誰が悪い?全員悪者?#ビヨンド
前回からの続きになります。
まだの方は先にそちらをお読みください。
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◆退去先あるの?
濡れた段ボールからは茶色の汁が滲んで床によくわからない水たまりを形成している。
どうしよう。
これに座ったらズボンもパンツも捨てないといけない。
というかこの汁段ボールはなんだよ・・・
その時脳内に閃光が走る
「あ。私は膝が悪いので座れないんですよ」
よっしゃ!いい言い訳が思いついた!俺天才!
「あ。そうかそうか。じゃあこの椅子に座るといいよ」
水野さんはニコニコしながらゴミの山から引き出ししてきたカビだらけの椅子を用意する。
しかもその座椅子部分にご丁寧に汁段ボールを敷き直す・・・
立ったまま話を進めたいが目線が違うと耳の遠い水野さんとの会話が成り立ちそうにない。。。
俺の天才的な言い訳は一切通用しなかった。
仕方ない。ズボンもパンツも捨てよう。
思い切って汁ダンに座る。
お尻から嫌な湿っぽさが伝わる。
尻の位置を直すとブシュっと液体が飛ぶ。。。。
異臭が一段とキツくなる。。。
下半身から全身に悪寒が走る。。。
なんだよこの汁男は!汚い液体撒き散らしやがって!!!
しばらく意識を遠くに飛ばす。
俺は大丈夫俺は大丈夫俺は大丈夫・・・・
臭くない臭くない汚くない汚くない・・・
よし落ち着いてきた。
もうこうなったら怖いものは何もない。
ニコニコと喋る水野さんの気を悪くしないようにオーナーの大友さんが売却したくて困っている旨を説明する。
立ち退きの費用や引っ越し代もこちらが負担するというと意外なことにすんなりと受け入れてくれそうだ。
「でも私みたいなのは新居に引っ越ししたくても受け入れ先がないでしょう?保証人もいないし」
うん、そこが問題なんだよな。水野さんは自分を客観視できているみたいだ。
(いや、客観視できていたらこんな家にはならんか)
せっかく水野さんが退去に協力的なのにここで水を差したくない。
「お嬢さんを連帯保証人にすれば新居の審査も通りやすくなるはずです。20歳を超えているので働いていますよね?」
「。。。。」
あれ?娘さんの話はタブー?
急に黙り出す水野さん。
「ん〜・・・娘ね。。。連絡取れるかな?」
緊急連絡先にはなっているが水野さんからは連絡を取りにくいらしい。
でもこちらもせっかくつかんだ藁を手放したくない。
「私の方で連絡してもいいですか?」
「う〜ん。まあ、連絡が取れるなら・・・」
水野さんの退去のためには娘さんの協力が必須。
緊急連絡先に書かれている娘さんの電話番号にその場でかけてみる。
トゥルルー・トゥルルー・トゥルルー・・・
出ない。書かれている番号も違うのか?
「その番号で合っているけど娘は今の時間は仕事だと思う」
え?もう夜ですが?
あ。察し。。。
おそらく夜のちょうちょとかだろう。
何となく予想はできていたが。。。
「お嬢さんのお勤め先の『お店』とか『お名前』ってわかります?」
万が一娘さんが“ちょうちょ”じゃない時に失礼にならないように遠回しに聞いてみる。
「あ〜お店は△△(地名)の「アゲハチョウ」だと思う。名前は“今は”わからんな〜」
よしwww通じた♪
今はわからんってことは昔は源氏名も知ってたのか?w
とにかくお店の名前がわかればどうにかなりそうだ。
◆娘との交渉
水野さんはまだまだ話し足りない感じだが退去の意思確認ができたらこんなところから早く脱出だ。
「早くお嬢さんに連絡取りたいので失礼します!」
「あ、そう。もう少し話したかったな。またおいで」
差し入れのビールでほろ酔いの水野さん。悪い人ではないがもうこの空気は無理!
バタン!
1時間ぶりに深呼吸できた。
俺は生きている。
地球のオゾンに感謝♪酸素に感謝♪空気に感謝♪
今目の前でタバコのポイ捨てをする奴がいたら間違いなく怒り狂う。
「俺のオゾン層を壊すな!!!」って。。。
新鮮な空気を吸えて気持ちが弾む♪
颯爽と車に乗り込む。
・・・・??!
