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【治らない腰の痛み】椎間関節由来の慢性腰痛に対する理学療法|2022.08.31配信

本ブログはYouTubeの台本を、そのまま掲載しています。分かりやすいオリジナルイラスト付きで確認したい方は、YouTubeKindleで確認してください。

>>>イラスト付き解説はコチラ


はじめに

慢性的な腰痛の原因が分からない、、、

慢性腰痛患者の治療は何をすればいいの?

慢性腰痛は、多く見られる症状であり、

また、多くのセラピストが治療に難渋する症状でもあります。

その厄介な腰痛は、ただマッサージしているだけでは良くなりません。

マッサージによって良くなる事もあるかもしれませんが、

それは施術によって、血行が良くなって軽くなっただけの、

一時的な緩和に過ぎません。

この動画では、ただのマッサージとは一味違った、

慢性腰痛に対する理学療法を説明していきます。

今回の説明で、症状を改善させることに成功したケースも多々あるので、

是非、参考にしてみて下さい。

りはメモでは、こういった日々の臨床に関する知識を、

整理して詳しく説明しています。

臨床を楽しくしたい方、仕事にやりがいを持たせたい方は、

有益な情報を見逃さないためにも、チャンネル登録しておく事をオススメします。

では、本編に進みましょう〜。

本編

脊髄神経後枝内側枝と慢性腰痛

慢性腰痛において、鍵になるものは「脊髄神経後枝内側枝」になります。

なんだそれは?と思うかもしれませんが、

かなり、大切なポイントなので、しっかり確認していきましょう。

知っている方はスキップしても大丈夫ですし、重要なポイントを復習するためにそのまま見ても大丈夫です。

では、詳しい説明に入っていきましょう。

脊髄神経後枝内側枝は、

脊髄神経が椎間孔で2つに分岐したうちの後方に伸びる枝のことを指します。

31対ある脊髄神経すべてにあり、前枝に比べて細い枝である事が特徴ですね。

後枝は分枝してすぐに後方に向かい、

ほとんどのものはさらに内側枝と外側枝に分枝して、体幹後面の筋および皮膚に分布します。

これらの神経は、感覚神経の線維と、運動神経の線維両方で構成されているので、これも押さえておきましょう。

また、今回のポイントになる内側枝に関しては、

①椎間関節

②多裂筋

③腰背部の皮膚

を支配しているので、しっかり確認しておきましょう。

さて、脊髄神経後枝内側枝と慢性腰痛の関係ですが、

なんらかの要因により、腰椎椎間関節に炎症をきたしている場合、

腰椎椎間関節を支配している、脊髄神経後枝内側枝を介して、

同じく脊髄神経後枝内側枝によって支配されている、多裂筋に反射性筋スパズムを生じさせます。

筋肉の過緊張状態が続いている状態が、筋スパズムで、

それが神経による反射によって起きている状態が、

反射性筋スパズムですね。

筋スパズムによって、筋の過緊張状態が続くと、

筋が虚血状態になり、筋線維内に疼痛物質が生産され、

痛みを生じさせます。

ざっとまとめると、

①何らかの要因により椎間関節が炎症する

②腰椎椎間関節の炎症が、脊髄神経後枝内側枝に伝わる

③脊髄神経後枝内側枝が異常に働き、多裂筋に反射性筋スパズムを生じさせる

④多裂筋が虚血状態になり、疼痛物質が生産される

⑤腰背部に痛みが生じる

こんな感じになります。

椎間関節を炎症させる要因

次は、椎間関節を炎症させる要因について

詳しい説明に入る前に、腰痛椎間関節の特徴についてお話ししていきましょう。

まずは関節構造について

腰椎椎間関節は上位椎の下関節突起と下位椎の上関節突起からなる滑膜性関節で、

上関節突起関節面は、後方内側に凹面となる形態、

下関節突起関節面は前方外側に凸となる形態をしています。

特徴として、下位関節面ほど面積が広く、

関節面が上後方を向くことが挙げられるので、覚えておきましょう。

また椎間関節の関節内には、半月体という組織が存在し、

関節内の圧縮応力を分散させ、軟骨の摩耗を防止していると考えられているのでこれも覚えておきましょう。

次は、支配神経について

椎間関節の支配神経は、前の章で出てきた脊髄神経後枝内側枝で、

この神経は、神経根からほぼ直角に分岐した後、

横突起間靱帯中で内側枝と外側枝に分かれ、

内側枝は、多裂筋や腰背部の皮膚を支配します。

また内側枝の一部は乳様突起と副突起の間で、乳様副靱帯の下を通って椎間関節に分枝し、

隣接する上下の椎間関節を支配します。

最後に、関節可動域について

腰椎椎間関節の可動域はこんな感じになります。

回旋約5〜7°

屈曲約40~50°

伸展約15~20°

回旋に乏しく、屈伸に優れている関節と把握しておければいいですね。

ちなみに、腰椎が完全伸展すると、下関節面の先端が下位腰椎の上関節面を超えて下方に滑ります。

