コミュニケーション障害#2
前回からの続きです。
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コミュニケーション障害#1
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隣に居るベテランの南さんに細かく聞きながらいろいろと確認をする副社長。
最終的に納得したようでその場で買い付けを書く段取りになった。
「買い付けはこれでいい?」
「・・・はい。ありがとうございます。」
「じゃ図面上がったらすぐに連絡して。契約書の内容はそれまでに確認する感じで大丈夫だよね?いつ用意できる?」
「・・・・・はい。すぐにでも。」
おい副社長。お前さ。
何度も言うが俺はお前の部下じゃない。
まずはその口の聞き方やめい。
思わず本音が喉から出てきて副社長の首を絞めてしまうところだった。危ない危ない。
あ、まてよ。
ベテランの南さんに手取り足取りしてもらっているっぽいから今後は窓口をこのおっちゃんにすればよくないか?
副社長は責任者として現場を確認しに来ただけで契約とか後の段取りは担当者に丸投げってパターンよくあるじゃん?いいね。そうあってくれ。
というかそう仕向けよう。
「南さん”も”分譲や開発にお詳しいようですので、今後のやり取りは南さんと連絡すればいいですか?副社長は多忙ですよね?」
”も”←これくらいの嫌味は言わせてくれ。多分ボンボンには全く嫌味として通じていないだろうが・・・
「あ~いいよ。大丈夫大丈夫。俺”の方が”詳しいから。ね、南。それで大丈夫だろ?ということで全部俺に直接連絡してくれていいよ。遠慮しないでいいから」
隣で頷く南さん。
違う。全然大丈夫じゃない。
あと遠慮なんてしてない。
てかさっきから初歩的な質問ばかりしてんじゃん。
ただでさえ普通の契約よりも農転がらみでやり取りが増える案件なんだ。
それに加えてあの売主だ。
こんな甘やかされたボンボンに上司風の口を聞かれながら、コミュ障の売主と足並みをそろえて開発書類の準備とかをしたくない。
絶対そのうちグーで目ん玉殴ってしまいそうだ。
いや、たぶんやっちゃうと思う。
だから全然大丈夫じゃないよ。
「・・・かしこまりました。では早急に契約書と重説作りますので、出来上がり次第ご連絡しますね」
「はいよろしく~」
イラ・・・
バタン。
黒塗りのセダンの後部座席に消える副社長。
運転席には南さんが乗り込む。
【うちのバカが申し訳ございません】という目線と会釈。
売主もなかなかだがこっちもコミュ障か。
南さん、お気苦労お察しします。
はぁ。とりあえず契約だ。
無になれ俺。
大丈夫じゃないけどきっと大丈夫だ。
重説のひな形を作りながら売主の小田さんにライン
『買い手のお客様が見つかりました!業者さんが造成地として購入されるので当初の想定通りに進んでいます。』
早い買い付けだからやっぱり安すぎたんじゃないか?って突っ込まれる可能性が高い。
だが、どう考えてもこの規模の造成をするとなると俺が想定した媒介の金額がアッパーなんだよな。早すぎるわけでは無くて造成とかの諸費用を考慮して計算した俺の査定がぴったりハマったというだけなんだが。。。
この早すぎる買い付けってのは損した気分にさせちゃうことがあるから要注意だ。
既読
・・・。
うん。スルーねw
もう慣れたよ。
どうせ夜中に『早すぎませんか?もっと高くしてほしい』とか来るんだろうなw
想定内想定内♪
そうこうしていたら農業委員会から着信。
『例の農地法許可の切り替えですけど、特に特別な書類は必要ではないです。新しい方に移転する時に新たな5条許可を得ればいいので』
お~仕事が早い。
役場の事だから返事は早くても明日以降だと思っていたけどな。
この担当は腰も低いしスピード感もある。お役所っぽくなくていい。
この契約の唯一の癒しだなw
そうとなれば早速売契と重説作成っと♪
・・・・う~ん。やっぱり気になる。腑に落ちない。
ネットで法令など事例を調べながら重説を入力する。
小一時間ほどPCとにらめっこしていたが、どうしても気になったので農業委員会に再度電話をする。
「さっき新しい方の5条申請だけでいいって仰っていましたが、前回の農地法5条許可の内容を履行されないまま今の売主さんに所有権移転したわけじゃないですか?これって農地法の違反になりません?厳密に言うと農地法5条の許可条件が満たされていないからやっぱり前回の申請の取り下げとかをするとか、県に提出する際に農転後に履行できなかった理由書とか売主さんの始末書みたいなものって必要じゃないんですか?」
『あ~金城さん大丈夫ですよ。私も確認したので。逆にそこまで先回りして考えてくれるプロの方が新しい申請を行ってくれるから助かります。最近は何も分からない人が増えてましてw』
そっか。考えすぎか心配しすぎか。
農業委員会が言うから大丈夫だろうな。
過去にも農転何度かやったけど開発申請も絡んだりしてなんやかんやでガッチガチに書類とか提出させられたんだけどな。
だが売主の始末書とか許可取り下げとかが要らないならあの小田さんとやり取りする時間が無くなるから一気にやり易くなる。
結果オーライってことかな。とりあえずいい流れだ。
売契と重説のドラフトが出来たから早速副社長にメール。
一応確認の電話もしておく。
『は~い。お疲れさ~ん。重説?もうできた?オッケー確認とくから。あとね~俺のとこはメールが来たらすぐにスマホで確認できるから毎回こうやって電話しなくてもいいから。金城さんとこもメールとスマホ連動した方がいいんじゃないかな?』
おい。何度も言うが俺はお前の部下じゃない。
その話し方は気を付けろよバカ。
あとPCメールと連動くらいしてるわバカ。
一応メールした後にご確認くださいって電話すんのが礼儀だろうがこのバカ息子。好き好んでお前に電話しないわばか。
ふぅ。。。
どっと疲れた。
これで今夜小田さんからネチネチ言われたら一気に禿げそうだ・・・
スマホの副社長の登録を【ばか副社長】に変更っと。
ちょっとすっきり。
さて、今夜に備えて理論武装しようかな。
*************
そしてその夜。
ピコ~ン♪
小田さんから想定通り深夜の返事。
『買い付けの件了解しました。』
へ?これだけ?
