プロフェッショナルが集うチームで、自分だけができることを(研究員 國井厚志)
「私は、魚に対する知見は他の研究者に及ばなくても、ゲノム編集ツールにおいては他の人にはない強みがあります。それぞれが異なる分野に強みを持つからこそ、リージョナルフィッシュの研究開発部は強いチームになっているのだと思います。」
そう話すのは、ゲノム編集ツールに関する知見を駆使して、リージョナルフィッシュの研究開発の推進に大きく貢献している國井厚志。
社員インタビュー第八弾では、リージョナルフィッシュのゲノム編集技術を支える國井さんに、同社への参画理由、仕事におけるやりがいや、今後の展望について聞きました!
※取材当時の内容となるため現在の肩書・業務内容と異なる場合があります。
「幼少期の生き物への興味から、ゲノム編集技術に興味を持つように」
―――よろしくお願いします!はじめに、國井さんの経歴について教えてください。
出身が山口県で、釣りをしている人をよく見かける環境だったので、幼い頃から魚に興味がありました。実際に小学生の頃から自分でも釣りをするようになり、高校生くらいまでよく釣りをしていました。魚以外にも生き物全般に興味があり、小学校の先生に図鑑で読書感想文を書かされた思い出もあります。大学に進学する際は、生き物について学びたいと思い、広島大学理学部の生物科学科を選びました。
広島大学は、国内でいち早くゲノム編集技術に着目した大学で、入学当時も盛んに研究が行われていました。私もゲノム編集に興味を持ち、ゲノム編集の研究を行う研究室に、学部4年から所属しました。配属直後に、研究室が中心となって日本ゲノム編集学会を立ち上げたということもあり、ゲノム編集に関しての発表を聴く機会は多くありました。そこでは、今リージョナルフィッシュが販売している「22世紀鯛」に結びつくような研究や、アレルゲンを抑える鶏卵の開発などが行われていました。当初は医療関係を意識していたものの、これらの研究を知ることで、産業応用に繋がる研究をやりたいと思うようになりました。
自身がやっていた研究は、「ゲノムの中から標的の配列を見つけて、周辺の環境を変える」というものです。これは、ゲノム編集のツールを使ってはいるのですが、厳密にはゲノム編集とは異なります。そもそも、ゲノム編集というのは、はさみの役割を果たす酵素が、ゲノムを構成するDNAの中から、特定の狙った部分を切断して遺伝子を書き換える技術なのですが、私の研究では、ツールがゲノムに結合する仕組みを活かして、切断はせずに、別のことを行っていました。
当時の研究は医療を意識していたので、これらをヒトの培養細胞で行っていました。
遺伝子はただ持っているだけでは意味がなくて、適切なタイミングに適切な度合いで働くことが必要とされます。しかし、ある疾患ではその制御に異常が起きてしまうことがあるので、それを改善するための技術開発をしていました。
専門的な話なので難しくなってしまったのですが、とても簡単にまとめると、ゲノム編集に関連したツールの開発をしていたということですね。より良いツールをつくることで、将来的に医療に応用できたらいいなと思って研究していました。
―――ゲノム編集技術の根本となるツールの研究をされていたんですね!大学院を経て、リージョナルフィッシュに参画することを決意された理由は何ですか?
リージョナルフィッシュがゲノム編集技術を扱う会社であり、研究の産業応用という自身の目標を叶えられると思ったからです。
色々な生き物の中でも、魚は私にとって特に親しみが深いので、魚に携われるというのも魅力の一つです。ただ、私は魚に関しては、学術的なレベルでみると全くの素人なので、自分の強みであるゲノム編集技術に、リージョナルフィッシュが特化していることが最大の理由になります。
「研究成果を魚として食卓にお届けできるのが、何よりの喜び」
―――現在リージョナルフィッシュではどんなお仕事をされていますか?
