不動産とややこしい親子関係#2
◆書類の確認
前回からの続きです。まだの方はこちらを先にお読みください。
・・・見知らぬ番号からの着信
「○○です。売りたいです」
(いやいや、まずは番号変わった事とか連絡付かない事とか謝れよ!w)
とにかく一般的な常識を期待してはいけない人だということは分かった。
こういう人の攻略法は・・・
「連絡を待っていたり、相手に選択肢を与えたらダメ。
全ての事案をこっちが握って強引に進めないと。。。」
「ご連絡ありがとうございます。では○○さん、印鑑と免許証を持って明日の〇時に役所に来てください。戸籍の確認をします。売買をするために必要な書類を集めま」
「分かりました。」ガチャ。ツー・ツー・・・
(また最後まで聞かずに切りやがった・・・)
気持ちを切り替えよう。ぶっきらぼうで変な人でだけどきっといい人だ。
タトゥーだらけでも眉毛がなくてもきっといいひとだ。
俺はお客様を信じる!!
とにかく折り返しを待ったり相手に時間を指定させると何も進まないことだけは確信したし。。。「資料を準備してから来てください」ではまた連絡が取れなくなるだろうしな。
・・・明日来るかな。。。。不安。。。
翌日。市役所のエントランスで待っていると・・・
きた!約束通り来ただけでなんだか感動♪
ただ。。。真っ白な髪の毛になって御来庁。。。
お絵かきだらけの体を見せびらかすようなタンクトップ姿で回りの人からは明らかに距離を置かれている。。。
念のためにと同席させた司法書士も息をのんでいた。。。
住民課の窓口で必要書類を取得するための申請書を取得。
ブツブツ・・・
「こんなに字を書くことは久しぶりだ・・・チ・・・」
「本当にこんな書類必要なのかよ・・・」
ブツブツ物・・・・
「チっ・・・」
戸籍関係の書類の申請書を書きながらずっと愚痴と舌打ちを繰り返す・・・
恐らく私が同席していなかったら途中で申請書を書くことをやめたか、嫌になって役所を後にしたんじゃなかろうか。
相続の時の各種必要書類は多岐にわたり、一般的に本人だけで取得したとしても欠落ばかりでやり直しの連続になる。
そうなると依頼者が嫌気をさしてまた音信不通になりかねない。
ブツブツと舌打ちが止まらない依頼者を引き留めながら、戸籍確認の書類取得費用などの書類はどうにか揃った。前回の反社から書類奪還に比べたら楽勝♪
今回は不動産の神様もだいぶ手を抜いているようだ。。。
司法書士にも確認したところ本人の証言通り相続人は妹と依頼者の二人だけらしい。
不在者や行方不明者、本人達が知らない血縁者が出てこないだけでも良しとしよう。
◆妹との連絡
思ったよりもスムーズ。
なんだか想定していたよりも障害が少ない。
なんだか逆に不気味だ・・・神様大丈夫か?何を狙っているの?
それとも障害が無いとダメな体質になってしまったのか?俺は??
へんな性癖の開眼を覚悟しながらも、とにもかくにも次のステップ。
売りたいという意思表示から1か月が経ってしまった。
引っ越しの期日までは残り2か月。
(時間の余裕はほぼなくなったじゃんばか!)
ここでもう音信不通にならないように念を押しておく。
・番号が変わったら必ず知らせる事。
・今後は連絡がつかなくなった時点でこちらは手を引く。
・売りたいのであればちゃんとこちらに動きを知らせること。
もちろん他社に行かれないように相続関係の書類は全てこっちで預かった。
※ていうか他社さんに行ってもここまで手取り足とりやってくれるのかな?普通なら手を焼いて引くところだと思うが・・・これが普通なのかどうかわからなくなってきたw
さて、売るためには相続人の同意と相続分の協議が必須。
そこで妹さんに連絡を付けないといけないが、依頼者は電話番号も住所も知らないとのこと。。。
こっちも司法書士にお願いをして戸籍から住所を探ってもらったが、現住所がなぜか確認できないらしい。
(ていうか連絡取れないのに”妹は資産を要らないって言ってます”ってどうやって確認したんだよ!)
一気に暗雲。。。いや、ぞくぞくしてきた。
唯一、依頼者が連絡を取れるという親戚を伝って、離婚して出ていったお母さんが務める職場を突き止めることに成功。
どうやら神様はここから本気をだすっぽいな。
受けて立つ!やってやるぜ!バッチこい!
◆母との面談
親戚に聞くとお母さんはショッピングモールで販売員をしているとのこと。
連絡先は教えてもらえなかったので直訪するしか手段はない。
見ず知らずの不動産屋と変わり果てた真っ白な髪と模様だらけのエンジェル伝説の北野君になった甥っ子に姉妹の職場を教えてくれるだけありがたいと思う。
#エンジェル伝説北野くんで検索してください
お母さんの名前と職場しか知らないので会えるのか?
