キミにとっての情熱ってなに?
どうも皆さんこんばんは!今回は久しぶりに考え付いた短編小説を書いていきたいと思います。
それでは早速___
「俺はもう、良いんだよ…」
茜色の空を背に、相棒は僕にそう言った。
何故?君が歌う姿は誰だって勇気づけられるというのに…。
僕は相棒のぎこちない満面の笑みに涙でしか返事を返せなかった。
「ちょっと君ぃ、困るよぉ。」
頭を下げながら、心のこもっていない謝罪の言葉を吐く。高校を卒業後、親の言う大学に通い、それとなく就職活動をして、それとなく内定をもらった中小企業に就職し、早1年。
世間では新人、新米は卒業する年である、みたいな暗黙の了解みたいなものがあると思うが慣れないものは慣れない。
大体、この世の中は個性の使いどころを間違っているような気がする。
小学生、中学生の義務教育時代は、やけに集団行動を意識させてて少しでも違う行動をしようものなら異端児だ、変わった子だ、と言う。
高校生、大学生時代は陰キャ、陽キャで分かれて陰キャはダメだ、陽キャはチャラくて浮気性だとか根も葉もない噂が一人歩きしたりしていた。
そして就職活動になった途端に、やれ長所だの、得意なことだの、大学で培った知識や技術を生かして社会にどう貢献したいかだの、個性や個人の意見を求めてくる。
そして職場に就くと職場にも暗黙のルールがあったり、効率の良いやり方でやろうものなら“職場のやり方”があるとのこと…
つまり何が言いたいかと言うと、個性なんてこの国では矯正がかけられて、人が機械の様に一連の動作しかしなくなる。
はぁ、こんな人生沢山だ。毎日理不尽なことで怒号を飛ばされ、人と貶しあう人生なんてくそくらえだ。
<~♪~♪>
夕方の茜空に爽やかなBGMがかかる。ビルに映し出された画面にはMVが流れ始めており、思わず足を止めた。
<いつもそこにある 一つ星は 僕が目指していた憧れ♪>
アニメーションで学校の屋上から見える一つだけ強く輝く星は流れ星となって地面に降りた。
<何故目指していたのかも なぜ僕の目に着いたかも 何にも思い出せないけど心(ここ)が欲しいと言っている♪>
映像に合わせ、歌詞が流れている中で、聞こえてくる歌声はどこかで聞いたのか、懐かしいような、二度と聞きたくないような感覚が身体を駆け巡った。
(俺だって、歌っていたかったな…)
高校生の時、親に隠れて歌っていた。中学生の時に出来たたった一人の理解者である相棒と共に、俺達はいつも遅くまで学校に残って歌詞を作ったり、歌ってみたり、吹奏楽部の先生にお願いをして楽器を借りて演奏なんかもしていた。
『歌なんて一銭にもならないのよ?そんな事より安定した収入のある会社に勤めなさい。』
まるで全て知っているかのような母の言葉に、父は俺を憐れんで、
『嗚呼、あの“ソラ”とかいうお前の遊び仲間の影響だな?もうお前の不利益にしかならん。付き合うのは止めておけ。』
そんな言葉が投げかけられて、俺はとても情けなくなってしまった。
『悪ぃソラ。俺、もう歌わねぇわ。受験もあんのに、なんつーか、馬鹿らしくなってきちまってさ。』
俺はあの時笑えていただろうか、相棒を泣かせ、受験を言い訳に俺達は歌を、音楽をやめた。
(やめて正解だったんだ。親に何も言われねぇし…)
立ち止まっていた足を動かそうと一歩を踏み出した瞬間
<聞いていただいた曲は“スカイリュウ”さんの「夢」と言う曲です。今回は特別に会場にお越しいただいてますので、この曲に込められた思いや聞いてほしい歌詞などを教えていただこうかと思います!>
地面に戻しかけた視線をもう一度画面に戻した。
“スカイリュウ”?俺はその名前を知っていた。なぜならその名は…
『僕らが活動できるようになったら僕の「空(ソラ)」と君の「龍(タツ)」を少し変えて…』
『…空を駆ける龍、スカイリュウ???』
俺はその時、スカイドラゴンの方がカッコいいだろうって笑ったんだ。それでも相棒は曲げなかった。ありきたりなカッコよさより、俺たちなりのカッコよさを見せたいんだって。
<こんにちは皆さん。スカイリュウのスカイです。この曲は学生時代の“オレ”の相棒を思う気持ちで作った曲です。一緒に夢を語り、共に歌手を目指したオレの相棒に気が付かない間に抱いていた憧憬の念を綴っています。>
画面いっぱいに移った空は少し髪の毛を伸ばしていて、俺が好きだと言っていた赤色で髪の毛のインナーを染めていた。
アイツは変わらず自分を貫いていたんだ。俺がやめると言ってからもずっと諦めなかったんだな。
「ソラ…お前、かっけぇよ。」
人混みの中、一筋の雫が頬を伝った。
【オレの隣は何時だってリュウだけなんだ。早く戻ってきてくれよ。】
そんなことを願いながら、新曲のMVを眺める。辺りを見回して、もしかしたらリュウがいるんじゃないかと期待する。
(タツが言ったんだ。“夢を叶えるのは俺達次第なんだ”って。時には諦めることも大事かもしれないけど“自分の好きだけは疑うな、諦めるな”って。)
はちゃめちゃな言動も、勢いも学生故だったのかもしれないけど。
「ボク達の夢だから。タツが居ないと叶えたことにならないんだよ。」
夢を諦めるのも、叶えるために行動するのも全部自分次第。だからこそ後悔の無い選択がしたい。
そう決意を固め口角をあげて、帽子をかぶり直して帰路についた。
2人が再会するのはもう少し後のお話___
解説は…木曜日にしたいと思います!!
はい!それでは今回はここまでに!!
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