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【メカニズムから紐解く】 痙縮の評価と治療戦略|2022.05.02配信

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はじめに

痙縮ってどうやって介入するの?ストレッチはやってるけど、、、

痙縮の改善がうまく行えない...

多くのリハスタッフの悩みであり、そして多くの脳卒中片麻痺患者の悩みでもある「痙縮」

衝撃かもしれませんが、ストレッチしているだけではよくなりません。

実際に、毎日ストレッチをしていても、思うように改善しない症例が多いのではないでしょうか?

この動画では、現在考えられている痙縮のメカニズムから、評価方法・治療戦略について説明していきます。

実際に、この知識を活用して治療をするようになってから、

痙縮を改善させることに成功しています。

みなさんも、この動画を最後までみていただき、

自分の治療を、結果を変える体験を是非してください。

ちなみにこのチャンネルでは、

複雑で膨大なリハビリに関する知識を、整理して詳しく説明しているので、

有益な情報を見逃したくない方は、チャンネル登録しておく事をお勧めします。

では、本編に進みましょう〜

本編

痙縮の原因

早速原因について説明していこうと思うのですが、

実は、痙縮の明確なメカニズムは現状まだ解明されていません。

解明が進めば進むほど、複雑な仕組みである事が図っていて、

今回は、それらを整理して特に重要だと考えられているものを説明していきます。

痙縮は主に2つの要因から、生じると考えられています。

「非反射性要素」と「反射性要素」の2つです。

「非反射性要素」は、組織の粘弾性の低下を指します。

粘弾性ってのは、伸びやすやみたいなものだと思ってください。

脳卒中後の神経伝達物質やホルモンの変化や、不動などによって、筋肉や腱などの組織が変成し、

組織自体が伸長されにくくなると言う事ですね。

「非反射性要素」の説明はこれでおしまいです。

次の反射性要素の説明はボリュームが、かなり多くなるので一緒にがんばりましょう!

