#5 介護事業者は、保険外事業をどう考えるべきか
「介護保険に依存しない経営を目指そう」
膨らむ社会保障費と足りぬ財源、その一方で拡大するシニアビジネスの市場性という話の中で良く出てくるフレーズ。介護事業者であれば、少なからず検討していたりするんではないでしょうか。
介護報酬の見直し(“見直し”とか“適正化”はマイナス改定を意味する...)は続くわ、介護に成果報酬をとか言われるわで、「これからは保険外もやってかないとなぁ...」という感じではありますが、実際に介護事業を5年やっていて思うのは、経営的に、介護保険に依存しようと思えばできる企業でないと、保険外なんて無理ではないかということです。介護(保険)事業は、制度に縛られ自由が効かない分、成功パターンは結構明確です。一方保険外で成功させる方がよっぽど難易度が高いので、本業を軌道に乗せられる力があることは最低条件だと思います。
1.本業の介護事業の収益性は最大化されている状態か?
介護(保険)事業を続けていく上で重要なのは、各介護サービスにおける現行のルール(介護保険制度)における最適解=最も収益性が高まる状態に、現場の運営をチューニングし続けることであります。もちろんもっと色々ありますが、介護事業をビジネスで捉えた時の、一つの側面ではあると思っています。
だから弊社では、介護保険制度の中で通所介護が担うとされている「心身機能」と「活動」と「参加」の支援にサービスを絞っています。主要な加算も大体このあたりに全部ついていますので、加算算定はマストとなります。僕が影響を受けた介護事業経営者の【楓の風】小室社長は、加算についてこんな風に言っています。
加算とは、介護保険制度が期待することなので、算定していないということは、期待に応えられていないという解釈をすべきである。
加算の算定を徹底していくと、サービス内容的にも人員配置的にも、現場の専門性はどんどん上がっていくことになります。というか、そうならざるを得ないと言った方がいいかもしれません。そして、そういうところに優秀な人材も集まってくるものです。コレ、全部国の意図する通りの流れです。多いに乗っかっていくべきです。
利用者さんからは、テレビを見たいとかカラオケをやりたいなどのご意見はたまに頂戴しますが、それが得意な他のデイに任せると割り切るようにしています。加算関連の仕事が大変でそれどころではなくなるので。
つまるところ、まずは制度を理解して加算をしっかり算定することで高い客単価を実現する。あとはその状態で稼働率をどこまで上げられるか?という話なのです。介護(保険)事業というのは。
それをやってて初めて、保険外をどうするか考え始めれば良いと思います。
2.本当にBenry®︎とガチンコで勝負できると思うか?
で、いざ保険外事業への参入で耳にするのは、部屋のお掃除とか買い物代行などの、高齢者向けの生活支援事業です。既存の介護事業とのシナジーを考えての話なのでしょうが、ちょっと冷静に考えた方が良いと思うのです。
だってそこのマーケットには既に「Benry」とか「ダスキン」などその道のプロがいて、彼らは当然、高齢者市場の拡大に合わせてゴリゴリに営業をしているはず。いくら介護事業で高齢者と接点があるとはいえ、この領域でBenryに勝てるのか?保険外で勝負するというのはそういうことなのです。
3.それでも保険外はやるべき
それでもやっぱりやるべきなのですよ。先の介護保険制度改正では、保険サービスと保険外サービスを組み合わせる「混合介護」のルールが改めて示されました。これが何を意味するのか?深読み過ぎかもしれませんが、今後の介護報酬の更なる見直しを議論するための布石とも読めます。つまり、混合介護で収益を上げることを前提とした介護報酬に改定されることも全く無いとも言えないと思います。恐ろしい話ですけど。
弊社でも、保険外事業として、麻痺専門歩行トレーニングジム ホコトレジム(http://www.hokotore.com/)の運営を始めて4年になります。会社全体に貢献できるくらいの収益を上げるにはまだまだですが、引き続きトライアンドエラーを繰り返しながら形にしていきたいと思っています。
ちょうど今日、ホコトレジム主催のセミナー【運動学習の重要性について】をまさに今開催中なのです!回復期リハ病院の理学療法士さん中心に満員御礼です!ありがとうございます!
講師の山本先生の話は相変わらずめちゃくちゃ分かりやすい。
弊社はこれからも介護(保険)事業でも収益をしっかり上げつつ、保険外は保険外で独り立ちできる事業にしていきたいと思います。
#介護事業 #保険外 #デイサービス #通所介護 #混合介護