職場の誰かに聞いて教えてもらえるのか?
本当にその職場に勤めているのか?
いくつもの不確定要素を抱えながらの捜索。。。。
だんだん神様の本気が怖くなってきた・・・いや楽しくなってきた。
依頼者と行動を共にすれば時間を食って仕方がない。
妹さんの意向を確認するだけだから一人で動いたほうがいい。
というよりもあまり依頼者と一緒に歩いているのを人に見られたくないw
あと、この時点で依頼者の発言はほぼ信用しないと決め込んだ。
一緒に行動をすることで要らない失敗を引き寄せる気もする。という理由で依頼者とはしばしお別れする事に。。。
電話を変えたら連絡する事と、こっちの着信があれば折り返すことを約束した。。。(多分無駄な約束だと思うけど・・・)
後日母親に会えるかどうかわからないがショッピングモールへ。
だんだんとスムーズにいかない予感がしてきた。。。
その不安をよそに売り場でお母さんの名前を聞くとあっさりと対面ができた。
どうやら私は運がいいらしいw
神様も今回はだいぶ手を抜いてくれるもんだ。
(順調順調♪)
母親は最初は訝しげな顔をしていたが簡潔に事情を説明
・お父さんが亡くなったので家を売却したいという事。
・妹さんに相続持ち分があるので話をしたいという事。
事情を知ると休憩時間にショッピングモールのフードコートで会ってくれるということに。
この時にお母さんから聞いた話では、依頼者が妹さんとお母さんに暴力を振るっていたので逃げるように出ていったとのこと。
家を出てからは連絡を取らないようにしたという事。
妹も依頼者に住所を知られたくないということで住所の公開を制限しているらしい。(だから司法書士が探れなかったんだね)
依頼者が言うにはお母さんが男を作って勝手に出ていったとのことだが、双方の言い分の違いなんてこの仕事をしていたらいくらでも出くわすし、いちいち鵜呑みにしていたら何もできない。
その都度相手方を信じてしまうと落とし穴が待っているので、初心者の頃に「お客さんのいう事は半分は嘘だ」という事を先輩方から教わる。
先輩。俺立派にやっているかな・・・空から見ててくれよ。(死んでない)
妹さん本人の意思を確認するために取り次いでほしいとお願いをすると、お母さんが妹さんに電話をしてその場で説明する事に。
売却の意思と相続の放棄について一通り説明をしましたが
「私、放棄するって一言も言っていません。あんな兄にお金が行くのは許せない」
「しっかりと法定相続分の分け前を貰う」
というご回答。。。
ま、持ち分の放棄をしないという妹さんの意見は想定内。
依頼者の言う事を当初から鵜呑みにしていたわけではないから
「やっぱりね」という感じ。
(にしてもあの野郎嘘ばっかりつきやがって!)
妹さんは今後もお兄さんに会う気はないとのこと。
なのでいろいろな手続きには協力するが、売買の際もお兄さんに現住所を知られないようにしてほしいという要望。
なんでも妹さんが言うには依頼者の暴力が激しくなり、逃げ出すように家を飛び出したが引っ越し先まで押しかけてきて暴れられたとのこと。
当時の役所では家族であることを証明すれば住所などを聞き出すことが簡単だったらしい。いまではストーカー規制法とかDV保護法とかで家族でも簡単に情報開示できないようになっているみたい。
このケースの時は依頼者が「病気の父親が会いたいと言っている」とか言って聞き出したとのこと、、、そこまでして暴れたかったのかね・・・
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この住所を知られないように売買契約を進めるのは一点だけ注意点があります。
契約書の署名押印や印鑑証明書などは別々に司法書士に渡すという事でどうにか配慮できます。
でも、買主に所有権移転をするためにはまずお父さんからお二人への相続登記がされます。
その時に二人の相続持ち分で名前と住所が記載され、買主へと移転されるという事になります。
つまり、依頼者がこの”所有権移転後の謄本を取得”したら移転時の住所がバレてしまいます。
旦那の暴力から逃げていて、行方を知られたくない奥さんが不動産を売却する時なんかも当てはまりますね。
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登記簿の取得を禁止することはできないし。。。
さてどうしたものか・・・
依頼者が所有権移転後に謄本を取得する可能性は低いけど絶対に安心とは言い切れない。。。
次から次へと付加条件が出てくる案件。。。
ぞくぞくを通り越して寒気がしてきた・・・
司法書士と相談して出した結論としては妹さんには所有権の移転後に引っ越しをしてもらう事。
その際に虐待があったので家族であっても役所の職員が第三者に住所などを教えることをしないでくれと申し出る事。
これをやると住民票や戸籍謄本のデータを出す時にアラートが鳴り職員が気付けるという仕組みがあるらしいです。
これが最善かどうか判断しかねるが、
この時点ではまだ妹さんからの媒介も取っていないし遺産分割の協議書も作成できていない。
時間だけが過ぎていく。。。
今回はここまで!次回をお楽しみに~♪
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