「反射性要素」は、伸長反射の亢進を指します。

伸長反射を十分に理解するために、まず筋紡錘についての説明をしていきます。

「筋紡錘」についての知見は必須になるので、飛ばさず確認してください。

では、筋紡錘について。

筋紡錘は、筋肉の長さを検知する受容器で、筋肉の内部に存在しています。

イメージしずらいと思いますが、しっかり説明してくので安心してください。

筋繊維は、「錐外筋線維」と「錐内筋線維」に分ける事ができて、

錐外筋線維って言うのは、普段イメージしているような筋肉を指します。

この錐外筋線維に挟まれるように、錐内筋線維が存在していて、

この錐内筋線維が、いわゆる「筋紡錘」になります。

筋紡錘の主な構成要素は、

「核袋線維、核鎖線維、Ia群 求心性線維(らせん形終末)、Ⅱ群求心性線維(散形終末)、γ運動ニューロン」。

まずは、登場する単語を押さえましょう。

では、筋紡錘が筋の長さを検知する仕組みを説明していきます。

筋肉が伸長される、つまり錐外筋線維が伸びると、

筋紡錘も一緒に伸長されます。

これは、筋紡錘の両端が、錐外筋線維にくっつくように配置されているからですね。

バネにゴム紐をつけた状態で伸ばすと、ゴム紐も一緒に伸びますよね。

バネが錐外筋線維で、ゴム紐が筋紡錘だと思って考えてみてください。

バネを伸ばす(錐外筋線維が伸びる)と、ゴム紐(筋紡錘 )も一緒に伸びる

こんなふうにイメージすると、錐外筋線維と筋紡錘の関係が分かりやすいかと思います。

筋紡錘が伸ばされたからどうなんだ?って感じですよね。

もう少し詳しく説明していきます。

筋紡錘をもう少し詳細にみてみると、

細胞核が中央に密集している「核袋線維」と、細胞核が一列に並んでいる「核鎖線維」に分けられます。

さらに核袋線維は、Ⅰa群求心性線維と呼ばれる神経が、

核鎖線維には、Ⅰa群求心性線維とⅡ群心性線維と呼ばれる神経が分布していて、

Ⅰa群求心性線維は、筋肉が伸ばされた時の速度に敏感に反応し、

Ⅱ群心性線維は、筋肉の長さの変化に敏感に反応して、

それぞれ、それらの情報を中枢神経に伝えます。

ちなみに、Ⅰa群求心性線維は線維に対して、ぐるぐると螺旋を描くように分布するので「らせん形終末」、

Ⅱ群心性線維は、線維に対して散らばって分布するので「散形終末」と呼ばれます。

なんとなくでいいので、覚えておきましょう。

ここまでをまとめると、筋肉(錐外筋線維)が伸ばされると、

筋紡錘(錐内筋線維)も一緒に伸ばされ、

伸ばされた速さに関する情報が、Ⅰa群求心性線維を介して、

長さに関する情報が、Ⅱ群心性線維を介して中枢神経に伝達されると言う事になります。

筋肉の長さを検知する筋紡錘ですが、

この筋紡錘が緩んだり弛んでいたりしたら、

正確な情報を送ることができなくなりますよね。

そこで、登場するのが「γ運動ニューロン」になります。

γ運動ニューロンは、筋紡錘の両端に分布していて、

筋紡錘の収縮を行います。

この両端に分布しているのが特徴で、

両端が収縮する事で中央部の「核袋線維」や「核鎖線維」が存在する部分が、伸長されます。

ちなみに筋紡錘の中央部はミオシンとアクチンがないため、収縮する事ができません。

錐外筋線維の収縮などによって、筋紡錘が緩みそうな時には、

γ運動ニューロンによって、筋紡錘の両端を収縮させる事で、

筋紡錘を適度に伸長させて、長さの受容器として役割を保護します。

複雑になってきたと思うので、一旦整理しましょう。

筋肉(錐外筋線維)が伸ばされると、

筋紡錘(錐内筋線維)も一緒に伸ばされ、

伸ばされた速さに関する情報が、Ⅰa群求心性線維を介して、

長さに関する情報が、Ⅱ群心性線維を介して中枢神経に伝達される。

ここはOKですね。

一方で、

筋肉(錐外筋線維)が収縮(縮む)すると、

錐内筋線維も縮む。

錐内筋線維が縮んだままだと、筋肉の長さを検知できなくなる。

そこで、γ運動ニューロンが錐内筋線維の両端を収縮させることで、

「核袋線維」や「核鎖線維」の撓みを伸長させ、

筋肉の長さを検知する受容器としての役割を保護する。

という感じになりますね。

ちなみに、錐外筋線維の収縮には、α運動ニューロンが関わっていて、

