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「あやかし学校の贄姫さま」第2話

シーン① 実衣自宅・私室

翌日。普通の朝に、気持ちよく目覚める実衣。
実衣 (うん、ありえないよね!)

実衣M「お父さんが作った負債100兆円を肩代わりをしてもらうために」
実衣M「私が妖怪界のボス『総大将』を決める贄姫になれ、なんて」

実衣 (しかも、食われろって?)
実衣 「うん、あれはきっと夢だった――」

実衣がとてもすがすがしい顔でカーテンをあけると、
外からブッブーと車のクラクション。
窓の外では、黒塗りハイヤーがお迎えに来る。

サイトウ 「実衣さま、お迎えにあがりました」

シーンチェンジ 
人魂妖怪うようよ通学しているあやかし学校。

実衣M「夢じゃなかった……」
サイトウ 「それでは今日も頑張ってくださいませ」
実衣 「あっ……」
やっぱり今日もとっとと山を下りていくハイヤー&サイトウさん。

実衣 「はあ~~、今日も人魂ドッヂボールするのかな……」
クオ 「おはようございます。実衣さん」

どんよりしている実衣に、クオが爽やかに挨拶してくる。

実衣 「げっ……」

実衣M「こいつが夫候補のひとり(一匹?)の、九尾のクオ」
実衣M「昨日は他の妖怪に食べられそうになったところを助けてくれたけど」

実衣M「彼らも総大将になるべく、わたしに気に入られようと必死らしい」
実衣M「美しすぎる笑顔が、なんかうさんくさい」

クオ 「今日もいい天気ですね。まるで空も実衣さんの登校を喜んでいるようだ!」
実衣 「そうかな……」

実衣は空を見上げる。
いつもあやかし学校のまわりだけどんよりした雲がかかっている。

クオ 「それでは参りましょう」
実衣 (ホストかな……)

クオは実衣のかばんを持ち、空いた手で腰を抱いてくる。

シーン② あやかし学校・体育館

授業で人魂ドッヂボール中。

実衣M「人魂ドッヂボールは、妖怪界で今、一番激アツのスポーツらしい」

ホイッスル加えて審判しているたぬき担任。
担任 「ルールは人間界のドッヂボールと変わらないはずだ。姫さんもがんばれよ~」

実衣M「ねぇ、先生。たとえルールは同じでも……」
実衣M「ボールが違いすぎやしませんか!?」
実衣 「ぎゃあああああ!」楳図かずお風

からかさ小僧が投げた剛速球(人魂)を全力でよける実衣。

猫娘 「その程度の人魂で、必死すぎ」ぷっ
実衣 (スピードもだけど、そもそも人魂に触りたくないってば!)

そのとき、誰かの投げた人魂で、からかさ小僧がアウト。
投げたのはクオだった。

クオ 「実衣さん、あなたの敵は討ちましたよ」キラキラ
実衣 「あ、どうも……」
クオ 「お次はどいつを狙いますか? 実衣さんのためなら、どんな首も討ち取って……ふぎっ!」

だけど、台詞の途中で人魂が顔面直撃するクオ(かっこわるい)
投げた張本人の酒呑童子のリュウキが、自慢げに実衣のそばにやってくる。

リュウキ 「えっへん! おれすごい? すごい?」
実衣 「あ、うん。すごいね……」

実衣M「これも夫候補で、鬼のリュウキ」
実衣 (身体はおっきいけど、年下ショタ枠……なのかな?)

再び、かっぱが投げた人魂が実衣に迫る。
片腕で庇ってくれたのは烏天狗のジロウ。
しかし、庇った腕がだらんと下がって大やけど。

ジロウ「大丈夫か?」 クール顔。
実衣 「でも、ジロウさん。腕が……」

実衣M「これも夫候補で、烏天狗のジロウ」
実衣 (属性分けするなら……クール系?)

ジロウ「贄姫のためなら、腕の一本や二本なんでもない」
実衣 (たかだか授業のドッヂボールで腕を犠牲にしないで??)

実衣M「総大将候補の皆様、揃って見目がイイのは大変よろしいのですが」
実衣 (おまえら、ルール守れや!)
猫娘 「……ふん」

チームや陣地や外野等も無視して人魂を投げまくる妖怪たちに、内心突っ込む実衣。猫娘だけ、冷ややかな視線を実衣に向ける。

シーン③ あやかし学校・廊下

その日の放課後。
実衣 「今日もつかれた……」
ぐったりした実衣がよれよれと昇降口に向かっていると、
空き教室にひっぱりこまれる。

実衣 (……!?)
猫娘 「騒ぐんじゃないわよ。静かにしてれば危害は加えないわ」

シッ、と口を塞がれる実衣。
猫娘はその体勢のまま、ドアの隙間から廊下をのぞき見る。

廊下にはキョロキョロしているクオ。

クオ 「あの女……俺様の目を盗んで帰るとはいい度胸だな……」
舌打ちして、クオは昇降口から帰って行く。

猫娘 「行ったわね」
実衣 「一体、何を……?」

猫娘 「あたしについてきなさい」
猫娘 「いいもの見せてあげる」見下し冷たい感じ

シーンチェンジ 山中
足場の悪い山の中、実衣に無理矢理歩かされる実衣。

猫娘 「あんた、足遅いわね!」
実衣 「だって足場悪すぎ……」へとへと

猫娘 「ほら、ついたわよ」

開けた場所で、クオが木に向かって人魂を投げている。
跳ね返ってきた人魂を、寸でよけたり。

実衣 「これ……ドッヂボールの練習?」
猫娘 「そうよ。クオはああ見えて、努力家なの」

猫娘 「幼なじみなのよ、悪い!?」
実衣 (妖怪にも幼なじみとかあるんだ……)