それにより、接触圧力が最大伸展で非常に高くなるので、頭の片隅にいれておきましょう。

ではでは、お待ちかね、腰椎椎間関節を炎症させる要因について説明していきましょう。

腰椎椎間関節の炎症に関わる要因は、次の5つが挙げられます。

それぞれ説明していきましょう〜

力学的ストレス

力学的ストレスについて

椎間関節の炎症に関わる、力学ストレスとして挙げられるものは次の3つ。

剪断ストレス

まずは1つ目、剪断ストレスについて説明します。

剪断力は、捻れるような力のことで、

脊椎に、剪断ストレスが加わると、

その負荷は、1/3が椎間関節に、

2/3は椎間板に加わるとされています。

ところが実際には、椎間板に剪断ストレスが加わると、

椎間板は、前方に逃げるようにズレて、

椎間板に加わる剪断ストレスから逃げようとするので、

その分の剪断力も、椎間関節に加わってしまっています。

特に、体幹が前傾位で、

重いものを持ったり、体を回旋させたりすると、

頭側の関節部に、剪断ストレスが集中し、

椎間関節に炎症を起こしやすいので、押さえておきましょう。

圧迫ストレス

2つ目、圧迫ストレスについて。

圧迫ストレスは、その名の通りで、

圧迫されるような力を指します。

基本的には椎間関節は、関節の構造上、

圧迫を受けるような構造にはなっておらず、

圧迫力を受け止める役割は、椎間板が主に担っています。

ところが、腰椎前弯位の状態で、

強い圧迫ストレスが加わると、

全圧迫ストレスのうち、約17%が椎間関節に加わる事が分かっています。

また、椎間板の狭小化が進むと全圧迫ストレスのうち70%の負荷が、

椎間関節に加わるとされていています。

強い負荷が加わり続ける事で、椎間関節は炎症をひきおこします。

腰椎前弯位で長時間の立位姿勢を取ると、

腰部に局所的な鈍痛が生じ、

前弯が軽減するように座ったり、片足を踏み台に乗せて腰椎の前弯を軽減させると、

鈍痛が楽になる現象は、この圧迫ストレスが起因の痛みになりますね。

屈曲ストレス

3つ目、屈曲ストレスについて。

これは、体幹の屈曲に伴って生じる力になります。

通常は、全屈曲ストレスのうち、

39%が椎間関節に、

29%が椎間板に、

19%が、棘上靭帯と棘間靭帯に、

残り13%が、黄色靭帯に加わるとされています。

無意識のうちに、筋肉による動的安定化が図れていない状態で、

体幹の過屈曲が生じると、椎間関節にストレスが加わりやすくなり、椎間関節の炎症を引き起こします。

微小関節内骨折

次は、微小関節内骨折について。

椎間関節に、軽度のストレスが繰り返し加わることで、

疲労骨折として、関節内に微小な骨折を生じさせ、炎症を引き起こします。

加齢によって骨が弱くなっているところで、長軸方向の負荷が加わると、

このような骨折が生じやすくなります。

関節症性変化

次は、関節症性変化。

これは、関節軟骨の変性や減少、軟骨下骨のリモデリングや骨変化、骨棘形成などが当てはまります。

これらによって、椎間関節は炎症します。

関節軟骨の変性変化は、関節裂隙の狭小化や不規則性、骨硬化の有無により、

Ⅰ〜Ⅳの4つに分類でき、Ⅰ〜Ⅳに進むにつれて、

変性が軽度から高度になるとされています。

半月体の圧迫

次は、半月体の圧迫について。

半月体は、脊椎関節の関節内に存在し、

衝撃吸収などの役割を担い、

一部の半月体は関節包と連結を持っています。

半月体自体は、圧迫を受けても痛みを生じさせませんが、

関節包と連結をもっている半月体が圧迫されると、

関節包にまで伸長ストレスが加わり、これが炎症を引き起こし、

椎間関節の炎症を誘発させるのでは、と考えられています

関節骨膜の炎症・嚢胞

最後、関節骨膜の炎症・嚢胞について。

滑膜は、関節軟骨の周縁から、

対側の関節軟骨の周縁に付着し、

その基部は、関節包や黄色靭帯に付着しています。

関節包へのストレスや、細菌の侵入などによって、

滑膜は炎症し、滑膜は椎間関節の一部でもあるので、

椎間関節の炎症に繋がります。

また滑膜嚢胞ができた時も、炎症に関わりますね。

滑膜嚢胞は、いわゆる関節に水が溜まっている状態です。

以上の5つが、

椎間関節の炎症に関わるので、しっかり押さえておきましょう。

評価と介入案

では最後に、評価と介入案について説明を続けます。

まずは、評価方法について。

ここでは、簡単に行える椎間関節の評価方法である、PLFテストついて説明していきます。

PLFテストは、腰椎椎間関節の可動性を評価するもので、

少し話がそれますが、この検査の「陰性結果」と、腰部脊柱管狭窄症患者の歩行能力が大きく関わると考えられています。

この検査が陰性になれば、腰部脊柱管狭窄症患者の歩行能力が大幅に上がると言われてるって事ですね。

検査方法は、こんな感じ。

検査肢位:

