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毎日カルテを書きましょう

毎日入院患者のカルテを書く。これは医師の業務内容の原理原則であり義務である。医師法 24 条1項には「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と記載されている。

だが、どうもカルテの書き方は難しい。書けとは言われるものの何を書いたら良いかが難しい。研修医の頃はカルテを書くのが仕事と言われ、1日中カルテを書くことに時間を費やしていたのが懐かしい。

カルテの書き方はおよそ2パターンに分けられる。

  1. 基本は「著変なし」で, 何かイベントがあれば書く

  2. 前日のカルテにどんどん継ぎ足していく

1が多い印象だが, たまに2の数ヶ月以上の果てしない記録を見る。これは偏見だが、2パターンのDrはある程度同じような傾向を持っている。ちょっと警戒する。

カルテの書き方といえば、佐藤先生の著書がある。
研修医の頃はこの本を見て見よう見真似でカルテを書いていた。

1)SOAP全体は「By problem」で書く
2)問題リストは「毎日更新」する
3)S・O欄は簡潔に記載する
4)Aはプロブレム名の明確化と方針の最適化をめざす
5)Pはタスク管理ツールとして活用する

【第6講】病棟編(2) 経過記録と問題リストの活用


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リハ医となってからはカルテの書き方にいろんな創意工夫を加えた。例えば、 毎週定期のショートサマリーを書く。これはそれなりに良い。来週以降のto doを確認する作業は、特に慢性期の「毎日が基本同じ毎日」では、何をやっているのか分からなくなり、時に混乱する。そのため、自分自身が何をしているのかの確認作業としてショートサマリーを作成するのは有意義だった。リハ医にとって予後予測を考えるのは非常に大切な能力だが、じゃあそこに至るのにはどんなPlanが必要で何がkeyとなるのか。治療の軸を進めながら同時に治療を振り返る作業も必要である。

あとは、毎週定点的に診察をする日を決める。入院時だけ診察をして、それ以降は一回も患者の身体に触れないリハ医だと困る。結局、所見は自分で取って自分でどう考えたのかが重要なのである。せめて週に1回はそういう時間を設けるようにする。そうすると少なくとも週に1回は「著変なし」から解放される。毎日診察をすれば良いじゃないか?と言われるかもしれないが、慢性期で毎日患者の身体に触れるのはちょっと意味合いが異なる。

医者のカルテと看護日誌を見比べたらよくわかりますが,医者のカルテは,何かあった時のことは書いてあるけれども,何もない時のことは書いてないわけです。しかし,看護日誌はそういう時のことも書いてあります。

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/old/old_article/n2001dir/n2433dir/n2433_07.htm


最近は、どの病院も看護業務の再検討などでこのように患者の状態をありありと示した記録が少なくなった。看護記録を見て、医者は多くのことを類推する。「どうしてわざわざこのことを書いたのだろうか?」というような記録も重要な所見なのである。たまに、自分にだけは患者が心を開いてくれていると錯覚する医療者がいる。これは間違いである。人の数だけ対象の像が異なる。そのためには観察(多くの目)が必要なのである。

というわけで、最近の自分のカルテの書き方はどうだろうか。

#1. 脳梗塞[20XX.Y.Z]→回復期リハ[20XX.Y.Z]
#2. 高血圧
#3. 慢性腎臓病

#1 
歩行フリー評価は来週から. 装具の調整を忘れずに. 

#2
降圧剤の追加を検討.

8/X カンファレンス
8/X 血液検査
8/X 家族との面談→退院日を決定

担当患者の数にもよるが、だいたいは毎日こんな感じで書く。あとは、不安の強さ、不穏についても書ける時は書いておく。自分の中で治療の流れだけでなく、それをどう本人たちが感じているかもたまに書く。これは前述したような「何にもない日」のありのままを残そうと画策していたのだろう。特に週末に近い時に肺炎などが生じた場合にはもう少し細かく治療計画などを詰めておく。カルテを使って自分の思考をまとめたり、他職種と交流しようとしたり。単なる日常業務も工夫次第でどうにでも変えられる。あとは、文章を書く練習にもなる。良いカルテを書くには臨床能力と文章力が大事だ。 そのためには試行錯誤しながら「理想のカルテ」を模索していくしかない。 そういう意味ではこういう文章を書くのもトレーニングと言えよう。

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