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我々はカウンセラー#1


こんにちは〜。
株式会社REGATEの金城です。

本日は売買仲介実務の中でも大事な「ブツ上げ業務」について。
“ぶつあげ”とは不動産用語でブツ(物件)を上げる(売り出す)という隠語?俗語?のことです。

このブツ上げの仕事は不動産仲介業務の根幹の仕事です。


売るかどうか迷っているお客様に寄り添って売ってもらう決心を促す。
売却までのあらゆる障害を推測しながらそれらを排除する。
んで媒介契約を結んで購入者を探して売却するという感じです。

そんな仕事の中でも少し思い出深い案件がありましたのでお披露目します。

※今回はブツ上げの勉強要素が多くてムカつく人や吐き気を催す人はあまり出てきません。

ではど〜ぞ〜


◆投資用ワンルームマンション


ピコ〜ン♪
一件の査定依頼。

『HPのコラムを拝見しました。5年前に投資用のワンルームマンションを購入してまして現在売却を視野に入れて悩んでいます。お時間があるときに是非ご相談をさせてください』

お。投資用区分か。
久しぶりだな。


どれどれ、物件の内容は。。。

はは〜ん、完全に投資物件営業マンにやられたパターンか。

*****
投資物件、特にワンルームマンションの世界にはブツ上げ業者と販売業者(販社)があって、お互いがお互いに永年循環。。。
という関係性があります。

詳しくはこちらのページをお読みください。
投資用ワンルームの世界~よく知られていない世界~
*****


保険とか年金とか資産形成とかいろんな謳い文句に踊らされて買ったはいいけど収支が逆転して毎月赤を叩いているという典型的なヤツだろうな。


なんにせよ久しぶりのワンルーム案件。
腕が鳴ります♪

早速電話。

「査定依頼ありがとうございます!つきましては詳細を伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
「はい。あ、少し待ってください。すぐに折り返します」

依頼者の名前は那覇市在住の藤森さん。
声の感じだと気弱なタイプ。
まさにワンルーム屋さんの大好物。

すぐに折り返しの着信が来る。
これも大好物。

「あ、藤森です。すみません」
「折り返しありがとうございます。
お忙しいところ申し訳ありません。物件の詳細についてお伺いさせていただけますでしょうか?できれば現在の賃料や管理会社の管理料、修繕積立金とか、あと購入した時の販売資料等があれば是非見せていただきたいのですが」
「はい。資料は全て手元にあります。」
「あ、その資料を拝見させていただくことは可能ですか?」
「はい、できれば家じゃなくてどこか別の場所でお会いできれば助かります」

お♪向こうから面談の提案♪かなり必死だな。
家じゃないということは家族に内緒とかそんな感じかな?

これはいいぞ♪
涎が止まらない。。。


◆面談&ヒアリング



藤森さん指定のお店はいろんな商談で使われるファミレス。

いい場所は取られてしまうため落ち着いて話せるスペースを確保するために少し早めに着いて席を確保。
周りを見渡すと怪しい営業マンが一生懸命養分を育てていると思われる商談の様子がちらほら見える。

営業マンはワンルームゴリラとか口がうまそうな詐欺師みたいな人ばかり。彼らから話を聞いている人は見るからに気の弱そうな人や人の良さそうな人たちだ。。。


みんなが一生懸命説明を受けているのはワンルームマンションなのか保険なのか投資なのか仮想通貨なのか。。。
なんにしてもこのお客さんたちはみんな目の前の営業マンの養分でしかない。

