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【バイオメカニクス的な視点】理学療法士が古武術から立ち上がりの要点を紐解く

皆さん、
前回の記事は読んでいただけましたでしょうか。

まだ読まれていない方は
👇🏻こちら👇🏻を是非、読んでみて下さい。

前回の記事では、
古武術から学ぶことのできる
立ち上がり介助のコツを紹介しました。

今回は、理学療法士として欠かすことのできない
バイオメカニクス的な視点より古武術を用いることで
立ち上がり介助がなぜ行いやすくなったのか
さらに深掘りしていきたいと思います。

バイオメカニクス:
生物の構造や運動を力学的に探求したり、
その結果を応用したりすることを目的とした学問

今回の記事は有料としていましたが、
まだまだ、実力不足を実感しましたので無料開放いたします。笑
是非、読んでみて下さい!

はじめに

前回の記事では、
立ち上がり介助の際、お尻を引かず相手との
距離を保つことが大事だと考察しました。

そこで、今回は
特に、棒を使用することで立ち上がり介助が楽になる
理由を

・身体重心移動
・股関節や腰椎、骨盤の運動
・座位姿勢         など

バイオメカニクス的な視点より紐解いていきます。

棒を用いた立ち上がり介助
(前回記事参照)

少し、内容が理学療法士・作業療法士の方向けになるかもしれませんが、興味のある方に読んでいただけたら嬉しいです(^^)

※今回の記事では
 立ち上がりを「起立」とも表記します。

起立動作に必要なメカニズム

身体重心の移動

立ち上がるために身体重心は
前方・上方へと移動することが求められます。

まず、
座っている状態から身体重心の前方移動が生じ、
その後、お尻が浮き身体重心の上方移動が生じます。

カラダの運動(身体重心の前方移動)

座っている状態から立ち上がるためには、まず、

・股関節が曲がること
・骨盤が前傾すること 

が必要となります。

この運動が生じることで
身体重心を前方へ加速させることが可能となります。

起立動作時の身体重心の前方移動

カラダの運動(身体重心の上方移動)

お尻が座面から浮いたあと(正確には浮く直前から)
・股関節が伸びること
・膝関節が伸びること が必要となります。

この運動が生じることで
身体重心を上方へ移動させることが可能となります。

起立動作時の身体重心の上方移動

(今回は特に身体重心の前方移動に必要なメカニズム 
 について考えていきます。)

起立動作の前に必要なメカニズム

立ち上がる以前に、座っている姿勢が悪い
楽な立ち上がりは困難となります。

機能的な座位姿勢の獲得

機能的な座位姿勢:頭の位置が前後せず
脊柱のS字カーブが上下に伸びている状態
石井慎一郎:動作練習臨床活用講座動作
ーメカニズムの再獲得と統合ー.MEDICAL VIEW.2021:86-141.

機能的な座位姿勢には股関節の屈曲腰椎伸展
組み合う複合運動が必要です。

機能的な座位姿勢

先述したように
座っている状態から立ち上がるためには
股関節の屈曲と骨盤の前傾が必要です。

このことから、起立動作の始まりは
機能的な座位姿勢からの発展形と捉えられるため
この姿勢の獲得は重要であると考えられます。

姿勢の悪い座位

上図を見てみてください。

このような、姿勢の悪い座位では
股関節は伸展腰椎は屈曲し、骨盤は後傾します。

この姿勢からはスムーズに股関節の屈曲・腰椎の伸展
を産み出すことが難しく、立ち上がることが困難となります。

介助をする際も同様で、
悪い姿勢から立ち上がらせようとすると
介助が困難となります。

こう考えると介助をする前に
相手の座っている姿勢を見直すことは大切ですね。

リーチング動作

さて、それでは今回の記事の根幹とも言える
リーチング動作について考えていきましょう。

リーチング動作:手を前方に伸ばす動作
例)目の前のコップを手を伸ばし座ったまま取る

リーチング動作による脊椎への影響

胸椎の伸展運動は上肢挙上運動に直接的に寄与
するとともに肩甲骨の運動に必要な運動面を形成
(胸郭後面の形状を変える)することに寄与する
千葉慎一:上肢挙上運動への胸椎,腰椎および骨盤運動の関与.
昭和学士会誌.2019;79(1):58-67.
腰椎は上肢挙上の前半で伸展し、最大に伸展した際
骨盤は前傾を開始する
これは上半身重心位置の変化に対応するための代償的運動であることが示唆される
千葉慎一:上肢挙上運動への胸椎,腰椎および骨盤運動の関与.
昭和学士会誌.2019;79(1):58-67.


上記の研究は椅子に座り行っています。

文献から、リーチング動作により胸椎や腰椎の伸展
骨盤の前傾が生じることが理解されます。

腕を持ち上げることで骨盤が前傾をしていることは
股関節の屈曲が生じていることと同じ意味を表します。
(大腿骨を固定して骨盤を前傾させると相対的に股関  
 節の屈曲が生じるため)

このように、腕を持ち上げることで
胸椎や腰椎の伸展骨盤の前傾(股関節の屈曲)
生じると言う文献は散見します。

もう、勘の鋭い方はお気づきですね。

リーチング動作は先に述べた機能的な座位姿勢に
必要な運動と同様の運動が起こります。

リーチング動作(右写真)を行うことで
機能的な座位姿勢(左写真)に近づく

そのため、悪い姿勢で座っている方はリーチング動作を行うことで機能的な座位姿勢へと促すことが可能であると考えられます。

古武術で棒を使用することで

カラダの前に棒を立て、
掴ませることはリーチング動作を促すことと類似します。

棒を掴む=リーチング動作に類似
機能的な座位姿勢に近づき、立ち上がりが容易に

そのため、棒を持つことで
リーチング動作と同様の課題がカラダに要求され
機能的な座位姿勢へと近づき、立ち上がりやすく
立ち上がらせやすくなったのだと考えます。

介助を行う際、棒を持つよう促すことは
このようなバイオメカニクス的な視点からも
機能的な座位姿勢への有効な手段であると考えられます。

この動作は、繰り返すことで、そのまま
立ち上がり訓練にも繋がると考えられます。

まとめ

今回は棒を使用することで立ち上がり介助が楽になる
理由をバイオメカニクス的な視点より考えました。

起立動作には股関節の屈曲骨盤の前傾が必要です

起立動作を行いやすくするためには
機能的な座位姿勢の獲得が重要となります。

股関節の屈曲腰椎の伸展が組み合う複合運動により
機能的な座位姿勢は可能となります。

そして、リーチング動作では、胸椎や腰椎の伸展
骨盤の前傾(股関節の屈曲)が生じ、それは
機能的な座位姿勢を促すことになると考えました。

以上より、古武術で棒を使用したことは
リーチング動作を促すことと類似し、
機能的な座位姿勢へと近づいた結果、
立ち上がりが行いやすくなったのだと考えます。

今回は以上になります🙌🏻
記事を読んでいただきありがとうございました。
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