脳卒中後の歩行予後について
今回は脳卒中後、片麻痺などにより身体に障害を負ってしまった方に対する歩行予後についてお話しします。
急性期病院での初期対応はかなり重要だと思います。
新人セラピストでも10年セラピストでも同じような結果が出せるように基礎知識だけは押さえておきましょう。
まずはベッドサイドでの評価から
脳卒中の急性期は脳血流の自動調節能の破綻から血圧が変動しやすく、基本高い値で推移しています。
リハビリでは、主治医と相談しながら離床に向けて少しずつ様子を見ながら行っていきます。
この時点でまず、意思疎通ができるか、寝返りなどの基本動作ができるかが確認できますが、歩行予後もここで確認することができます。
服部一郎氏による、片麻痺における歩行予後の決め方というのがあります。
・全く動かない
・床上で下肢屈曲のみできる
・床上で屈伸ができる
上記3つまでの能力では歩行困難か、歩けてもほぼ実用性がないと判断されます。
・立て膝保持ができる
・立て膝での屈伸ができる
上記2つまでの能力では歩けるか歩けないかの境にいる状態です。
・下肢伸展挙上ができる
上記では大体1本杖歩行、良い時は独歩ができる状態です。
・空中屈伸ができる
上記ではほとんど独歩できる、悪くて1本杖歩行ができる状態です。
【出典】服部一郎:椿・里吉編, 臨床神経病学最近の進歩, 医歯薬出版,1965より一部改変
この時点でおおよその歩行予後を想定し、患者様が今後どのような生活になるのかを想像します。
セラピストが評価する予後も主治医から求められ、場合によったら家族へのICの時に主治医と同席し、身体能力の予後を家族や本人に伝える必要が出てきます。
発症早期での歩行練習は可能
主治医と相談し、状態を見ながらであれば早期歩行は可能です。
理学療法ガイドラインにも早期歩行は実施可能と明記されています。
ただ問題はどのように実施していくかです。
麻痺や覚醒の状態にもよりますが、やはり麻痺側に荷重での刺激を加えていきたいところです。
まずは、端座位で足底を接地させ、体幹を起こし、上肢でもベッドで支えられるような感覚入力を入れていきましょう。
そして座面を高くした状態での立ち上がり、立位保持です。
主治医許可のもと実施し、血圧変動、意識レベルの変動に注意しながら行います。
最初は股関節屈曲、膝折れ、尖足などなりやすいかと思います。
あまり弛緩が強いようであれば長下肢装具などを用いて下肢伸展位を作り、立位保持で立位感覚をつけていきましょう。
歩行の神経機構には大脳皮質からの随意性制御と脳幹や脊髄などからの非随意性制御があります。
これら二つの神経機構を賦活化させていく必要があるでしょう。
介助下において、なるべくリズムよく股関節の屈曲伸展を繰り返して下肢を降り出し、蹴り出していく動作が姿勢保持に大きく関わってくるでしょう。
おわりに
医療は日進月歩であり、脳卒中に対するリハビリの考え方、介入の仕方も変わってきました。
そして、今の理学療法の時代は本当にハイテクになってきましたね。
現場レベルではどこまで機械化が進んでいるのか分かりませんが、学会に行くと電気刺激が流れる下肢装具みたいな物など驚かされるばかりです。
再生医療の分野でも札幌医科大とニプロが共同開発を進めているみたいですね。
脳卒中によって損なわれた神経組織が回復するというのが現実になりつつあるのでしょうか。
日々情報を仕入れていないと知らないことだらけになってしまいます。
脳卒中の患者様を早期離床して歩かせるなんて、以前では考えられなかったかと思います。
患者家族も心配そうにリハビリ見ていますよ。
「もうリハビリやるんですか?」と。
もちろんリスクを理解し把握して行うこと、主治医、家族、本人の同意を得て、より最善のリハビリが行えるといいですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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