俺が働いていた頃よりは見た目がヤク○さんとかチンピラさんっぽくない感じになっているな〜。懐かしいな。そういえばワンルームってこんな世界だったな~。

藤森さん。
きっとあなたもここでこの人たちみたいに軟kinされて恫かtsuされてハンコを押しちゃったんだね。。。

そんな感じで少し昔の思い出に思いを馳せていると藤森さんは時間ぴったりに現れた。



思い出モードから営業モードに切り替える。

藤森さんは地方公務員の30代前半の男性。実家住まい。
このマンションは投資商品を薦めるセミナーで買ってしまったとのこと。。。
しかもネットか何かで見つけたセミナーに参加してしまい、あれよあれよとサインをしてあっという間に新築ワンルームのオーナーさんになったという立派な養分オブ養分。
ネット広告に誘われるがままにセミナー参加ってwww
知らない人について行ったらダメって教えられなかったんだろうな。

藤森さんが買った物件は東京都内でも厳しめのエリアに造られたワンルーム。
藤森さんは東京に行ったこともないし、この物件を見たこともないらしい。
しかも販売業者のサブリースも付帯するという典型的なヤツ・・・

セミナーで渡されたパンフレットとその営業マンのセールストークを鵜呑みにしてその日その場で契約をしたらしい。

藤森さん曰く

「東京ならずっと安定して賃料が取れると聞きました」
「これはとてもいい商品だと言われました」
「人気物件らしく私は最後の一戸を運よく買えたらしいです」
「保険がわりだと聞いています」
「節税もできますし」
「老後の年金になるし、資産形成にもなるし」
「何よりもその営業マンが親切だったので・・・」

ワンルームマンションの販売員さんの教科書に載っているような謳い文句で瞬殺された履歴が判明。

***************************
ここで私からのツッコミ

「とてもいい商品だと言われました」
とてもいい商品はセミナーで売りません

「人気物件らしく私は最後の一戸を運よく買えた」
まだ買える与信があれば最後の一戸が何戸でも出てきます

「保険がわりだと聞いています」
何のための保険?

「節税もできますし」
損益通算で損して所得税を減らすほど稼いでいます?何を節税するんですか?

「老後の年金になるし、資産形成にもなるし」
年金変わりになる物件や資産になるような商品は・・・

「何よりもその営業マンが親切だったので・・・」
・・・・・。

************************

どうやら藤森さんはすぐに目の前の人を信じてしまうタイプらしい。

多分今私がその気になって新しいワンルームを勧めたらそのままハンコを押すんではないだろうか?というくらいに目の前の人を信じすぎるタイプ。

周りで商談をしているどのお客さんよりも完全な養分だ。
だけど今回はこっちの仕事は新築マンションを買ってもらうことではない。

どうやれば売れるか?
出口を見据えながら頭の中で売却価格と利回りを計算する。


◆持ち出しができるか?



出口はあるのか?その一点に集中してヒアリングを続け、
資料を確認しながら整理して都内でワンルーム営業をしている先輩に電話。
その場でマンション名と築年数、家賃を伝える。

「金城。その物件、かなりキツイなwあのエリアは需要が全くないよw空室率がすごくて家賃の下落率は都内でもピカイチwww」

都内でも有数のアウトレイジ感が漂うあのエリア。
スカイ〇リーが見える以外には・・・・(とてもいいところです)

現役バリバリの先輩曰くかなりキツイ物件、んで残債が高すぎて持ち出しをしないと売ることができないことが判明。
少なくとも300万円は持ち出しをしないと抵当権の抹消ができない。
※持ち出し=売却価格に手持ちの貯蓄を出さないと売れないこと


売ることはできても300万円の赤。
これは心理的なハードルがかなり高い。


新築物件を高掴みした挙句にサブリースの設定賃料は相場よりも割安。
管理費・修繕積立金とローンの返済で毎月マイナスという典型的なパターン。。。

サブリースさえ外れれば残債とトントンで売れたかもしれないのに・・・

ワンルームマンションの市場ではエリアと駅からの距離や築年数などから導き出す相対的な利回りというのがあって、売買できる相場というものが明確に決まっている。
投資物件は住宅と違って「出していればいつかは売れるかもしれない」という奇跡がほぼ起きない。

