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KEN

ケンは茶トラの生き残りだった
本当はケンの兄弟がもらわれてくるはずだった
でも事故で怪我をしたらしく、別の生き残りのケンが我が家に来た

チビで走り回って
おばあちゃんが甘いものばっかりやった
イタズラばっかりしてばあちゃんに怒られてた

どんどん大きくなって
どんどん存在感が大きくなった

猫じゃらしで遊んでやるのもわたしだったし
ケンの気持ちを分かってあげられるのもわたしだけだって思ってる。

あいつは弟、わたしの弟なんだ。唯一の心通わせられる家族なんだ。
にいちゃんもねえちゃんも家をでていったんだから、ケンが一番近くに居てくれた

実家にてストーブにあたるケン

ギターを弾いてる時もずっとそばにいて聴き耳をたてて、ソファで寝てくれてた。わたしの歌声をずっとそばで聴いてくれてた。

父さんが居なくなったときもケンがずっとそばにいてくれた。一緒に鳴いてくれてたんだね。


そんなけんはもう20歳過ぎたらしい
いつ彼を失うのか不安になるよ
不安だから会いに行けない
失った途端自分が崩壊しそうで
すごく怖い 思い浮かべるだけで泣けてくる

あいつが心を守ってくれてたんだ
くつ下履いた前足で元気出せってトントン ツンツンしてくれてたんだよな。

結婚してあの家を出た時、あいつにお別れ言った時、もう会えないと思った。会いに来たらダメな気がしたんだ。もう失うのが怖かったんだな。だから忘れようとしたんだ。距離を置いて君を忘れようと。失う前に忘れようと。

でも生きてて欲しい。失いたくない。
お前はお前しかいない。生きててくれよな。
ずっと。ずっとだぞ。

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