乗り込んだとたんに車内は異臭が蔓延。。。
忘れていた。ズボンもパンツも汁男の茶色い液体を吸っていたんだった・・・車のシートにも汁男の汁が滲んでいる・・・
テンションがガタ落ちで近くのドンキで着替えを買うことにする。
店員や他の客がすれ違うたんびに汚物をみる目で俺を見る。。。
そりゃ22時を過ぎてお尻がう○こみたいな色をしたサラリーマンが来たら“酔っ払って漏らした”と思われても仕方ないよな。
くそ。。。俺もくそになっちゃった。。。
新品のズボンとパンツを抱えて近くの24時間稼働の給油所でカークリーニングを頼む。
トイレで履き替えて待機していたが従業員の目線が痛い。
【あ〜。このおっさんう○こ我慢できずに車で漏らしたんだ】
口には出さないがそんな態度が伝わってくる。
そう思われても仕方ない条件がバッチリ揃っているもんな。。。くそ。。。
お漏らししたおじさんというレッテルを剥がせぬまま車のクリーニングの完了を待つ。
クリーニングが間もなく終わりそうな雰囲気になってきた。
時計は深夜の0時過ぎ。。。
突然携帯がなる。
着信の名前は「水野さんの娘」!
おお!まさか今日折り返しが来るとは!
テンションが上がった状態で電話に出る。
「もしも〜し♪アゲハのユカで〜す♪」
あ、俺をどこかの客と勘違いしている?
話に乗るか?会うためにはそれが一番いいのか?
「あ〜今日は出勤ですか?」
「うんそうだよ〜♪今ちょうど空いたところ。ごめんお名前登録していなくてさ〜誰だっけ?今日来てくれるの?」
どうしよう。
客として話すか?
不動産屋として話すか?
一瞬迷ったが『客として嘘をついて近づいても』後でバレた時に娘さんの信用を失う事になる。
そうなれば協力は得られずに全部が水の泡。
正直不動産が俺のモットーだ!
「え。。と、水野さんのお嬢さんですよね?お父さんの件で話をしたいんですけど。不動産屋のものです」
「・・・・・」
ほら、やっぱり沈黙じゃん。。。失敗だったか?
でももう引けない。行くしかない。
「今、お父さんがお住まいの〇〇市の物件の売却をお願いされていて、オーナーさんも困っていてどうにかご協力をお願いできないかな?と思って連絡しました」
「え?あの人また何かやったの?」
また??
「いや!そんなんじゃなくてお引っ越しとかの手続きを手伝って欲しくて・・・」
「あ〜、よかった。また何かやったと思った。私が何かできるんですか?また人に迷惑をかけないか心配で」
水野さん。娘にこんなに心配されるくらいに何度もやらかしているんだ・・・だけどなんか好都合!意外なくらいに協力的♪
「ありがとうございます!“今のところ”ご迷惑にはなっていないのでご協力いただけると助かります!色々と相談したいんですがお店だとアレなのでお休みの日とかに会えませんか?」
「はい、明日は休みなので明日のお昼過ぎなら・・・お店の近くだと誰かに会うかもしれないので私が伺ってもいいですか?」
「はい!ありがとうございます。では弊社の住所を後ほどショートメッセージで送りますね!お仕事中にお電話いただいてありがとうございました!」
まさかのできたお嬢さん。
ひと段落したらお店に行って高めのボトルでも入れてあげようと思う。
たくさんの人たちに「う○こをお漏らしした深夜のおじさん」というレッテルを貼られたことを忘れてしまうくらいに事態は急転回だ。
◆娘の来店
深夜に帰宅して疲れていたが異臭が鼻腔に残っていたせいでよく眠れなかった。
ぼ〜っとする頭を奮い起こし出社。
午前中にやるべき仕事を終えて娘さんの来店を待つ。
ちゃんと来るかな?