藤森さんに貯蓄がなくて持ち出しができないようであれば早々に手を引くのも止むを得ない。

ということで持ち出しなしで売るような提案をしても時間の浪費になるばかりで意味がないと判断し、正直な相場と出口の価格を説明。

「やっぱりそうですよね。ネットでもそう書かれていましたし・・・」

幸い?なことに真面目な藤森さんはコツコツと貯めてきた貯蓄が500万円ほどあるらしく、持ち出しを決断すれば売ることは可能らしい。
しかもネットの情報で売却する時は持ち出しが必要な場合があるという事を事前に知っていた模様。

にしてもネットの情報を全部鵜呑みにするのはどうかと思いますが・・・



◆モハメドトーク・・・



そうとなれば話の方向は確定。

「いつまでも赤字の物件を持っていたいですか?」
「築年数が古くなれば家賃はどんどん下がります」
「これを持っていることで不安だから今日は相談に来たんですよね?」
「持ち続ける不安な生活を継続するのと一時の出費はどちらの方が楽でしょうか?」
「持ち続ける事で気を病んでしまう方もたくさんいますよ」
「いつかは市場が良くなることを信じて持ち続けるのも藤森さん次第です」

過剰に煽らず、だけど安心させることもしない。
藤森さんの中にある不安をできるだけ具体的に指摘して掘り起こす。

その不安の周りをぐるぐる回り続けてジャブを打つような、
一回不安にさせてちょっとだけ安心させるというトークのヒットアンドアウェイを繰り返す。

そう、今の俺のフットワークは蝶野のように舞い、アリのように・・・ガッデム!!アイム()!!!




・・・取り乱しました。つい気分が乗っちゃって。





買ってマイナス。持っててマイナス。売ってもマイナス。
まさに三重苦。。。


不安と安心をつつきながら現実を突きつける事一時間。

深層に眠っていた不安という心理的アンカーを俺に植え込まれた藤森さん。

「やっぱり売った方がいいんですよね」
「売らないとずっと持つしかないんですよね」
「でも、300万か・・・」
「将来の住宅ローンも通りにくくなりますよね・・・」

という感じで感情がブレブレになって迷いに迷っている。
いい感じだ。トークが効いている。
今までの経験から迷いに迷った挙句に導き出す答えならひっくり返る可能性は低い。
ブレブレの感情にいつまでもお付き合いしようじゃないか。

そこから更に一時間。。。

「明日まで悩んでもいいですか?」

うん。上出来だ。

これがワンルームを買わせる営業だったら絶対に帰すわけにはいかない。
購入を迷っているという時点で客をリリースをしてしまって誰かに相談されたり、ネットで正しい情報を見たりして獲物に目を覚まされる事態を避けなければいけない。
そんなことをやらかす営業は先輩ゴリラに脊椎を握りつぶされると聞いたことがある。

だが、何度も言うが今回は売らせる商談。
売主さんをその場でゴリゴリに詰めて説得しても無意味だ。
後日気が変わったり、親族の反対があるというだけで簡単に売るのをやめてしまう。そんなふわふわの媒介をとってもまとまるもんもまとまらない。

しかも今回のケースでは300万円の持ち出しが必要。
親に相談したりして不動産を売ったのに300万円失うなんて話はまず納得しないだろう。



22時を回り、そろそろ帰らないといけないと言うことになりラインを交換して解散。


こっちが解散した後も周りの席では熱心な営業マンたちがあの手この手でトークを繰り広げている。聞いている養分たちにも疲れの色が見えてきている様子だ。

そういえばよくわからない商品を買わせるためには
「お客さんが疲れを見せ始めて正常な判断をできなくさせることが第一歩」って先輩が言っていた気がする。

営業って大変だな。。。

そんな思いを胸に養分商談に背を向けて店を出る。


ピコ~ン♪

お、早速藤森さんからだ。

『本日はお話できてよかったです。金城さんに相談できたおかげで少し光が見えてきた感じがします。こんなに親身になって効いてくれるとは思いませんでした。明日、必ずご連絡差し上げます』