α運動ニューロンによって、錐外筋線維を収縮させる時には、

γ運動ニューロンによって、錐内筋線維の調整も行われている事になります。

この両者の関係は「α-γ連関」と呼ばれるので、覚えておきましょう。

ではでは、お待ちかねの「伸長反射」について。

伸長反射は、「筋が受動的に引き伸ばされると、その引き伸ばされた筋が収縮する反射」の事を指します。

深部腱反射とカッケ検査とかで見られる現象ですね。

仕組みを説明していきましょう。

筋肉が受動的に引き伸ばされると、

筋紡錘がその情報を感知します。

筋紡錘の仕組みについては、先ほど説明しましたね。

筋紡錘で感知した情報は、Ⅰa群求心性線維を介して脊髄に送られます。

その情報が脊髄に入ると、脊髄からα運動ニューロンを介して引き伸ばされた筋肉を、収縮させるように刺激が伝達されます。

これが伸長反射の概要ですね。

この反射は、Ⅰa群求心性線維からα運動ニューロンへと1回しか、情報のやり取りをしないため、

通常の筋収縮より早い作用が可能になり、姿勢保持において重要な役割を担います。

急に押されて姿勢を崩した時などは、筋肉が引き伸ばされた情報を感知して、

すぐに収縮させることで、転倒を防ぎます。

伸長反射を確認しやすい筋肉が、大腿四頭筋(膝蓋腱反射)や、

下腿三頭筋(アキレス腱反射射)などの、立位保持に重要な筋肉であることは、これで納得がいきますよね。

さて、「反射性要素」に話を戻しましょう。

反射性要素は、伸長反射の亢進のことでしたよね。

そして伸長反射は、Ⅰa群求心性線維の刺激によって、α運動ニューロンが働き、引き伸ばさらた筋肉が収縮する反射でした。

ここからがポイントなのですが、

ある研究によって、皮質脊髄路が損傷されると、このⅠa群求心性線維の入力が増えるということが明らかになりました。

皮質脊髄路は、脊髄が過剰に活動しないように監視し、コントロールする役割を持っています。

皮質脊髄路が損傷される事で、Ⅰa群からの入力を制御できなくなるって事ですね。

Ⅰa群求心性線維の入力が増えるということは、

Ⅰa群求心性線維からの刺激が増えるという事になりますよね。

Ⅰa群求心性線維からの刺激が増えると、α運動ニューロンへの刺激も増えます。

α運動ニューロンは、筋肉を収縮させる働きを持っているので、これが活発になると、余計に筋肉が収縮している状態(痙縮)になりますよね。

また、α運動ニューロンの活動が増えると、「α-γ連関」によってγ運動ニューロンの働きも活発になります。

γ運動ニューロンは筋紡錘を適度に伸長させることで、受容器としての感度を保護する役割を持っていましたよね。

このγ運動ニューロンの活動が高まりすぎると、筋紡錘を伸長し過ぎてしまうので、

伸ばされた刺激に対して、敏感になり、

その刺激が、Ⅰa群求心性線維からのα運動ニューロンを介して、さらに筋肉を収縮させます。

これらの、複合的な要素(非反射性要素)が痙縮の原因の一端を担っていると考えられています。

複雑になってきたと思うので、ここで一旦まとめましょう。

・痙縮の原因は、複雑でまだ解明されていない

・現在考えられている原因は、大きく「非反射性要素」と「反射性要素」に分けられる

・「非反射性要素」は、組織そのものの変性を指す

・「反射性要素」は、皮質脊髄路の損傷によって生じるⅠa群求心性線維の入力増加による、伸長反射の亢進を指す

次は、評価方法の説明になります。

サクッと進めるので、そのまま見ちゃいましょう!

評価方法

ここでは、2種類の評価方法をお伝えします。

他動運動テスト

方法は、名前通りで、他動的に動かすだけ。

ポイントは、速度を変えて動かす事ですね。

早く動かしたり、ゆっくり動かしたりしてみましょう。

正常は、抵抗感がない状態ですね。

ゆっくり動かすと抵抗がないけど、早く動かすと強い抵抗を感じる時は「痙縮」が疑えます。

一方で、早くても遅くても一定の筋緊張を感じ取れる場合は、「固縮」を疑う事ができます。

固縮っていうのは、錐体外路の障害によって、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れ、筋肉が持続的に収縮する状態の事ですね。