新たに有用な遺伝子を見つけるための研究をしています。
普段は小型のモデル生物を使って、新たに選んできた標的の遺伝子が有用であるかを調べています。
新たに魚の品種を作ろうとしたとき、既存の論文などから、その目的のためにどこの遺伝子を標的にするべきかの見当をつけることは、ある程度はできます。ただ、それをいきなりマダイやトラフグなどの養殖魚で試してしまうと、時間やスペースを取られてしまいます。コストをかけて養殖魚を育てても、いざ大人になったときに目的の形質が出ないリスクがあるので、まずは成長が早くてスペースをとらない小型のモデル生物で試験をするのを、日常的に行っています。
また、養殖魚の産卵シーズンには、養殖現場に行き、卵にゲノム編集ツールを打ち込むインジェクションという作業も行っています。
まだ私は入社から1年にも満たないので形にはなっていませんが、いくつか構想はあるので、それらを形にして世の中にお届けできたらと思っています。
―――今後の発表を楽しみにしています!お仕事をされる上でのやりがいは何でしょうか?
やはり、自身の研究が、最終的には商品となって皆さんにお届けできるところですね。
ツール開発を専門にしていると、遺伝子が変異したり働きが強まったりすることをゴールと捉えてしまいがちですが、今の仕事では、ゲノム編集をしたあと、魚にどんな変化が起きるのかまで見られるのが、魅力だと思います。
自分が携わったものが将来的に商品となって食卓までお届けできることが、モチベーションを上げてくれます。
また、モデル生物の成長を見守るのもとても楽しいです。
先ほど話した小型のモデル生物は成長速度がとても速くて、2ヶ月ほどで成熟します。自分が設計したゲノム編集ツールで、何らかの形質が出るのを毎日観察できることに、研究の面白さを感じます。
―――ゲノム編集ツールの設計を担当されているということで、他の研究者の方々とバックグラウンドが異なると思いますが、実際にはどのようにお仕事を進めていらっしゃいますか?
自身のバックグラウンドと一番近いのは岸本(リージョナルフィッシュ・研究開発部長)だと思うので、研究者の中でも特に岸本と頻繁にやり取りをして進めることが多いですね。
あとは、研究内容に関連する論文もかなり読んでいます。現段階では使えないとしても、将来的に活用できそうな情報をストックできるよう、多くの論文に触れることを心がけています。
専門分野は違えど、皆生物学に関する知見を多分にもった方々なので、話が通りやすく、説明もしやすいと感じます。
「それぞれの道のプロフェッショナルが集まっているからこその強みをもつ会社」
―――働かれている中で感じるリージョナルフィッシュの強みはなんでしょうか?
研究開発サイドとビジネスサイドがはっきり分かれており、それぞれのプロフェッショナルが対応しているところだと思います。
バイオ系のベンチャー企業では、研究者が同時に経営も担当していることがよくあるのですが、リージョナルフィッシュではそれぞれの道のプロが担当しているので、一企業としての強みになると思います。
研究開発部に焦点をしぼると、単純に博士号を持っている人が多いということと、人によって専門分野がそれぞれ違うので、多方面からの知見を集約できることですね。
―――今後はどんな方と働きたいですか?
誰とでも気軽に話ができて、既存の研究者とは違う分野の専門性が高い人だと嬉しいです。
年齢層が幅広くバックグラウンドも異なるメンバーが多いので、年齢や経歴に捉われずに誰とでも話せて、研究に関して自分の意見が言える人がいいなと思っています。それぞれの研究成果や知見が結びついて集約できてこそ「リージョナルフィッシュの研究開発」としての推進力になると思うので、互いに連携することはとても重要だと感じます。
研究分野に関しては、少し専門的な話になってしまうのですが、バイオインフォマティクスに強い方だととても嬉しいです。バイオインフォマティクスというのは、とても簡単に言うと、「生物学の問題を、情報学を使って解決する」もので、リージョナルフィッシュにはこの分野に触れたことがある人はいても、ここに強い人はいない状況です。なので、データ解析などを得意とする人に入ってきてほしいです。
また、どの遺伝子がどのタイミングで働いて何が形成されるのか、という発生遺伝学や、魚の栄養成分が作られるために働く遺伝子や作られる経路など、代謝について知見がある方が来てくだされば、育種開発がより捗るのではないかと思います。
もし、「自分の専門分野はリージョナルフィッシュとかけ離れているかもしれない」と思ったとしても、ぜひためらわずに応募してみていただきたいです。
私も、当時は自分はちょっと分野が違いすぎるのではないかと思っていました。でも実際に入ってみると、他の人が持っていない専門知識があるからこそ活躍できる場面は多くあると感じました。だからこそ、リージョナルフィッシュでご自身の得意分野を活かしていただけたらと思います。