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ワーホリ中に視察したドイツの幼稚園①

にじこです。もう7年前のことですが、ワーキングホリデービザを利用して1年間ハンブルクに滞在し、この期間に私は合計8施設の幼児教育関連施設を訪問、研修をさせていただきました。
今回は、1件目の研修と、そこでのこどもたちとの思い出を振り返ってみようと思います。


研修開始と最初のやらかし

前回の記事に書いたように、幼稚園突撃訪問作戦が功を奏し、1件目の研修が始まったのは2018年1月2日のことでした。午前中のみ研修、午後からは語学学校に通う生活が始まりました。当時の私のドイツ語レベルはA1を勉強し始めて2ヶ月目…。相手の易しいドイツ語は理解できるけど、文法や単語を考えていると言葉が詰まって話せない、という感じでした。多分、ドイツの2歳児のほうがコミュニケーションが円滑にできるレベルだったと思います。
研修2日目、私は大失敗をします。それは遅刻。遅刻の原因は、電車の乗り間違えと、その後引き返す電車の遅延。学校にも社会人になってからも当時はまだ遅刻なんてしたことがなかった上に、当時は語学学校の寮(学校の上階の部屋)に住んでいたため、ドイツに来てから電車にほとんど乗った経験がなく、時刻表の見方もわからないことが相まって大パニックでした。とにかく連絡しなければと思い、決死の覚悟で電話をかけますが、営業時間外だからかけ直せなる旨の留守電…。カタコトのドイツ語で「電車を間違えたけど引き返す電車が来ないので遅れます」と録音を残し、なんとか園に30分程遅れて到着したものの何故か全く違うクラスの先生から大目玉、電話ぐらいしなさい、と。え…出なかったのそっちじゃん。
ちなみに、現在は他の園で保育士として働いていますが、公共交通機関の遅延やストライキは日常茶飯事で遅刻する人も大勢います。また、何故か電話が繋がかない日も頻発しています。保育業務に忙しく出られないのではなく、電話が鳴らないのです!回線の問題があるのです!当時の私に言ってあげたい、日常、気にするな、と。

どんな園?

さて、私が最初に研修したのはハンブルクでは一般的な幼稚園でした。
1グループ22人(3歳から6歳)の子どもに担任2人。グループは3つ。
園庭を持つ大きな幼稚園で、金曜日にはいつもAusflug(散歩のような遠足のような、お出かけの日)があったり、外部から週に1回ダンスの先生が来たりしていました。
時々先生たちが、AngebotやProjektと言って、設定保育的なことをしていましたが、強制ではなくやりたい子が参加する方式で、ほぼ自由遊びでクラスはあるけれど、ほぼクラス関係なくどこでも遊んでいる感じでした。
朝食は時間内に自由にカフェテリアで食べて良くて、昼食はグループごと30分入れ替え制でした。

大まかな1日の流れ
7:00 受け入れ開始
8:00 朝食開始(保護者も別料金で食べることが可能)
9:00 朝の会
9:30 自由遊び
11:30 昼食①
12:00 昼食②
12:30 昼食③
13:00~16:00 降園

ドイツ語ができないから…

先にも書いたように、私はドイツ語がほぼ話せない状態でした。国際色豊かな都市とはいえ、幼い子どもたちにはの中には、見た目も言語も違う日本人に興味を持つ子や様子を見る子も沢山いましたが、盛大に拒否する子もいました。すごい顔で怒鳴られた時、全く聞いたことがないドイツ語でしたが、「近寄るな!」とか「あっち行け!」という意味合いがあるのはすぐに理解できました。なだめることも、どうして駄目なのか聞くこともできず、ただただ悲しく落ち込みました。日本語だったらもっと保育できるのに…と悔しかったのを覚えています。
後々あの子が言っていた「Geh weg!!」という言葉を語学学校で文法的に学んだ時、思い出してまた落ち込みました。

ドイツ語ができなくたって!

語学ができなくてもどかしい日々でしたが、それが良かったこともありました。ただ、聞くだけでいい、ということです。トコトコと私のところにやってきては何かを語っていき、しばらくすると満足そうにまたどこかへ行く子が沢山いました。明らかに喧嘩をしていた子どもも、私に助けを求めて来るのですが仲裁することもできず、ただ双方の話に頷いて話を聴くだけ…。でもそのうち、スッキリしたような顔でまた遊び始めるのです。
変なタイミングで余計な質問をしてしまったり、私の価値観を言って押し付けてしまったりすることなく、ただ聴くという時間も大切なんだなと感じた瞬間でした。なかなかできないことですが、子どもたちを待つ時間って大事ですね。

私のママと一緒だね

ある日、女の子が「にじこはどうして早く帰っちゃうの?私はまだここにいるから遊ぶ時間あるよ。」と、私に話しかけてきました。私は午後から語学学校に通うため、研修が午前中のみでした。ドイツ語を学校で勉強しているからだよ、とカタコトのドイツ語で一生懸命説明していると、研修担当の先生が、助けてくれました。彼女はニコニコしながら私に「ママと一緒だね。私のママもドイツ語を話せないから勉強してるよ。でも、にじこはドイツ語を話してるのに何でもっと勉強するの?」と。大人がドイツ語が話せないことを不思議がる子どもが多い中、また、大人同士でも差別の対象になるのに、彼女は、カタコトで話す不思議な人ではなく、にじこには他の言葉がある、ということを一瞬で理解し、フラットに見てくれたのが本当に嬉しかったことを覚えています。そして、え、これでドイツ語で話せる、と言ってくれるのか…と。
その翌日から、私の帰宅のタイミングで玄関に張り付き、「帰っちゃだめー!!もっと遊ぶ!」という攻防戦が始まるのでした。最初は「にじこは学校の時間だから、どいてあげなさい」と助けてくれた先生も、「にじこは、私達とドイツ語をここで勉強すればいい!私が教えてあげる!」という発言に爆笑しながら、いいアイデア!と。それ以来毎日爆笑しながら私を見送ってくれました。嬉しいやりとりだったな。

話せなくて当たり前

ある日のこと、年長ぐらいの年齢の男の子が私に「お前は赤ちゃん、大人のくせに話せない」と言ってきました。何故か開き直っていた私は「君、何歳?」と質問すと6歳との返答がありました。次の私の質問は「2ヶ月の赤ちゃんってお喋りする?」、彼の返答はもちろんできるわけない、と。最後に私が彼に伝えたのは、「確かに私のドイツ語は上手ではないけれど、君は私の質問に答えてるから、私の言いたいことは理解できているよね?私はドイツに来て2ヶ月、だけど2ヶ月の赤ちゃんよりドイツ語を話せるよ。君はドイツに生まれて6年、どっちのがドイツ語を長く勉強しているかな?」もちろん流暢に伝えられていなかったけど、それ以来彼は私のところに来て、アルファベットを教えてくれるようになりました。流石にアルファベットはわかるのだけど。笑
そして横で聞いていた先生は、またもや爆笑していました。



ここは園舎・園庭のある普通の園で、保育に多少の違いはあれど、日本と変わりないかな、と思っていたけれど、振り返ると子どもたちとの素敵なエピソードと、いい経験ができたと思えた2ヶ月間でした。

次回は2件目モンテッソーリの幼稚園での研修です。


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