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松本人志さんの名誉棄損の訴えに関する解説

松本人志さんが文春を訴えた名誉棄損の要件は以下の通りです。

(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

ポイントは、「事実の有無にかかわらず」という所で、仮に事実であっても公表することによって名誉が傷つけられた場合、名誉棄損は成立します。

例えば、芸能人が不倫をしていて、週刊誌がその不倫を報じた場合、不倫が事実であったとしても、訴えられた場合は名誉棄損が成立します。

なぜ、週刊誌が名誉棄損に該当するにもかかわらず、不倫を報じているかというと名誉棄損の場合、罰金が数十万円程度の為、週刊誌の売り上げを考えた場合、罰金よりも売り上げの方が大きいためだと考えられます。

松本人志さんの名誉棄損成立に関する争点

松本人志さんの話に戻すると、松本さんの性加害疑惑は、仮に性加害が事実であったとしても、芸能人の不倫と同様に名誉棄損が成立します。

但し、名誉棄損は以下の要件が成立した場合は該当しません。

・公共の利害に関する事項であること
・専ら公益を図る目的であったこと
・真実であるとの証明があったこと

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

つまり、松本さん性加害疑惑を報じることが、公共の利害があり、そして性加害が真実であれば、名誉棄損は成立しません。

松本さんの性加害疑惑が不倫とは異なり、なぜ公共の利害があるのかというと、性加害疑惑が「強制性交等罪」もしくは「不同意性交等罪」といった犯罪行為に該当する可能性があるからです。

「公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実」は公共の利害に関する事実とみなされます。

その為、性加害疑惑は公共の利害に関する事項となり、そして性加害疑惑が真実であれば、松本人志さんに対する名誉棄損は成立しません。

文春側はこの点について、相当の自信と確証を持っていたと思われます。

松本人志さんは事実無根を証明する機会を自ら手放した

性加害疑惑が事実無根なのであれば裁判を続けるべきでしたが、松本人志さんは、今回文春に対する訴えを取り下げました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241108/k10014632791000.html

取り下げについては様々な理由があると思いますが裁判を続けた結果、仮に名誉棄損が成立しなかった場合は、性加害疑惑の事実認定がされる可能性が考えられます。

その為、裁判を続けることのリスクが大きかったのかもしれません。

但し、訴えを取り下げた結果、当初松本さんが仰っていた「事実無根」を証明する機会を、自ら手放してしまいました。

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