漫画村から学ぶこと
知らない人はもうあんまりいないと思いますが、
「漫画村」というのは、
ネット上に違法にアップロードされた漫画を
集めたサイトです。
でも、このサイト自体がアップロードしているわけではなく、
あくまで誰かがアップしている画像を集めているだけなので
違法性は無い(法律の穴をかいくぐってる)というのがこのサイトの主張です。
昔から、アニメとかドラマをまとめた
「youtubeアニメまとめ」
「youtubeドラマまとめ」
みたいなサイトが沢山ありますが、あれと同じ感じですね。
確かに、ジャンプやマガジンといった週刊誌も、最新の漫画とかも
全部そのサイトで読めてしまうので、
露骨に漫画の売り上げを下げてるのは間違いないと思います。
で、ちょくちょく色んな漫画家さんとかが批判したりしていて、
さらにはNHKニュースでも取り上げて注意喚起されていたのですが、
「皆、余計に事態を悪化させてるだけだよなぁ」
という話を勉強会でしていました。
どういうことかというと、NHKニュースとか、漫画家が批判してる内容を見ると、
こんなことを言っているわけです。
「今、若者の間で大流行してて困ってます。
違法性はないから、次々とサイトを利用する人が増えています。
しかし、そのせいで漫画家が困ってるので
1人1人が利用しないように、注意しましょう。」
分かりやすくいうとこんな感じ。
ビジネスを少しちょっと勉強してたら最も愚かなことをやっちゃってたわけです。
勉強会でも話しましたが、コンビニのトイレで
「最近、トイレを汚く使っている人が増えて困っています。」
って言ったらさらに汚くなるのと同じ原理ですね。
いや、むしろ、
「このコンビニでは、トイレは毎回綺麗に清掃しているので、
汚く使ったからといってそれに関して特に何の責任も生じませんが、
そのせいで汚く使っている人がどんどん増え続けていて困ってます。」
って書いてるのと同じくらい逆効果な気がします。
しかも、漫画の場合って、
読んだからって何か形あるものを取るわけではない(つまり向こうに損はさせない)ので
罪悪感を感じないんですよね。
立ち読みするのと同じ感覚なのです。
「どうせコンビニや図書館で無料で読めるんだから
サイトで読んだって変わらないだろう。」
という理由づけが容易にできてしまうのです。
それも踏まえて、色んな漫画家が「そういうサイト使わないで!」と必死に警告して
広告を一切打たずにどんどん利用者が増えて、
自分は広告費で稼いでしまうという
なんとも恐ろしいスパイラルに陥ってしまっているわけなのですが。
・・・と、ここまではだいぶ前に話したことで、
ここから進展です。
どうなってしまうのかなぁとウォッチしてたんですが、最近、
「漫画家が無料で宣伝してくれたおかげで利用者が増えた!」
とサイト上で煽って、さらに、
「漫画村プロ(有料版)を4月から始める」
と言い始めたそうです。
これは、ある意味、漫画家にとっては朗報なのかもしれません。
ずっと無料でされていたら、グレーなまま永遠と手を出せずにいたところを、
自分から一線を超えちゃって堂々と課金しだしたおかげで、
明確に「悪」とラベルを貼って摘発する大義名分ができたので
それがきっかけで色んなサイトが一斉に摘発される日も近いんじゃないかなと思います。
なので、まぁだいぶ寿命は近いんだろうなとは思いますが、
僕は別に、サイトを利用しないよう注意喚起をしたいワケではなく(そんなことしても無意味と分かってるので)、
言いたいのは、このサイトの出現が何を意味するか、という部分です。
ある意味、時代を象徴しているなぁと思うワケです。
どの業界もそうなんですが、コンテンツビジネスというのは、
「リアル」と「バーチャル世界」
のバランスによって成り立っています。
一番分かりやすいのが予備校です。
昔は、リアルでの授業に価値がありました。
しかし、だんだん、
東進ハイスクールや代々木ゼミナールなどが
「サテライト授業」
というものをはじめて、バーチャル世界で課金するようになりました。
当時は、実際に塾に行かないと見れなかったのですが、
だんだん、自宅で授業が受けれるようになりました。
