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扁平足への新たなアプローチ〜足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動の可能性〜


こんにちは、ぐーです。昨日、臨床で子どもの足をチェックする発達測定のようなものに参加させてもらいました。その時感じたことが「扁平足の子が多い」。もちろんしっかりアーチ形成がなされていないであろう年齢の子はいましたが、非常に気になりました。

扁平足は内側縦アーチの低下による足部アライメントの崩れが特徴で、動的バランス能力の低下や膝関節への負担増加を引き起こします。この問題に対して従来行われてきた「タオルギャザー」などのトレーニングは主に非荷重位で実施されていました。しかし近年、荷重下での姿勢制御課題がより効果的であることが注目され始めています。

今日紹介するのは、国際エクササイズサイエンス学会誌に掲載された嶋田らの研究を基に、扁平足患者への新しいリハビリ手法「足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動」の効果について紹介します。



足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動とは?


足趾踵荷重位とは、つま先(足趾)と踵のみで荷重する立位姿勢を指します。この運動は、足趾屈曲筋群や足底筋膜に張力を生じさせ、足部の筋活動を強化する目的で設計されています。

研究では、専用の「足趾・踵荷重起立台」を使用して以下のように運動を行いました。
• 方法: 足趾と踵で体重を支え、1日1分間の姿勢保持を10セット。これを週5回、4週間続ける。


• 対象: 健常成人女性1名(予備的研究として実施)。

研究結果:足部形態の改善と機能向上



4週間の介入後、以下の改善が確認されました。
1. 内側縦アーチ高率の向上
舟状骨が頭側に引き上げられ、アーチが明確化。これは足底筋膜や後脛骨筋の筋活動増加による効果と考えられます。

2. 足部アライメントの改善
LHA(Leg Heel Alignment)が改善し、踵骨の回外位が得られました。これにより後足部の安定性が向上。

3. 動的バランス機能の向上
最大一歩幅の増加が確認され、前方への動的姿勢制御能力が強化されたと推測されます。
4. 柔軟性の改善

足関節の背屈可動域が広がり、足部全体の柔軟性が向上。



リハビリでの応用ポイント


1. 扁平足患者への具体的な活用方法

扁平足症例では、アーチの低下が足部や膝、さらには全身に影響を及ぼします。足趾踵荷重位での立位保持運動は以下のような患者に効果的です:
• 足部の安定性向上を目指す患者
• 膝関節や下肢アライメントに課題を抱える患者


2. 運動の進め方

• 初期段階: 短時間から始め、患者の疲労や負担を軽減。
• 中期以降: 体幹や下肢筋力強化と組み合わせ、全身的なアプローチを検討。


3. 注意点

• 静的バランス機能への影響は限定的であるため、他の運動と組み合わせることが望ましい。
• 高齢者や下肢疾患患者においても、さらなる研究が必要です。



今後の課題と展望


今回の研究は予備的段階であり、対象者数が少ないため、さらなる大規模な検証が求められます。また、足部形態の改善が具体的に日常生活動作にどの程度影響を与えるかを明らかにする必要があります。

それでも、足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動は、足部アライメントを整えるだけでなく、動的バランス機能を向上させる可能性を持つ革新的なリハビリ手法です。

結論

扁平足や足部の安定性改善を目指すリハビリにおいて、「足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動」は非常に有望です。内側縦アーチの形成や後足部のアライメント改善を通じて、患者の機能向上を促進する新しいアプローチとして、臨床現場での応用が期待されます。

まずは短時間から取り入れ、リハビリの一環として患者さんの状態に合わせた実践を進めてみてはいかがでしょうか?

参考文献

1. Kelly LA, Kuitunen S, Racinais S: Recruitment of the plantar intrinsic foot muscles with increasing postural demand. Clin Biomech. 2012; 27: 46–51.
2. 昇寛,石川孝司,松本泰章:足指・踵起立盤の考案と作製.日本スポーツリハビリテーション学会誌. 2015; 4: 35–37.
3. 嶋田裕司,昇寛,冨田圭佑・他:足指・踵荷重起立の下肢7筋への影響―活動電位による観察―.理学療法科学. 2017; 32: 297–300.
4. 佐野徳雄,昇寛,中山彰博・他:足指踵荷重での立位保持時間が足指把持筋力に与える影響.理学療法科学. 2017; 32: 377–380.
5. 村田伸,忽那龍雄:在宅障害高齢者に対する転倒予防対策—足把持力トレーニング—.日本在宅ケア学会誌. 2004; 7: 67–74.
6. 辻野綾子,田中則子:足趾圧迫力と前方リーチ動作時の足圧中心位置の関係.理学療法科学. 2007; 2: 245–248.

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