タワマンは都市防災の死角?
多くの人の憧れ、タワーマンション。
日本では1997年の建築基準法の改正から建築ラッシュがはじまり、以来、首都圏や関西を中心に数多く建設されています。
その結果、2015年におけるタワーマンション住民の数は、2005年から約2倍に伸び、197万人へと増加しました。なんとその数、群馬県の人口と匹敵します。
眺めがよく、共用施設が充実していて、セキュリティーにも優れている。そのうえ「制震」や「免震」により地震の揺れや衝撃を和らげるので、地震被害を最小限に抑えることもできます。実際、東日本大震災では仙台の免震タワマンは、室内の被害が非常に少なかったとも言われています。
耐震性に優れたタワマンでは、災害時に家が無くなる心配はありません。しかし、だからといって、災害にまったく無関係というわけではありません。
「高層難民」になったらどうなる?
大災害発生時、タワマン住民は生活を続けられる家(空間)があるので、在宅避難が可能です。
しかし、そこで待ち受けているのは、水や電気がない生活です。大地震が起きたときにはインフラが止まってしまいます。エレベーターは動かず、トイレやお風呂は使えません。
ただ、住む家はある。
災害後、自衛隊やボランティアによる食料や水の支援が得られたとしても、物品が届くのはマンションの1階まで。自宅に食料を確保するためには階段で移動しなければなりません。重い食料や水を持って階段を登るのは想像するだけで辛いですよね。30階に住んでいる人は、階段を登りきるのに約15分もかかってしまうそうです…
もちろん、多くのタワマンには大規模停電や災害時に備えて、電源装置や燃料が確保された非常用エレベーターが設置されていることでしょう。
しかし、非常時には普段と比べて低速運転になってしまい、メンテナンス担当会社が点検した後でなければ通常運転に戻れない可能性があることや、非常用電源が切れてしまうことも考えられます。そうなった場合、しばらくは不便な生活が続くことを覚悟しなければなりません。
また、災害時には水道が止まり排水管も破損してしまう可能性があります。つまり、トイレを使うことができません。もし排水設備が破損していたら、仮にタンクに残っている水や風呂の残り湯を使ってトイレを流したとしても、どこかで詰まって自宅や下層階に下水が逆流してくる可能性があるからです。
移動は階段の昇り降り、トイレが数日間使えない。
こうした状況を称して「高層難民」と呼ぶこともあるようです。
大災害が起きた場合の停電期間と必要な備え
では、もし大災害が起こった場合、どれくらいそのような生活を続けなければいけないのでしょうか。
一般的に考えられているインフラ復旧の目安は
● 電気は完全復旧時間まで、最長7日間
● 上下水道は完全復旧まで、最長1ヶ月
と言われています。
さらにエレベーターの全面復旧にいたっては電気の完全復旧からさらに4日以上かかるようです。
では、タワマン住民はどのように対策したらいいのでしょうか?
タワマン住民が災害を乗り切るには、十分な備蓄品を揃えることが重要です。具体的には、以下のものを準備するといいと言われています。
● 最低3日分の水(1日1人当たり3Lを目安に)
● 最低3日分の食料(缶詰やレトルト食品、カセットコンロ・ボンベ等)
● 人数分の簡易トイレ(3日分を目安に)
● 非常用ライト
● 非常用電源(情報収集・連絡手段としてのスマホ等の利用)
これらを家庭に準備しておくことで、災害時に外に出なければ行けない頻度が少なくなり、負担も大きく減りますよね。
こちらは、2020年11月22日に起きた東雲タワマン大規模停電を体験された方のツイートです。
半日程度の停電であっても、やはり情報取得ツールとしてスマホが重宝したことがうかがい知れます。
停電が長期化した場合は普段使いのモバイルバッテリーでは容量の面で不安が残ります。予備電源として、空気発電池の備蓄も選択肢に入れることを私たちはおすすめしています。
備えを万全に
その他にも、火を使わないレシピ・防災レシピをメモしておくことや住んでいる地域の想定される被害を知っておくことも災害対策として重要です。
「制震」や「免震」に優れたタワーマンション。その耐震性を活かし、在宅避難の対策をさらに盤石にするためにも、十分な備蓄と日頃からの想定・訓練を欠かさないようにしたいですね。
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