一方、クオ。ときたま鏡を見ては、
クオ 「もっと口元引き締めたほうが凜々しいか?」
などと、横顔チェックもしている。

猫娘 「昔は妖術ひとつまともに使えず、同胞たちからいじめられてね」
猫娘 「毎日毎日、絶え間ない努力をして」
猫娘 「ようやく、総大将候補まで上り詰めて」

猫娘 「それで今度は、人間の女を口説くだぁ?」
猫娘 「あんた、クオを選びなさい!」

猫娘 「あんたみたいなチンケな女のために、あんなことまでしてるのよ」
(クオは本『人間女子のトリセツ☆令和版』を片手に、様々な角度から表情チェック中)
実衣 (あの本、誰が書いたんだろ……)

猫娘 「普通の妖怪は、もっとお気楽ちゃらんぽらんって、教室見てればわかるでしょ」

実衣が教室で授業を聞かない妖怪たちを思い出している間に、
猫娘は真剣な顔。

猫娘 「彼の努力を台無しにしたら、あんたのこと呪ってやるんだから」
実衣 「あなたは……クオのことが好きなの?」

実衣の疑問に、猫娘は発狂。
猫娘 「はあ~~? だああれが、あんなへなちょこ小僧のクオなんか!」
猫娘 「あたしはあいつがこんなちっちゃな毛玉だった頃から見てるのよ」
猫娘 「人間の安易な情緒と一緒にしないでくれる!?」
クオ 「誰だ!?」

猫娘の声に、クオが実衣たちに気づく。
本を落としたクオ。実衣を見て絶望。

クオ 「お……終わった……」
クオ 「いつも完璧でいなければ、人間の女に惚れられるなど不可能」
クオ 「俺の、総大将としての夢が……」

実衣 「いやぁ~、別に幻滅もしてないよ?」
本を拾ってあげる実衣。
中身をペラペラ捲って「うわ、こまか」とびっくりしながらもクオに渡す。

実衣 「クオさんは努力家なんだね!」
実衣 「わたしテスト勉強とかも、ついついサボっちゃうから……」
実衣 「地道に努力できるとこ、すごく尊敬する!」

クオ、驚きつつ赤面きゅん。

クオ 「つまり、この俺に惚れたと……///」
実衣 「いや、そこまで言ってない」真顔

その後、「どうして彼女を連れてきたんだ!」と猫娘に文句を言うクオ。
それにツーンと「あんたの良さがわかりにくいのが悪い」と言い返し、
二人はけんか。

実衣は蚊帳の外にされつつも、にっこり。

実衣 (これは幼馴染というより)
実衣 (世話焼きおばさんと甥っ子……みたいなものなのかな?)

実衣 (妖怪も、あんがいかわいいとこもあるじゃん)にんまり

シーン④ あやかし学校・体育館

翌日の授業中。
実衣 「ぎゃああああああ!」楳図かずお風リターンズ

やっぱり今日も人魂ドッヂボール中。
人魂が実衣に直撃する寸前で、守ってくれたのは猫娘だった。

実衣 「猫娘さん……」
猫娘 「あたしにだって、ニャーコって個体名があるのよ」

人魂を投げ返してから、顔を赤らめた猫娘はぼそりとつぶやく。

猫娘 「昨日は、クオに幻滅しないでくれてありがと」
猫娘 「あんたにだったら、クオを任せてもいいかもしれないわ」
実衣 (この子、やっぱりすごくいいこ!)

実衣は意を決して、猫娘に手を差し出す。

実衣 「ニャーコちゃん、わたしと友達になってください!」
猫娘 「はあ? どーしてあたしが……」
実衣 「彼氏とかの前に、わたしは友達がほしいんだよ~」

猫娘に抱きつく実衣。
それに慌てて、クオも飛んでくる。

クオ 「待て、ニャーコ。おまえまで総大将の座を狙うつもりか!?」
猫娘 「んなわけないでしょ……て、あんたいい加減離れなさいっ!」
実衣 「友達になってくれるまで離れないっ!」
猫娘 「はあ~~??」

猫娘 「どいつもこいつも、本当に世話がかかるんだから」

詰め寄るクオと離れない実衣をにらみながらも、
まんざらじゃない様子の猫娘。

2話、おしまい。


あらすじや第1話はこちら


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