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【怖い話】幽霊の巣窟みたいな場所に住んでいた知人の話①【実話】

前回私自身の体験談を投稿しましたが、今回のお話のメインは職場で出会った知人です。知人以上には仲の良かった彼女をただ知人と呼ぶのもなんですので、ここではHさんとします。

Hさんは幽霊が出ると噂されていたらしい某県のアパートに住んでおりまして、プライベートでオンライン通話をしている時にも

「あっ、また倒れた」

とひとりでに倒れるペットボトルを何度も立て直していたり、通話中にチャイムが聞こえたのでそう伝えると

「んー多分誰もいないと思うけど一応見てくるわ」

と言い残して席を立ち、戻ってきたと思えば「案の定誰もいなかったよ」と笑いながら報告してきたり。そういったこともあって、彼女がどのような場所に住んでいるのは私も知っていました。

(画面越しの霊現象もなかなかでしたが、ものともせず豪快に笑っているHさんも少し怖かったのは秘密です)

そんな肝が太くて明るい性格のHさんと、仕事のお昼休憩時間、いつものように一緒にご飯を食べていた時のことです。真夏の暑い日でしたので、こうも暑いと気が滅入るだの、涼しさが恋しいだのと話しながら蕎麦を啜っていました。

「涼しくなる話あるけど、聞く?」

お冷やを一口飲んで机にコップを置いた彼女はそう話を切り出しました。

「…もしかして怖い話?」

蕎麦をごくりと胃に送り、聞き返します。
私はその類いの話題は嫌いではなかったので、にやりと少し口角を上げて一度箸を置き、姿勢を正します。

「そうそう。なーさんは怖い系大丈夫だし、この間旦那と2人で体験した話でもさせてもらおうと思って」

そうしてHさんは、「久しぶりに怖かったかも」という体験を訥々と話し始めたのです。

✿✿✿

私、旦那と2人で暮らしてるのは知ってるよね。そうそう、アパートの4階。窓開けたらちょっと離れたところに墓場があって、近くに川が流れてるの。

川の流れが結構急でさ、子供が流されることも多かったみたいで。お墓もあるわけだし、あのあたりって霊のバーゲンセール的な?めっちゃ"いる"って話なんだよね。

…あ〜違う違う、分かってるかもしれないけど、実は私そういうの全然信じてないの!だから幽霊だのなんだの言われても、そういう噂を聞いても、「まあ実害があるわけじゃないしな」ってかれこれ5年?6年?住んでるわけで。

んでここからが本題。先週の夜のことなんだけどね。

私ってほら、結構イタズラしたり驚かせたりするの好きじゃん? だから旦那が家に帰ってくる時は家の何処かに隠れて、近くまで旦那が来た気配があったら、ばぁ!って飛び出してびっくりさせるのよ。

…仲いいねって?そうかもね笑。
で、毎日そんなことばっかりしてるからさ、旦那の方も途中から私を探すことが目的になって、帰宅早々にタンスの中とか机の下とか確認するようになったわけよ。

タンスと言っても、うちにあるのは昭和ながらの木造で、おっきな扉を開くタイプなんだけどさ。扉を開けたスペースに、私くらいなら余裕で入れるわけ。私のお気に入りの隠れ場所でもあったの。

まあそんなこんなで私の家にはいくつかの隠れ場所があって、かくれんぼドッキリの日課があったわけだけど。

その日の夜、私かなり疲れてて、旦那の帰ってくる時間に寝ちゃってたのよ。寝室で死んだみたいに寝てたら、ドアが開く音と、「ただいまー」って声がして目を覚ましたの。

あーもう旦那が帰る時間かぁ。ってそこで気付いて。リビングまで迎えに行こうと一瞬思ったんだけど、いつものかくれんぼの延長で寝室まで探しに来てくれるだろうと思って、そのまま待ってたわけ。

予想通り、「Hちゃんはここかな〜?」って、椅子を退かすような音や扉を開ける音がする。いつ気づくかなって、ちょっとニヤニヤしながら待ってたら、

「おっ、今日はここにいたのか」

って、例のタンスが置いてある部屋から声がした。えっ、て思って、私そのまま耳をそばたてたのよ。

「おい、帰ってきたよ」
「あれ、聞こえてる?」
「出てきなよ」
「え?うん」
「いいよ?」
「だから良いってば」

何やら旦那が話しかけている。
流石に不審に思って、寝室をそっと抜け出してタンスのある部屋へ向かったのね。

開きっぱなしのドアの隙間を広げて中を覗き込むと、タンスの扉を開けたまま、呆然と立ち尽くす旦那の姿がそこにあった。

「…なにしてるの?」

声をかけると驚いたように振り返る。

「あれっ、え!?どういう、えっ」

タンスに目を戻した旦那が、またもやフリーズ。
困惑したような視線が私とタンスの間を行ったり来たりして、あからさまにうろたえる。

普通じゃない様子に何があったのか旦那に事情を聞いたところ、どういうわけか、さっきまで”私”がタンスの中にいたんだって。

「いつも通りHちゃん探してたらこのタンスから人がいるような気配がしてさ、扉を開けたらHちゃんがいたんだよ。
体育座りをして顔を伏せてたから、隠れてる間に寝ちゃったのかなと思って声かけたんだよね。
おい、帰ってきたよって。」

「…うん、それで?」

「でも呼びかけても反応ないから、聞こえてる?って声かけたんだよ。もう見つけたんだし、早くそこから出てきなよって」

「うん」

「そしたらHちゃんみたいな姿のそいつ、Hちゃんの声で
   "ほんとに 出ていいの?"
って聞いてきたからさ、良いに決まってるよと思いながら、うんって返したんだ」

「…」

「でも何回も同じこと聞いてくるわけ。
ほんとに?ほんとうにここから出ていいの?出ていいの?出ていいの?って、何度も何度も。
どうしたんだろうと思ったけど、駄目って言う理由もないし、いいよって言ったんだ」

「…それで、どうなったの?」

旦那は口ごもって、視線をそらした。
眉を寄せて重たそうに呟く。

「そしたら、そいつ顔を上げて
  "…やったぁ…"
って言って笑ったんだ。初めてそこで顔を見たんだけど、全然知らない女の人だった。」

✿✿✿

「そこで旦那はびっくりして固まっちゃってそいつから目を離せないでいたみたいなんだけど、私が声かけたら金縛りが解けたみたいに動けるようになって、私の方を振り返って、またタンスを見たら、もぬけの殻だったんだってさ」

やれやれ、といった様子で食事を再開させるHさん。
とてもじゃないが、私は先ほどまでのように蕎麦を啜る気にはなれなかった。

「それって結構、まずいように聞こえるけど…」

なにせ"出てもいいのか"どうか、人間の許可を求めていたくらいだ。どうせろくなものじゃないだろう。

「まぁ確かに、何かしら解き放っちゃったかもね〜」

ちゅるる、と小気味いい音を立ててHさんの口に吸い込まれていく蕎麦を眺めながら、その時のHさん夫婦の状況を想像して私は身震いした。



…というのが今回の怖いお話。
Hさんは昔から霊のような存在を引き寄せやすい体質であるらしく、慣れもあってか大抵の物事には怖がらない。

日常生活からイベントに至るまで彼女のエピソードには怖い話が絡んでいるため、また別の話も投稿できたらと思います。
次の記事も読んでくれると嬉しいです。


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なーさん(24♀)体験談投稿
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