
クリスマス・ソング - Wunderland '24
ロスの「Winter 」
子供の頃は、ロサンゼルスの郊外街で過ごしていましたが、ほとんど雪に触れるようなことはなかったです。唯一クリスマスっぽかったのは、クリスマスキャロルかな、と今更ながら気づきました。何がクリスマスっぽかったのかと言うと、遠隔と言いますかヴァーチャルな形でしかクリスマスの雰囲気が伝わらなかったことだったのかもしれません。キャロル自体、合唱団や自分たちで歌うのではなく、ショッピングモールの店頭やカーラジオのスピーカーから流れているせいか、自分の中でクリスマスのイメージが膨らんでいくような感じ、それがクリスマス・フィーリングと密接していたような気がします。
クリスマス・ソングの好き嫌い
食べ物と同じで好き嫌いが激しくなる季節なのか、クリスマス・ソングって好みが分かれるのではないでしょうか。私の場合、(特にBing Crosbyの)White Christmas Nightが好きになりませんでした。気取っていて辛気臭い。クリスマスはやっぱりノリノリでないと、という軽薄な気持ちでビートの効いた歌が好きでした。カーペンターズの「Let It Snow, Let It Snow」のような曲がピッタリ。カーペンターズ一家も(私たちより一世代前ですが)ロスに移住したという点において(だけ)共通していましたが、一粒の雪も降らない街で「雪よ、降ってこい!」と訴える理不尽なセンスにもどこか共感したのでしょう。クリスマスの設定、例えばサンタクロースが来ること自体がナンセンスなので、ロサンゼルスがクリスマスのポップセンスの発祥地となる方が、今や(不?)自然の成り行きだと言えるのではないでしょうか。
数年後、家族はニューヨークに移理、嫌というほど雪が積もるクリスマスを過ごすようになりましたが、ロスで培われたヴァーチャルなクリスマスの洗礼を受けたせいか、実際の雪はちょっと期待外れでした。まあ、その頃には10代のティーンエージャーに向かっていたのでクリスマスに白けない方がアブナイと思いますが、ニューヨークや東海岸って、ちょっとリアルなんですね。クリスマスの世界観を醸し出すには、むしろ全く雪が降らず、雨すらどうなの?と思わせるシュールなロスの方が向いていたのかもしれません。
雪にしろ、サンタさんの来訪にしても、どこかワクワクさせるところがクリスマス。今から思うと、サンタも雪など降ってくるはずもない無機質な環境だったからこそ、非現実的な期待感に気持ちよく浸ることができていたのかもしれません。元々根拠がないからこそ妙に懐かしくなるものかもしれませんね。今回のWunderland '24(Winter Wonderlandのカバー)は、そんな懐かしさに沿って録音しました。