エッセイ|#2 自分が”スタメン”に入れなかった飲み会には行かない
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ある週末の昼下がり、高校時代からの友人を飲みに誘ってみることにした。
何回か向こうから誘ってもらってはいたのだが、予定が合わずにしばらく会えていなかった友人だ。
「空いてたら久々に飲み行かない?」最近買ったスタンプを添えて送ったLINEはすぐに既読になり、間もなく返事がきた。
「別の友達と飲む予定なんだけど、お前も来なよ」というものだった。
この「別の友達」とは、ある程度面識はあって高校時代には何回か遊んだこともあるけど卒業後は疎遠気味になっている、くらいの関係性の人たちだ。
ちなみに、僕が連絡を取った友人と彼らは、SNSを見る限り卒業後も頻繁に会っているようだった。
あぁ、このパターンか‥。僕は、自分が”スタメン”に入れなかった飲み会への途中出場は必ず避ける、というのを昔からポリシーとしている。
僕の性格上、楽しさよりも気疲れが絶対に上回ってしまうからだ。
飲み会が企画された当初の立ち上げメンバーに自分は含まれていない、という状況下で参加するか否かの判断を迫られる場面。人生で1度は経験したことがあるのではないだろうか。
今回のように、友人を誘ったら既に飲み会が企画されていて、そこに合流しないかと提案されるケース
飲み会の直前で欠員が出たが、コースは人数分予約済みなので、人数合わせとして呼ばれるケース
いつもの固定メンバーで飲んでいて、「ちょっと懐かしい奴に電話してみようぜ」的なノリで3次会あたりから急に呼ばれるケース
どんな経緯があったにせよ、自分がスタメン入りしていなかった理由を考えてみると、これは僕なりの解釈だが「彼らスタメンにとって比較的浅い関係値だから」というところに帰結する。
僕の中で「なんで最初から呼んでくれなかったんだ!そんなんだったら行かないやい!」といった嫉妬心は全くない。むしろ「その飲み会、自分なんかが行ってテンポを乱してしまわないでしょうか‥?」という不安の方が大きいのだ。
こういう場面に遭遇した時はいつも、その飲み会に途中出場している自分をイメージしてみる。
きっと、高校時代の思い出話か、直近の飲み会で誰かがやらかした話あたりのエピソードトークが飛び交うはずだ。「それで思い出したんだけどこの間さぁ‥」のバトンで話が次から次へと繋がっていく、あの展開だ。
一方で僕はといえば、スタメンと同じレベルの温度と鮮度で記憶を共有できていないので、展開にうまく入っていけず、半ば置いて行かれる格好になってしまう。
心優しい誰かが愛想笑いをしている僕に気づき、話者に「タイム!」と要求して、僕が知らない登場人物の情報などを補足してくれるかもしれない。しかし、その度にいちいちトークの流れを断ってしまうので、だんだんと申し訳なく思えてくる。
かといって「無反応」と「知ったかぶり」のちょうど中間で違和感なくリアクションを取り、スッと溶け込めるような技術など、あいにく持ち合わせてなどいないのだ。
‥こんな被害妄想をこねくり回しつつLINEの返信を考えていたら、飲み会に参加する自信とモチベーションがみるみる失われていった。
結果的に、自分から誘ったにもかかわらず「日中予定があって何時になるかわからんから、今回はやめとくわ!」などと意味不明な理由で断りを入れるという、友人には非常に申し訳ないことをしてしまった。
これで、今後も僕のスタメン落ちは確実なものになっただろう。
でもそういえば、スタメンに入るために努力する、という選択肢もなくはないよな。ふと、そう思った。