振り子テスト

これは下肢の痙縮を評価できるテストになります。

方法は、

①患者を診察台の端に、足底が床面から浮くように座らせる

②力を抜くように指示し、セラピストが膝関節軽度伸展位まで足を持ち上げたあとで手放す

③ブラブラする回数を数える

6〜7回ブラブラして、止まるのが正常になります。

途中で引っかかりながら落下する現象が見られる場合は「痙縮」が疑えます。

一方で、ゆっくりとした速度で1〜2回ブラブラして止まる時は「固縮」が疑えます。

治療戦略

痙縮の主な原因は「非反射性要素」と「反射性要素」に分かれていましたよね。

「非反射性要素」に対しては、組織そのものの変性が原因になるので【緩める】治療戦略を、

「反射性要素」に対しては、皮質脊髄路の損傷が原因になるので、【運動する】治療戦略を推奨します。


では、【緩める】治療戦略について。

【緩める】治療戦略では、結論緩められればいいので、どんな手技を使って緩めても大丈夫です。

今回は参考までに、ストレッチと振動刺激を紹介します。

ストレッチ

「静的ストレッチ」や「ダイレクトストレッチ」を利用して、筋肉を緩めましょう。

ストレッチ時間については諸説がありますが、20〜30秒程度が良いかと思われます。

振動刺激

振動刺激は、振動数によって筋肉に対する効果が変わるので注意が必要です。

100Hz以上で筋促通、90Hz以下で筋弛緩効果があると言われているので、

90Hz以下の振動刺激を加えるようにしましょう。

刺激を入力する時間は、3分で効果がプラトーになるといわれているので、長くて3分程度、実施するのが良いですね

また振動刺激の効果の持続時間は、20分と言われているので、

振動刺激で筋弛緩させた後、20分以内に【運動する】治療戦略を行うと、より効果的になります。

次は、【運動する】治療戦略について。

まず初めに行うことは、姿勢制御や体幹の訓練です。

体幹をはじめとする姿勢制御において、網様体系が関与する事はよく言われていると思いますが、実は痙縮にも関与しています。

網様体系が、痙縮に関与するため、

姿勢制御や体幹の訓練を行う事で、網様体系を賦活させ、

痙縮の改善を試みよう!という事ですね。

詳しくお伝えすると、

痙縮に関わる網様体系は、

延髄網様体系から投射される、 「背側網様体脊髄路」、

橋網様体系から投射される、「内側網様体脊髄路」、

外側前庭核から投射される、「前庭脊髄路」の3つがあり、

「背側網様体脊髄路」は、伸長反射に対して、抑制的に働きます。

伸長反射を抑える働きがあるって事ですね。

残り2つの、「内側網様体脊髄路」と「前庭脊髄路」は、伸長反射に対して促通的に働きます。

伸長反射を活発にする働きがあるって事ですね。

ちなみに、背側網様体脊髄路は「皮質毛様体路」からの情報の入力を受け、促進されます。

大脳皮質からの刺激によって、「背側網様体脊髄路」の活動を高められるって事ですね。

脳卒中で内包が損傷されると、皮質脊髄路のすぐ側を通っている「皮質毛様体路」も損傷されます。

皮質毛様体路は、伸長反射を抑制させる作用を持つ「背側網様体脊髄路」の活動を高める役割を持っている伝達路なので、

この伝達路が障害されると、「背側網様体脊髄路」の活動が低くなり、伸長反射の抑制効果が弱まります。

「内側網様体脊髄路」や「前庭脊髄路」の伸長反射を活動的にさせる伝達路は正常な状態なので、

伸長反射の活動が異常に高まってしまい、結果として痙縮を生じさせます。

加えてお伝えすると、

闇雲に網様体系を賦活すればいいという訳ではないので、注意が必要になります。

これについては、先程の説明が十分に理解できていれば、納得できるかと思いますが、

「内側網様体脊髄路」や「前庭脊髄路」の方を促進させてしまうと、伸長反射の活動をさらに高めてしまいますよね。

促通させるのは、「背側網様体脊髄路」の方です。

背側網様体脊髄路は「皮質網様体路」によって、促通されるので、

皮質網様体路を促通するイメージでもいいですね。

ちなみに皮質網様体路は、予測的な姿勢制御を行う時に活動すると言われています。

ここについては、説明がさらに長くなってしまうので、別の動画で説明しますね。

次に運動主体感を意識した麻痺側の運動を行いましょう。

麻痺側の運動を行う意味なのですが、

痙縮を起こしている部分を積極的に動かしてもらうことで、

その領域への皮質脊髄路の活性化を図る事が目的になります。

麻痺側の運動を行うことで、皮質脊髄路が改善し、

すると、皮質脊髄路の損傷によって亢進していた伸長反射が改善され、

痙縮が緩和していくというわけですね。

運動する際、過剰に努力して運動してしまうと、筋緊張を高めてしまうだけになるので、

多動運動→自動介助レベル→他動運動の順番で運動を行い、

難易度を調整するのが良いですね。

最初に、体幹や姿勢の訓練を行うのも同様の理由ですね。

運動する際の土台となる体幹がしっかりしていないと、余計な力が入ってしまいます。

そろそろ運動主体感についての説明をしていきましょう。

運動主体感というのは、自分の体を自分で動かしてる感覚のことです。

脳中片麻痺の患者さんは、運動する時に「自分の体じゃないみたい」という感覚を持たれる方が多く、

これは運動主体感のない運動と言えます。

この運動主体感のない運動は、予測情報とフィードバック情報のズレが生じることで起こると考えられています。

運動主体感がない状態では、随意的な運動がうまく促通されないため、

視覚フィードバックや、難易度、ハンドリングなどをうまく活用し、

「自分の体を自分で動かせている状態」を作って、運動するようにしましょう。


おわりに

「痙縮がひどくなるから、麻痺側はストレッチだけ」

この考え方のままでは、目の前の患者さんは一生良くならないかもしれません。

でも、この動画を最後まで見てくれたあなたは、大丈夫なはず。

目の前の患者さんに必要なのは、技術でも経験でもありません。

「知っているか」「知っていないか」だけです。

(もちろん技術も経験も大切ですよ)

患者さんのために、自分のために、少しでもいいので新しい情報を定着させる習慣を作りましょう!

この動画のまとめは、こんな感じになります。

概要欄に、このまとめスライドのダウンロードリンクを掲載しているので、

簡単に復習したい方は、ぜひ活用して下さい。

「りはメモ」では、今後も有益な情報を発信していくので、見逃したくない方はぜひチャンネル登録をお願いします。

ではでは、最後まで動画を見ていただき、ありがとうございました^^

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