何故こんなに早く決まったのかとか説得の準備万端で臨戦態勢だったのに。。。
なんか拍子抜けだ。
あ、査定した時から売るっていう返答の空白の二カ月の間に他社にも見せたけどどこも安い評価だったのかもな。
それなら納得だ。
あと、そうだ。この人とのやり取りを極力短縮したいから農転書類は事前読みの時に済ませよう。
農地転用の申請って締め切りがあるしな。
『ご連絡ありがとうございます。契約前に契約書の内容確認が必要なので、またお手数ですが小田さんのお時間を頂くことになります。
その際、農地転用の書類に署名押印が必要になりますので、印鑑もご持参いただくようよろしくお願いします。』
既読
・・・。
うん。平常運転w
翌朝。
家屋調査士から仮図面と高低測量の結果が届く。
仕事が早い。いいね。流れに乗ってきた♪
早々に契約捲いてさっさと農転終わらせようw
そんないい気分の朝を迎えていたところにアホ副社長から着信。
『お疲れ様~。今大丈夫?契約書と重説の内容確認して問題無さそうだから図面が出来たらすぐに契約しようか。』
いら。。。それは前からそう言ってんじゃん。
「はい確認ありがとうございます。仮測量の図面も先ほど届いたのでこの後に送りますね。あと、売主さんとの契約事前読み合わせの際に売主分の農転の署名等は貰って用意しておきますので農転の申請に必要な書類も契約時にお渡しします。」
要件だけ言ってサッサと電話切りたい・・・
『お~金城さん流石だね~仕事早いね~。どう?ウチにきて働かない?』
イライラ・・・・!!
『はっはっは~冗談冗談。金城さん小さいなりにも会社の社長だもんね~。あ、でも社長なら尚更ウチで働けるじゃん?業務委託みたいな感じで。従業員なら副業規定とかで難しいと思うけど。なんならウチの子会社になってもいいよ。よかったら考えといてね~』
ブチ!!!!!!
は?お前なんなん?
何でお前の下で働かないといけないんだよばか?
子会社?何でだよばか。
あと小さい会社?小さいなりにも?
お前こい!今すぐこっち来て殴られろ!
あ、いいや、俺が行く!すぐ行くから待っとけ!
メリケンサックとカッターナイフ買っていくから少し時間かかるけどな!
あ、ビーバップの鼻割りばしもやりたいからコンビニも寄らないとな!
ガムテープも買うからコンビニよりはホームセンターが品揃えよさげだな!
椅子に縛って動けなくしてできるだけ長く痛い思いをさせて苦しむように少しずつ!!・・・・・・。
いや違う!
・・・落ち着け俺!w
こいつを〇すのは後だ。
今は契約が優先だ。
大丈夫。
俺はまだ大丈夫だ。。。
塀の中に入るのは決済が終わってからでも遅くない。
うん。大丈夫。。。
切り替えろ。おちつけ。うん。
とりあえずスマホを取り出す。
【クソばか副クソ社長クソ息子】更新っと。
・・・。
畜生、全然すっきりしない。
うし!切り替えて仕事仕事!
