能する為には、手関節が背屈位になければいけません。

手関節を背屈させる筋肉は、前腕伸筋群で、

長時間のキーボード作業で、前腕伸筋群に、

強い負荷が加わると、上腕骨外側上顆に痛みが生じます。

ちなみに、浅指屈筋・深指屈筋を機能させる為に、

背屈位をとる仕組みは「腱固定作用」と呼ばれ、

背屈位を取る事で、MP関節の屈曲を阻害する総指伸筋を緩ませ、

浅指屈筋と深指屈筋に、適度な張力をもたらす事ができます。

MP関節関節屈曲に働く筋肉は、

他にも、虫様筋、背側骨間筋、掌側骨間筋などがありますが、

これらの筋肉は、PIP・DIP関節の伸展に働き、

キーボードを打つ時は、PIP・DIP関節屈曲位になるので、

主に使われるのは、やっぱり浅指屈筋と深指屈筋になります。

疼痛の原因

ではでは、痛みが発生する原因について説明していきましょう〜。

前の章で、「前腕伸筋群」に強い負荷が加わる事で、

上腕骨外側上顆に痛みが発生するとお話ししたかと思いますが、

正しくは、「上腕骨外側上顆に付着している前腕伸筋群」になります。

上腕骨外側上顆に付着している前腕伸筋群に強い負荷ぎ加わる(強い張力が加わる)と、

付着部である上腕骨外側上顆に、ストレスが加わり、

痛みが発生するというわけです。

では、その原因になっている前腕伸展群とは、何筋だ?と思うと思うので、

説明していきましょう〜。

ズバリ、

短橈側手根伸筋と総指伸筋になります。

それぞれ起始停止はこんな感じ。

短橈側手根伸筋

起始
上腕骨外側上顆、外側側副靱帯、橈骨輪状靱帯
停止
中指の中手骨底背面
神経
橈骨神経深枝C6~C7
ポイント
手関節の背屈と橈屈に作用し、肘関節では屈曲に作用する
短橈側手根伸筋腱は、リスター結節の橈側を通過する同じ作用をもつ長橈側手根伸筋よりも、橈屈作用が弱い

総指伸筋
起始
上腕骨外側上顆、外側側副靱帯、橈骨輪状靱帯、前腕筋膜
停止
示指から小指までの基節骨底に停止後、中心束となり中節骨底に停止。中節骨に停止する前に、外側束を伸ばし終末腱となり末節骨に停止。
神経
橈骨神経C6~C8
ポイント
示指から小指までのMP関節の伸展(独立性は低く、総伸展作用が強い)、肘関節の伸展に作用する
MP関節屈曲位では、手内筋と共同しPIP関節とDIP関節の伸展に作用する
それぞれの腱は腱間結合により固定され、総指伸筋より伸びた外側束には「虫様筋、掌側骨間筋、背側骨間筋」の腱が合流している

もう少し詳しくお話しすると、

短橈側手根伸筋と総指伸筋は、両筋の間の腱膜に、

共同の起始腱があり、

この起始腱が外側上顆を包み込むような構造になっています。

この2つの筋肉の影響が、共同腱を介して、

外側上顆に加わるって事ですね。

ちなみに、尺側手根伸筋も、

前腕伸筋群かつ上腕骨外側上顆に付着するのですが、

今回は、除外しています。

理由としては、

上腕骨外側炎では、中指の屈曲でも痛みが増悪し、

尺側手根伸筋は、小指に付着するので、

関係性が乏しいからです。

短橈側手根伸筋と総指伸筋に、張力が加わる事で痛みが生じる、

主な痛みの原因は、コレになりますね。

あと、追加で痛みを発生させる要因が2つあるので、

ついでに押さえておきましょう。

  1. 腕橈滑液包由来の痛み

  2. 肘筋由来の痛み

1.肘筋由来の痛み

短橈側手根伸筋と総指伸筋の共同腱と、外側側副靱帯の間には、

腕橈滑液包と呼ばれる組織が存在しています。

役割としては、共同腱と外側側副靱帯の摩擦力を軽減する事ですね。

短橈側手根伸筋と総指伸筋の筋緊張が高まっている状態が続くと、

滑液包への摩擦ストレスが増強し、

滑液包炎が発生する恐れかあります。

この、滑液骨炎により、さらに痛みが増強します。

2.肘筋由来の痛み

短橈側手根伸筋と総指伸筋の筋緊張を低下させても、

痛みが取れない場合、

肘筋が原因になっている事があります。

肘筋は、前腕回内位で、

尺骨の内反制動を行なっていて、

テニスのバックハンドストロークでは、

前腕回内位で内反ストレスが加わるので、

ここで肘筋が、内反を制動し、

それが繰り返される事で、肘筋が緊張状態に陥ります。

肘筋は、上腕骨外側上顆に付着しているので、

この筋緊張の亢進が、上腕骨外側上顆にストレスを加え、

痛みを生じさせます。

肘筋の情報はこんなかんじです。

肘筋

起始
上腕骨外側上顆後面、肘関節包
停止
尺骨近位1/4後面
神経
橈骨神経C7~C8
ポイント
肘関節の伸展に作用する
前腕の回内を伴って伸展すると、肘筋の活動が増加する
関節包に起始する線維は、インピンジメントの防止と関節包の安定化に関わる

