表裏一体
「悪いってなぁに?」
「正しいってなぁに?」
「「私達に教えて?」」
4つの瞳がオレを射抜く。目の前の子どもたちは、いわゆる神と呼ばれる者たという、その言葉に俺は何も言えなくなってしまう。
いつの間にか空の上に立っていたが、質問の内容を少しずつ理解し、言葉にしていく。
武器というものは危ないし、人を殺してしまうこともあるから悪いモノじゃないのか?
そんで俺は、いいや俺達は自分の国を守るために戦ってるんだから正義だろ。だってそれが正しいと教わったんだ。人を殺すのも悪を殺しているだけなのだから国に戻れば正義のヒーローさ。
子どもたちはクスクスと笑っている。目を細めることもせず、声だけで笑っている子どもたちは、俺の周りをふわりふわりと飛びながら、耳元に顔を寄せて
「何故、それを正しいと思うのかな?」
「私達はどちらも一緒に見えるわ?」
一緒だと?あんなのと一緒にすんな!!と腕を振るう。
「だって。」「だってねぇ?」
可愛らしく笑っていた言葉はいきなり冷気を感じる。先程まで子どもらしい柔らかく間の抜けた声色は厳格なものとなって、
「人間は自分こそが正義だという。」
「加え、相手は悪だという。」
「「お互い同じことの繰り返し。だからいつの世も争いが無くならない」」
言っている意味が分からない。4つの瞳が鋭く光り、
「自身らはお互いを悪だと宣い、お互いが正義だと相手に剣を突き立てる。どこに違いがあるというのだ?」
人によって悪の定義も違う、正義の在り方も違う、性格がひねくれているというものも、自分の性格は真面だという者も、結局は人それぞれだということ。考えも思考も育ってきた環境によってかなり違うというのに…
と寂しそうに呟いた言葉は人の子には届かなかったが、
「わざわざ、同じ思考にしようするんだのぅ。」「不思議だのぅ。けれどそちらの方がよほどつまらないというのに…」
心底興味がなさそうに呟くと、神は
「いつの世か…白黒はっきりしなくとも、中立の立場に立ち、お互いを正義とも悪とも区別せぬ、否、どちらもそうなのだと声をあげる人間がいるように願っているよ。」
「おやすみ戦士の子よ。君の来世に祝福を。」