ありがたい。

手応えとしては100%売るだろう。なんて言うか営業の勘というかそれは間違いない。
埋め込んだアンカーが効いて一人で考えても売らざるを得ないという結論に至るだろう。

ただ、最後の後一歩が踏み出せない感じだ。

藤森さんは結論を出すまでにもう少し時間がかかりそうだな。


◆迷いに迷う



翌日の朝、早速藤森さんからライン。

『昨日はありがとうございました。あれからずっと考えていますが300万円という大金を失うのが怖くてまだ結論を出せていません』

ふぅ。やっぱりな。

『藤森さん。大丈夫です。300万円という大金を簡単に失うことができる人は居ません。毎月徐々に増えていく赤字と付き合うか?今一気にケリをつけるか?しっかりとお考えください』
『はい、ありがとうございます。金城さんにしかこんなことを相談できないので』

昼過ぎ
『金城さん。やっぱり売らないとダメですよね?不安が拭えなくて』
『藤森さん。大丈夫です。不安なのは仕方ないです。誰でも失敗を認めるのは辛いですから。また、売らないといけないわけではありません。持ち続ける選択をするのも藤森さんです』

夕方
『金城さん。すみません。少しだけお時間をいただけますか?』
『はい。問題ありません。いつでもご相談に乗ります。』


藤森さんの仕事が終わったらしくラインのやり取りが続いた。

数時間経ち。。。何度も「売ろうかな」「怖いな」を繰り返す藤森さん。

この人は自分で結論を出すことができない人だと確信。
ここで少し突き放す。

『藤森さん。お一人でお悩みでしたら結論が出にくいようですのでご家族にもご相談をしてみてはいかがですか?』
『いえ。これは自分自身が招いたことなので自分で結論を出したいんです』

おぉ〜男らしいとこあるじゃん♪

・・・・て、悩んでいる間にもう深夜なんですけど?
付き合う前のドキドキワクワクしている相手とのラインなら睡眠時間削っていくらでもやるけど、30過ぎのおっさんとこんな時間までラインをするのは流石にしんどい。
あと普段からそんなに携帯を見ない俺がずっとラインをピコピコしていたらウチのカミさんにも変な目で見られかねない。

『藤森さん。結論はすぐに出さなくても大丈夫ですよ。私は藤森さんの考えを尊重しますので』
『はい。ありがとうございます。こんなに遅くまですみません』


・・・こんな感じのラリーが数日続き、ウチのカミさんにもなんだか浮気を疑われ出した頃。。。

『金城さん。決めました。売ってください!この物件を持ち続けて住宅ローンが組めないとかになると奥さんにも顔向けできないし。ネットにも思い切りが大切だって書かれていました』


え?奥さん?実家住まいで独身だと思っていた。
ていうか結婚していたの??
実家に住んでいるからって独身と思うのはこっちの早とちりだったか。

危ない危ない。
貯蓄から300万円マイナスになると言う事実を奥さんに知らせないまま話を進めるのは危険だ。
念の為に聞いておくか。


『ちなみに奥様にも内緒でご購入されたんですか?
今回の売却の件も奥様は了承していますか?』




『え?まだ結婚はしていませんけど』


え?



『え?じゃあ婚約者?』
『いいえ。彼女もいません』





は???

ラインをもう一度見返すと履歴にもしっかりと“奥さんに顔向けできない”と書かれている。。。


迷える森の藤森さん。
迷いすぎて見えない奥さんが出てきちゃったか?
真理アンカーを打ち込みすぎておかしくなったか?www


長くなったので続きは次回。

次回予告
・奥さんの正体とは?
・無事に売れるのか?
・蝶野は関係なかったよね?


次回:我々はカウンセラー#2

では~


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株式会社REGATE 金城貴士
沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!