バーチャル世界に行くのが容易になっていったのです。
そして今度は、そのコンテンツが無料化していったのです。
Youtubeで、クオリティの高い授業が次々と無料でアップされるようになり、
今や、一切お金を払わずに、無料で授業を受けれるようになったのです。
コンテンツ自体で課金するのではなく、
無料で良質なコンテンツを出すことで「数」を集めることで、
広告費などの違った形で課金をすることを考え始めたのです。
これによって、いつでもハイクオリティの授業が無料で見れるようになりました。
するとどうなるかというと、二極化が起こります。
無料コンテンツを使って、きちんと勉強できる人と、
授業だけ受けて勉強した気になって全然成績が伸びない人です。
露骨に差が出るでしょう。
後者は、
「勉強の仕方自体をそもそも変えないといけない」
ということに気づいて、
結局どこかの塾に行くことになります。
まとめると、
バーチャル世界でコンテンツが飽和し、無料化して、二極化して、
結果、現実世界のコンテンツの価値がより上がる、という流れです。
この流れは、色んな業界で起こっていて、
例えばビジネス業界でもしかりでしょう。
昔は、PDFで5万円、とかで商品が売れていたのですが
今はもうそういうのはなかなか売れません。
「買った人に見せてもらったらいいや」
とか思う人すらいるでしょう。
だから、そうではない価値の提供の仕方を考える必要があるのですが(それに関しては後述)、
その前に、「漫画」という業界に関していうと、今のままのスタイルだと問題があります。
漫画の場合、コンテンツが無料で見れたら、
それ以上を求められることが(現状)存在しないのです。
だから、漫画村みたいなサイトが出てきたら
もう仕組みが破綻してしまうワケです。
(このサイトが潰れても、またイタチごっこになるかもしれません。)
だからそもそも、今の仕組みは大きく変えるべき時なんじゃないかなと思うのです。
だって、例えば、
「ジャンプで面白い漫画が連載スタートした!」
と話題になったとします。
話題になってる頃には、すでにそのジャンプの発売は終了しててコンビニにも置いてません。
じゃあ、その漫画を読もうと思ったら、
新刊が出るのを待つしかありません。
でも、わざわざ数ヶ月待ってたら忘れるので、
結局ネットで探して、無料で見れてしまう!ということが分かるのです。
人々のコンテンツ消費に関して、昔と今との大きな違いは、
「コンテンツ量が圧倒的に増えた」
ということ。
「消費すべき対象を自分で選べなくなった」
ことによって、どうなるか?というと、
「積極的な情報コンテンツ消費」から
「受動的な情報コンテンツ消費」に変わっていきます。
例えば、テレビとかで、昔は、宣伝とかを見て、
「おぉ!これ面白そう!!」
と思ってずっと楽しみにして、録画して、見る、
という流れでしたが、今は、そうではありません。
どちらかというと、
「話題になったら(皆が面白いと言いだしたら)自分も見よう」
と思うようになっているのです。
だから、コンテンツが提供されてすぐに見るのではなく、
「口コミが起こったら自分も見る」
というスタイルに変わってきているのです。
そして、口コミが起こる頃には、もうリアルでは見れなくなり、
バーチャル世界で違法アップロードされたものを見るしかないのです。
一応、フジテレビオンデマンドなど、
各テレビ局が有料サービスをやってはいますが、
300円とか払ってすぐに見れるとかだったらいいんですけど
月額会員に申し込んだりとか、かなり面倒臭い手続きを踏まないといけず
「面倒臭いから無料動画探そう」
ってなる人が多いんじゃないかと思います。
最も時代の流れに合った仕組みとは、
「面白いコンテンツを発信したら、口コミが起こって一気に人が増え、
コンテンツ作成者への信頼(=この人は面白いコンテンツを提供しているという信頼)が増し、
それによって売り上げも上がっていく」
という仕組みです。
でも、テレビの場合、いくら良い番組を作ったとしても、
それが「テレビ局」に対する信頼が増すことにあまり繋がりません。
こんな良い番組あるなら、フジテレビをもっと見よう!
