リハ医は一人前になるのが早い?
最近、ネガティブなことばかり書いていたのでたまには別の視点から考えよう。
リハの専門医のメリットの一つには「一人前になるのが早い」という言説がある。この書き方で今日も不穏が始まるのである。
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はじめに
多くの批判はあるかもしれない。覚悟はしている。
リハ病棟でリハ医をやるのはそこまで難しくない。
回復期リハで1人のリハ医が年間担当する患者数は100名前後が標準的だと推定している。常時20名の入院患者で週2人新規入院を受け持つと仮定した場合だ。専門医の資格を取得するまでの3年間の研修では100×3=300名を担当すれば満たせる計算になる。300名で専門医が取れてしまうというのは容易いと思わないか?
主に、①対象疾患の少なさ、②展開されるリハビリテーションのパターンの限定、③医師によって影響が生じない治療方針の3点から論じていく。
①対象疾患の少なさ
脳卒中、骨折で病棟の7-8割を占める。他の診療科と比べても明らかに担当する病気の数が少ない。自ら診断するわけでもなく、基本的には治療介入済みの管理なのでdoでどうにかなってしまう。障害の分類はリハビリテーションの医師にとっては重要な能力であるが、対象が限られれば自ずと理解できるようになる。
②展開されるリハビリテーションのパターンの限定
いやいやリハビリテーションは違うでしょ!となるかもしれないが、装具や嚥下に関してはどうかというと、装具も病棟にもよるが使用するのは5種類もないだろう。その中でよく使うのはKAFO1種類、AFO2種類の3種類も分かれば上等である。嚥下も施設によっては週1の検査のみであり、誤嚥の有無程度が分かれば良いのであればたやすく理解できる。また、ロボットリハなどの設備面に投資をしてもらえる施設であれば、それらを利用してもっとバリエーションに富んだリハビリテーションを展開できるだろうが、そういうのも基本的にはなく、ある種の手技的なものでやり取りされるリハビリテーションでは、各施設独特のものがなされている。それぞれの職種が行っているものに口を出さずに医師が関わる必要が高いものだけであったとしてもさほど高い専門性が求められるわけでもない。
③医師によって影響が生じない治療方針
多くのレジデントから愚痴を聞いてきたが、リハビリテーション科には指導医が少ない。指導医が指導しないのはどの科でもあるだろうが、私が経験したいくつかの職場ではレジデントに多くの患者を託して指導が十分にできていない。これは指導医になってみると分かったのだが、リハビリテーションの治療計画は基本的に多職種の合議で方針が決まるので一人のイケテナイ職種がいたとしても誰かがそれを修正して先に進めてくれる。そのため、レジデントが操縦する船であってもどこかの港には確実に着陸できるようになっている。これは以前にも書いたように医師の裁量が少ないことの副産物である。これを歓迎はしていないが、それでも回るシステムを眺めていると敢えて介入する必要がないのも事実である。
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おわりに
切断、脊髄損傷は多くのリハ医にとっては応用編であり、敢えてここでは触れない。一般的なリハ病棟で過ごすだけで言えば、専門医を取るだけの年数さえあれば、どうにかなってしまう。
私の周りでも専門医取得後すぐに大学医局を飛び立つ人は5-8割程度いる。
他科と比較して、外来や開業といった働き方も得られにくく、多くはどこからのリハ病棟に勤める。そうすると多かれ少なかれ上記の悩みを抱えて過ごしていくことになる。
「一人前になるのが早い」という側面は逆に言えば、このようななんとも言えない虚しさを抱えながら一人前以降の人生を過ごしていくことになる?
いやはや、今日も暗い話になった。誰か意見をください。反論求む。