側臥位

手順:

①両側の股関節を45°屈曲位にする

②上側の股関節を多動的に屈曲させ、大腿が抵抗なく胸部に接触するか確認する

判断:

対象者の大腿が、抵抗なく胸部に接触すれば「陰性」

対象者の大腿が胸部に接触しない、もしくは接触するがかなり抵抗がある場合「陽性」

ポイント:

・腰椎の十分な後弯可動域が確保されると陰性になる

・腰椎後弯可動域が低下すると、腰椎が前弯しやすく椎間関節に圧迫ストレスが加わりやすくなる

・脊柱管狭窄症に伴う間欠性破行の改善のためには、PLFテストの陰性化が重要とされている

この検査が陽性の場合、腰椎椎間関節後弯の関節可動域が低下している事が考えられます。

そして腰椎の後弯制限がある場合、腰椎前弯位になりやすく、

腰椎前弯位は、椎間関節に圧迫ストレスが加わりやすい姿勢とも言えますよね。

この腰椎後弯の可動域を改善させて、腰椎前弯位を修正する事で、

椎間関節に加わる圧迫ストレスを減らす事ができ、

椎間関節の炎症を軽減させる事に繋げられます。

という訳で、今回は椎間関節の可動性を改善させるエクサイズを説明していきますね。

また、今から説明するエクササイズは、多裂筋のリラクセーションやストレッチングも並行して行えるものなので、

筋スパズムを起こしている多裂筋にも、アプローチでき、

一石二鳥のエクササイズになります。ぜひ覚えておきましょう!

上位腰椎に対するエクササイズ

肢位:

側臥位で、両股関節中間位

手順:

①対象者の骨盤を、多動的に長軸方向に牽引する

②自動介助運動を用いて、多裂筋の収縮を用いて骨盤を元の位置に戻す

③「①」と「②」を繰り返す

ポイント:

・腰椎前弯の程度により椎間関節面の傾きが異なり、股関節の角度を変えて腰椎前弯角度を変える事でアプローチする椎間関節を調整する事ができる

・股関節中間位でのエクササイズでは、上位腰椎の椎間関節へのアプローチが可能になる

・骨盤を元の位置に戻す運動の際、最終域まで多裂筋の収縮を誘導すると効率よくリラクセーションする事ができる

中位腰椎に対するエクササイズ

肢位:

側臥位で、両股関節屈曲45°

手順:

①対象者の骨盤を、多動的に長軸方向に牽引する

②自動介助運動を用いて、多裂筋の収縮を用いて骨盤を元の位置に戻す

③「①」と「②」を繰り返す

ポイント:

・腰椎前弯の程度により椎間関節面の傾きが異なり、股関節の角度を変えて腰椎前弯角度を変える事でアプローチする椎間関節を調整する事ができる

・両股関節屈曲45°でのエクササイズでは、中位腰椎の椎間関節へのアプローチが可能になる

・骨盤を元の位置に戻す運動の際、最終域まで多裂筋の収縮を誘導すると効率よくリラクセーションする事ができる

下位腰椎に対するエクササイズ

肢位:

側臥位で、両股関節屈曲90°

手順:

①対象者の骨盤を、多動的に長軸方向に牽引する

②自動介助運動を用いて、多裂筋の収縮を用いて骨盤を元の位置に戻す

③「①」と「②」を繰り返す

ポイント:

・腰椎前弯の程度により椎間関節面の傾きが異なり、股関節の角度を変えて腰椎前弯角度を変える事でアプローチする椎間関節を調整する事ができる

・両股関節屈曲90°でのエクササイズでは、下位腰椎の椎間関節へのアプローチが可能になる

・骨盤を元の位置に戻す運動の際、最終域まで多裂筋の収縮を誘導すると効率よくリラクセーションする事ができる

おわりに

今回のまとめは、こんな感じになります。

ヒトの身体は複雑です。

すぐには正解に辿り着けなくても、

少しづつ、情報を取り入れていく事で、

必ず正解に辿り着けるはずです。

このチャンネルでは、複雑なリハビリに関する知識を

整理して詳しく説明しています。

どれも有料級の情報ですので、

お見逃しのないように。

ではでは、この辺で失礼します。

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