あの子も朝まで仕事だったろうし・・・
約束の14時。
カランコロ〜ン♪
ドタキャンやバックれも覚悟していたが時間の5分前に来た。
もうほんとにいい子だ。
ユカちゃん!好きです。ファンになりました。
ボトルを2本追加しようと思います。
こ綺麗な格好で好印象のユカちゃん。
思ったよりも派手なモノも持っていないしますます好きになる。
よしおっちゃんもう一本追加しようかな♪
こちらが名刺を出すと向こうもお店の名刺を出してきたwww
本当にお利口さん♪指名もしてあげよう♪
諸事情を説明したら色々と快諾。
ユカちゃん自身も何かと人に迷惑をかけてきたらしく、警察とかを介入されることが嫌らしい。
家庭環境が荒れると大変だな。
いままで散々お父さんにいろんなことをやられたんだろうな・・・
少し同情しながら話を聞いていたら大事なことを思い出した。
昨日は汁男と異臭の中で考えていたから気がつかなかった。
夜のちょうちょさんだと連帯保証人として成り立つのか?
入居審査とかで引っかかる可能性あるんじゃ?
それとなしに娘さんの現住所と住まいを聞く。
娘さんはお店の店長(社長?)と一緒に住んでいるらしい。
この連帯保証人のこととかも話してみたが意外に物分かりがいい。
「あ〜それなら社長にお願いしてアリバイ会社使えばいいと思う」
なるほど♪その手があったか♪(ダメ絶対www)
※お水系のアリバイ会社についてはご自身でお調べください
「もしダメなら社長の持っている倉庫とかに住ませるし」
なるほど♪それなら安心だ。空いている倉庫ならすぐにお父さん一人くらい突っ込めるしね♪
「倉庫も嫌がるならどこかに捨てようかなw」
倉庫?捨てる?あれ?お父さん想いのいい娘さんはいずこ?
「もうあの人が人に迷惑をかけて誰かの注目浴びるの勘弁なんです。
だから倉庫でもどこでも使って社長にお願いしてみます」
物分かりがよくて話が早いのはいいけど何だか不気味。。。
まあこっちとしては水野さんが出ていってくれたら助かるんだけど・・・
後日、あっさりと水野さんは退去して空室になった。
どこに行ったか引っ越し先は教えてもらえなかった。
娘さん。なにしたの?www
めちゃスピーディーじゃん。
でもありがとう♪
全部終わったらボトル4本入れて指名するね♪
◆手残りの金額が・・・
だが問題人物がいなくなっただけで本当の難所はここから。
室内に残る残地物や腐った建具などを全部撤去しないと売るに売れない。
見積もりを取ると200万円でできるという業者さんが最安。
おいおい・・・ただでさえ100万円を回収するのにキツイ物件なのにさらに200万かよ。。。
だが背に腹は変えられない。
ここまで来たらやるしかない。
オーナーの大友さん諸事情を連絡。
大友さんにプラス200万を立て替えるから撤去費用の合意が欲しい旨を伝える。
あと、リフォームが必要な案件だから売値も下がる事を納得させる。
「え?さらに200万?更に減額?ローンも返したら僕の手元にお金がほとんど残らないじゃない。そんなんだと御社に払う手数料も安くしてもいいの?」
おい。マジかよwwwここまでやって手数料を値切るか?
ただでさえ売買価格も低いので歩合も大して期待できない案件だ。
頭きたぞ!このやろう!バカ野郎!くそ!
「ちょっと待ってください。私は問題がある物件をしっかりと売れる状態に持っていくことが仕事なんです。手数料を払いたくないなら立て替えている100万円を返してもらって手を引きます。今すぐにお金を用意できますか?」
ニコニコといい人を演じているとたまにこういう勘違いをいうお客さんが出てくる。
ガツンと突き放すのも営業マンだ。
「いや、嫌だな〜。そんなつもりで言ったんじゃないよ。私はただ手残りが少なくなるな〜と思っただけだから。冗談冗談。ははは。気を悪くしないでよ」
冗談では通じない。
こっちはう○こまんになって深夜まで動いてるんだ。
ここで値切るようなことを簡単に口走るな!
登場人物が多すぎてまたまた長くなったので続きは次回。
次回予告
問題解決!か?
水野さんの行方は?
娘と社長と弁護士と・・・
の3本です!
乞うご期待♪
では〜
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