易経と古代中国史 1 天地開闢
易経の理解に役立つ古代中国史のトピックをご紹介します。
歴史は神話から始まります。
本日は、中国神話での世界の始まり、天地開闢[かいびゃく]のお話をご紹介します。
■天地開闢
はじめ天地は一つに混じり合っていて卵のようでありました。
宇宙は暗黒で混沌としており、その中に盤古[ばんこ]という神様がいました。
盤古は、この大きな卵の中でぐっすりと眠りながら1万5千年ほど過ごします。
ある日、突然、盤古は目を覚まします。
目を開いても何も見えません。
ネバついた真っ黒なものが目の中には入り込んできて、かなり憂鬱な気分となります。
怒りを感じ、どこからともなく取り出した大きな手斧を、目の前の暗黒な混沌に向かって、「わーっ!」と力いっぱい振り下ろします。
山が崩れ地面が裂ける音がしました。
ガラガラと音が響き、大きな卵が割れました。
天地が分かれ始めます。
卵の中にあった軽くて透き通ったものがゆっくりと登って天となり、重くて濁ったものがゆっくりと沈んで地となりました。
盤古は、この天と地が再びくっつかないように、
頭で天を支え、足で地を踏んで天地の間に立ちはだかり、「う―むっ」と天地を支えます。
天地はグラグラともとに戻ろうとしますが、盤古は、一日に九回も変身を繰り返しながら支え続けます。
その結果、天は高く登っていき、地は深く沈んでいきます。
天は一日に一尺(23cmくらい)高く、地は一日に一尺深く沈んでいきました。
盤古の身長も1日に一尺伸びつづけます。
そうして、1万8千年が経ちました。
天地の間は九万里にも達し、天は非常に高く、地は非常に深くなり、盤古の身長も大変高くなりました。
こうして、天と地が定まりました。
これが中国神話での世界の始まり、天地開闢の経緯となります。
神様の名前をとって、盤古開天とも呼ばれています。
易では、混沌から天地が定まる様子を
繋辞上伝で、次のように表現しています(本田濟「易」521頁)
「天は尊く地は卑くして、乾坤定まる。卑高以て陳[つら]なりて、貴賤位す。動靜常有りて、剛柔斷[さだ]まる。」
天は高くして上に在り、地は低くして下にあった。これにより純陽である乾の卦と純陰である坤の卦が定まった。低いところから高いところに列なりができ、貴さと賤しさという位が出来上がった。混沌としたルールのない世界に、常に動く陽なるものと、常に静の性質を持つ陰なるものという理が定まり、剛の性格を持つ陽なるものと、柔の性格を持つ陰のものが、互いに混じり合うことなく間然と判れた。こうして混沌な世界が、天と地、陰と陽に定まった。
天地の定まりとともに、およそ世の中の陰なるものと陽なるものが間然と判かれ定まった経緯として説明します。
易を学ぶわたしたちは、陰陽の原理をベースに世の中を見ます。
天地開闢とは、この原理のはじまりをも含むものなのだと、繋辞上伝では表現しているのです。
次回、この天地からの万物の誕生、人類の誕生の経緯についてのお話しをします。
<参考文献>
「中国の神話」白川静
「中国の神話伝説 上」袁珂 / 鈴木博(訳)
「古代中国」貝塚茂樹、伊藤道治
↓ 天地開闢(盤古開天)に関する動画です。中国語ですが、雰囲気はわかります。ゲームのCMが入るのはお愛嬌で。動画では、盤古開天の後の万物の誕生のシーンもあります。