ついでに確認しておきましょう〜。

運動制限との関係

上腕骨外側上顆炎では、前腕の回内・回外制限が生じます。

なぜ、制限が生じるのか?その辺りをこの章で説明していきましょう。

ざっと3つの要因が考えられます。

  1. 近位橈尺関節の障害

  2. 外側支持機構の障害

  3. 橈骨頭の障害

1.近位橈尺関節の障害

まずは、近位橈尺関節の障害について。

前腕の回内・回外の運動は、主に橈骨と尺骨の間で生じ、

その橈骨と尺骨の間には、近位橈尺関節と遠位橈尺関節が存在して、関節運動に関わります。

要するに、近位橈尺関節と遠位橈尺関節が、前腕の回内・回外に関わるって事ですね。

近位橈尺関節は、橈骨頭と尺骨の橈骨切痕で構成され、

遠位橈尺関節は、尺骨頭と橈骨の尺骨切痕で構成されています。

そして、この近位橈尺関節もしくは遠位橈尺関節の運動が制限されると、

前腕の回内・回外制限が生じる事になります。

肘関節は、近位橈尺関節・腕頭関節・腕尺関節からなる複合関節でもあるので、

上腕骨外側上顆炎により、肘関節の障害がある場合は、

その影響が、近位橈尺関節まで及びます。

肘を動かすと痛みが生じ、

肘が動かせないから、近位橈尺関節も動かせず、

近位橈尺関節が動かせないから、前腕の回内・回外運動が行えない、

といった感じですね。

2.外側支持機構の障害

次は、外側支持機構の障害について。

肘関節は以下の4つの靭帯が、外側支持機構として内反ストレスを制御しています。

橈骨輪状靭帯
橈側側副靭帯
副靭帯
外側尺側側副靭帯

それぞれの靭帯の情報はこんな感じ。

橈骨輪状靭帯
橈骨切痕の前方から後方にかけて橈骨頭を包み込むように走行し、肘関節包と結合する

橈側側副靭帯
上腕骨外側上類から房状に広がり、橈骨輪状靱帯の最外側部表層に付着する

副靭帯
橈骨輪状靱帯と尺骨回外筋稜を結ぶ

外側尺側側副靭帯
外側上顆から尺骨回外筋稜を結ぶ

このれらの靱帯のうち、外側尺側側副靭帯以外の2の靭帯は、すべて橈骨輪状靭帯に付着し、

肘関節に内反ストレスが加わった時には、それぞれの靭帯が内反を制動するのと同時に、

そのストレスが橈骨輪状靭帯に集まります。

橈骨輪状靭帯は、近位橈尺関節の安定性を高める靭帯でもあるので、

この靭帯が、度重なるストレスによって、

損傷してしまうと、近位橈尺関節が正常に働かなくなり、

近位橈尺関節の運動が制限されてしまいます。

近位橈尺関節は、前腕の回内・回外に関わるので、結果として、

前腕の回内・回外制限を招きます。

また、橈骨輪状靭帯には、

上腕骨外側上顆炎の原因筋でもある、

短橈側手根伸筋と総指伸筋も付着しているため、

これらの筋肉の牽引力も加わって、障害されやすい状態にもなっています。

押さえておきましょう。

3.橈骨頭の障害

最後、橈骨頭の障害について。

前腕が回内運動する時、橈骨頭が2mm程度外側に移動し、

橈骨と尺骨が交差する事で、回内運動が達成されます。

近位橈尺関節や外側支持機構障害などによって、回内制限が生じている状態で、

さらに回内しようとすると、橈骨頭がより外側に移動しなくてはなりません。

すると、短橈側手根伸筋と外側支持機構の間に存在する腕橈滑液包へのストレスが強くなり、

それにより滑液包炎を引き起こす可能性が上がります。

滑液包炎を引き起こすと、痛みが発生し、

さらに回内制限をきたすことに繋がります。

ざっとまとめると、

上腕骨外側上顆炎と共に、

近位橈尺関節の障害、外側支持機構の障害、橈骨頭の障害が併発する事で、

前腕の回内・外制限が生じる、という事になりますね。

おわりに

1日1分の学習で、人生は変わります。

1分インプットでも良いですし、1分の復習でも良いです。

1分を毎日できれば、5分を毎日できるようになります。

5分を毎日できるようになれば、10分を毎日できるようになります。

少しずつ増やしていけば、2時間の勉強を毎日、

苦しみなくできるようになります。というか、なりました。

さて、今日のまとめです。

動画を見てくれた皆さんが、パパッと復習できるよう、

まとめ資料をプレゼントします。

受け取り方は、概要欄に。

「りはメモ」を今後も応援して下さる方は、

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お試しあれ。

ではでは、また次の動画でお会いしましょう~。

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