『小田さん。買主業者さんとの契約書の内容確認が終わりましたので、近日中に事前の読み合わせを行いたいと思います。ご都合のいい日程をお知らせください』
既読
・・・。
よし。平常だw
その夜
ピコ~ン♪
『明日の8時にマックでお願いします』
あ、忘れてた。
そういやこの人の時間感覚も異常だったっけw
『ご連絡ありがとうございます!毎度再確認して申し訳ありませんが午前と午後のどちらでしょうか?』
既読
・・・。
はぁ。。またwww
ピコ~ン♪
おお!珍しいwすぐ来たwww
『明日は仕事が休みなので午前です。前と同じ曜日ですよ』
う~んw
言い方ね。
休みなのでとか前と同じ曜日とか要らんから午前でお願いしますってだけでいいじゃん。
前と同じ曜日で同じ朝かもしれんけど前に午前に会ったのはもう二カ月以上前で連絡も途絶えてたから覚えてるわけないじゃんwww
てか何回も同じやり取りしてるからそっちで午前か午後か最初に付けて送ればいいだけじゃんwww
なんかアホ副社長とやり取りしたせいか小田さんの空気読めないのは流せるようになったw
みなさん。俺、成長しました。
翌日のマック。
きっちりと30分遅れてくる小田さん。
大丈夫。慣れた。
俺は成長した。
アホ息子のおかげで心が広くなった。
相変わらず顔色を変えない小田さんを前に一通り契約内容の説明と農転の流れなどを済ませる。
小田さんは聞いているのか聞いていないのか分からないけどこっちの言うがままに農転の書類に署名押印をする。
「今後の流れを説明しますね。
今後は契約の日程をすり合わせします、先方とスケジュールを合わせたら売買契約締結のために一度弊社までお越しいただく形になりますのでよろしくお願いします。」
「は?今サインしたのが契約じゃないの?」
「いえ。これはさっきも説明した農地転用の書類に署名押印を頂いたやつで、契約書はまた別日に相手の業者さんと対面でやるんで・・・」
「え?なんで?ちょっと嫌だな・・・」
あ、この人は人と会うのが嫌な人っぽいよな。コミュ障だもんな。
じゃあ持ち回りでやろうか。
買主も業者だし別に対面が絶対というわけじゃないっしょ。
「では契約書を製本したら再度お時間を頂いて郵送・・・」
おっと、この人のレスポンススピード考えたら郵送は危険だ。
平気で一週間以上送り返さないタイプだと思うw
「・・・あ、製本したら小田さんに再度お時間を頂いて署名押印してもらって、その後に買主さんの署名と手付金の振込みをしてもらうという形でもできますよ。それでやりましょうか?」
「あ、うん。南部まで行かないでいいならそれがいいかな。長距離運転したくないし」
おま、、、人に会いたくないんじゃなくて単純に長距離運転が嫌なだけかい!!!w
ていうか毎回それを俺に強いているんだけど?w
面倒だって自覚しているなら俺が毎回こうやって遠出してきている事に少しはねぎらいの言葉ってもんを・・・
・・・ま、いいやw
この人のコミュ障は慣れた。
俺は成長したんだし。大丈夫だ。うん。
「じゃあ今日は休みだから何時に戻ってこれる?」
は??
え?何?聞き間違い?
今から戻って製本してまたここに来いって?www
あんた長距離嫌だって自覚あるくせにこっちには平気で往復させるの?
ていうか午後の別アポあるけど行けるか?
いや、この際アポをずらしてでも今日でこの人からの書類を完結させるのが優先かな。
午後のアポは夕方にスライドできるはずだし。
「あ~、では一度戻ってからすぐに来ますので13時はいかがですか?」
「う~ん。13時って言ったら一時の事だよね?お昼食べた後は昼寝したいから三時は?」
おい。こっちにはすぐ動いてもらう癖になにのんびりお昼食べてゆっくり昼寝しようとしてんだよ。
ダメだ、成長したはずだけどやっぱり俺この人も無理だ。
てか15時にここ来たら午後のアポ今日無理じゃん。
あ、午後のやつ終わらせてから来ればいいか。
「小田さん、では午後に一件先約があるので16時か17時でいかがですか?」
「え?さっき一時でって言ったのになんで先約があるの?」
ち!!変なとこ揚げ足取るww
お前の都合に合わせてこっちはフル回転でスケジュール調整回しとんじゃ!w
「あ、もし早めに13時で済ますならそれをずらそうと思ったんですね。でも15時以降であればそのアポを終わらせてから来ますので16時なら間に合いそうと思いまして」
「あ~四時?夕方は相撲観るから八時は?」
おい!!!ww
相撲??
不動産売るよりも大切な相撲?www
あとさ、さっきから俺13時とか16時とか言っているのに全部一時とか四時とかに戻すなよw
最初そのせいでやり取りがおかしくなっただろ?学習しないの?
24時間制のいい方が嫌ならせめて午前午後を付けろよ!
もう無理!w
俺成長できなくていい!
この案件やめたい!
もういい!www
・・・はぁ。
でももういいや。今日で基本的にこの人とのやり取りを終わらそう。
「では20時に再度こちらのマックで・・・」
「うん八時ね」
メリケンサックを買ってから戻ってこようかな。
またまた長くなったので続きは次回。
では~
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次回:コミュニケーション障害#3