とかなる人はほとんどいないのです。
逆に、見逃したドラマや映画が後から見れる、
HuluとかNetFlixとかは、時代に合ってるなと思います。
いずれは、テレビ上で、映画もゲームもDLできて
TSUTAYAが無くなる(あるいは形が変わる)時代が来るのでしょうし、
個人的には、見逃したテレビを、テレビ上でボタンを押したらテレビ欄がでて、
200円くらい払ったら後からでも見れる、みたいにしてくれないかなぁと思ってます。
そして、ネットで話題になっているものは、
テレビ欄上でマークが出たりして、みたいな。
そういうのだともっと「気軽に払う」のになぁと思います。
そして、漫画業界も、いずれスタイルを変える必要性があるように感じます。
まぁ「出版社」ということを考えた時に
あまりにデジタルに移行しすぎるとそれはそれで問題なのかもしれませんが・・
今は、例えばジャンプで言えば、
ジャンプ+っていうWEB版が出てて、
そこで過去作品とかが読めたりもするみたいですが、
「それだったら漫画村で全部読めるし・・」となってしまいます。
もともと漫画のネタバレは昔からネット上に上がってましたが、
それはアングラで一部の人だけが見てたのと
探すのが面倒くさいから結局買う人が多かったから良かったものの
ここまで整理整頓されて、いつでも手軽に読める環境が整ってしまうと、
それに慣れてしまい、
「お金を払うのはいいけど、いちいち手間がかかるのが面倒臭い」
となります。
漫画村が無くなっても、常に新しいサイトが出てきてイタチごっこになる可能性もあるし、
もうこのままじゃ難しいと思うのです。
つまり、皆、漫画家を応援したいという気持ちはある筈だけど、
「わざわざ課金したくなるものが存在しない」
というのが大きな問題です。
僕が、漫画業界でやったらいいのになぁと思っているのは、
「ファン向けの公式コミュニティ」
です。
いっそ公式のコミュニティを作って、
そこでネットで漫画も読めるし、それだけじゃなく、
もっとその漫画の世界観をより楽しめるようなものを作ったらどうかな、
と思うのです。
ジャンプで言ったら、
ドラゴンボールとかワンピースとかハンターハンターとか、
大御所の人にも協力してもらいます。
例えばですけど、
HUNTER×HUNTERって、最近話が複雑すぎて
理解できない人って多いと思うんですよね。
なので、そういうのを分かりやすく解説したりとか(動画を入れたりとか)、
後、作者にインタビューして裏設定とかを紹介したり、
スピンオフ的な短編作品を載せたりとか。
(それも、作者が負担にならないよう、きちんと描くのではなく、
さらさらっと下書き感覚で描く漫画にする。)
他にも色んな漫画の作品の情報が載ってて、
連載終了した作品の「その後」が短編でたまに載っていたり、
コミュニティの皆から要望を取り入れてどんどん新しい企画をやっていったり。
・・・みたいな感じのを作って、もちろん本編も読めて、
そういう感じのコミュニティを作った上で、こう打ち出します。
「今、海賊版サイトのせいで漫画の売り上げが落ちてしまっているから、
これに参加して、皆で一緒に漫画家たちを応援しよう!」
・・と。
こう打ち出したら、
「それなら課金して、こっちで読もう」
ってなる人は結構いるんじゃないかな?と思います。
(また、その大義名分を掲げることで、
快く協力してくれる漫画家の人も多いんじゃないかな?とも思います。
特に、連載終了して、余裕がある人とか。)
今みたいに、
「違法じゃないし、皆使ってるんだけど、見ないでね!!」
と言うだけで、全く代替案が提示されない(むしろわざわざ買いに行くという余計な労力が強いられる)状態では、
注意喚起すればするほど逆に宣伝になってしまいます。
皆、応援したいとは思っている筈だし、
せっかく、グレー状態で手出しできなかったのに、
自分から一線を超えて悪どく課金してきているという、
「誰が見ても明確な『悪役』」
が作られたこの状況はラッキーで、
これをうまく利用してはどうかな、
と思うわけです。
・・とまぁ別に僕はコンサルしてるわけじゃないんで
あくまで勝手に言ってるだけなんですが、
話を戻しますと、この一連の出来事から、
「ただコンテンツを消費するだけのビジネスの終焉」
を僕は感じます。
もうそういう時代ではなくなっていて、
「この人をもっと応援しよう!!」
という気持ちでコミュニティに入ってもらって、
「参加していること」自体に意味があり、
「コミュニティに所属していること」に対してお金が発生する、
という状態を作ることが必要なのでしょうね。
完成された物語を提供するのではなく、
物語を作るプロセスを一緒に共有して、
できたら物語の登場人物になってもらうのです。
そういうビジネスモデルを
今後も解説していこうと思っています。
(自分自身も体現するつもりです。)
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