夢はみるものではなく、叶えるためにある 〜リハラボ町田とAさんのお話〜
本記事では、リハラボ訪問看護ステーション町田(以下、リハラボ町田)で実際にあった利用者さんとのエピソードをご紹介します。
本記事は看護スタッフの体験談を元に作成し、ご家族様の同意を得て掲載しております。
私たちは諦めない。彼女の夢を叶えるために
Aさんと出会ったのは、残暑が厳しい秋でした。
出会った時はすでに腫瘍は腹膜に転移している状態でしたが、彼女はとても明るく前向きでした。それは、病気が次第に進行しても変わりません。Aさんはいつも「美味しい食べ物を食べたい!ムーミンが好きだから、ムーミンカフェに行きたい!」と楽しそうにお話をしてくださいました。
冬を迎える頃、Aさんは腹水による呼吸困難を訴えるようになりました。腹水を定期的に抜けるよう、身体にはドレーンが留置されます。本人も体調が悪化していることには気づいていましたが、「美味しい食べ物を食べる」「ムーミンカフェに行く」という2つの目標はなんとか実現させたかったようで、どんなに体調が悪くなっても決して諦めることはありませんでした。
そんなある日、彼女を間近でサポートさせていただいていた看護スタッフから、「一緒に美味しいものを食べたり、ムーミンカフェに行ったりしてみませんか?」と、ご提案させていただきました。
クリアすべき問題はたくさんありましたが、Aさんの希望を叶えるために、リハラボ町田のスタッフみんなで全力でバックアップさせていただこう、という話になったのです。
Aさんはとても喜びました。
それから、主治医への確認や支援体制、Aさんの体調管理、当日のスケジュールなど入念に確認・調整していきます。日々の状態観察や夜間対応、外出当日の訪問業務と緊急対応の看護師をそれぞれ2名ずつ配置。Aさんとの外出が成功するよう、スタッフ全員が想いを一つにしてサポートにあたりました。
無事、主治医の許可がおり、ドレーンの管理はリハラボ町田に在籍する診療看護師(医師行う診療業務の一部を行うことができる看護師)が担当させていただくことになり、準備は着々と進められていきました。
最高の笑顔と裏側と
外出予定3日前、Aさんの体調が悪化しました。
スタッフの中では「外出は断念せざるをえないのではないか」という話もあがりましたが、それでも本人は諦めていませんでした。なんと、翌日には奇跡の回復をみせたのです。
「これで何とか出かけられそうだ!」と思った矢先、今度は「まんぼう」が発令されました。さらに、ドレーンが抜けかかっているという自体も発生し、急いで主治医に報告、対応しました。
そんな直前のバタバタはありましたが、なんとか無事に当日を迎えることになります。
コロナ禍での外出のため人の流出が少ない午前中を狙って、横浜ランドマークプラザにある「ムーミンスタンド」と「スカイガーデン」に行きました。そして、美味しいものが食べたいという希望を叶えるために、その足で「三崎港」へ。そこでは、贅沢極まりない鮪丼を食べました。
満腹での帰り道、Aさんは「次は、ソラマチの『ムーミンカフェ』と中野にある『マグロマート』に行く!」とさらなる意欲を見せてくれました。
Aさんのパワフルさには、スタッフ一同脱帽です。道中の車内では、スタッフとざっくばらんに会話をしたり、睡眠をとったりしながら過ごしました。
Aさんから言っていただいた「楽しかった!」という言葉と最高の笑顔を、スタッフは一生忘れません。
夢を諦めないために私達にできること
” 夢はみるものではなく、叶えるためにある ”
外出から数日後、Aさんは自宅で家族や医療スタッフに見守られる中、わずか23年の生涯に幕をとじました。
Aさんは、いつも明るく前向きな方でした。
その命の最期の最期まで、「人の生きる時間は有限であること」、そして「『またいつか』が来ないことがあること」「だからこそ、今この一瞬を大切に生きること」を、一生懸命私たちに教えてくれました。
Aさんの最後まで諦めない強い想いは、ご家族様を含めたリハラボ町田に関わる医療チームに化学反応を引き起こしました。今回の外出にあたり、ご理解とご協力をいただいたご家族様には感謝申し上げます。
リハラボ町田には、利用者さんの想いを一生懸命叶えようと行動する人がいます。それを支えようとするメンバーがいます。できない理由を並べるのではなく、一人一人の人生に心から寄り添います。人生がより豊かなものとなるように、選択肢や可能性を広げるお手伝いをします。
これからもリハラボ町田は、関わりをもった全ての利用者さんの想いに寄り添い、一生懸命サポートさせていただきます。