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拙という一人称 懐かしの快楽亭ブラック氏

自分のことを拙ということがある。メールとか文章の中で相手を敬う状況で使用する。ちょっとユーモラスな意味合いもある。
ある女性から自分のことを拙という人は、美味しんぼの快楽亭ブラックさん以来だと言われ、思わずニンマリしてしまった。快楽亭ブラックさん懐かしい〜。美味しんぼとは、原作雁屋哲、作画花咲アキラのグルメ漫画。1983年から小学館ビックコミックスピリッツに連載されていた。漫画自体も大ヒットとなったが、TVアニメ、実写版ドラマや映画にもなったので、ご記憶の方も多いだろう。栗田ゆう子という主人公が山岡士郎という相方と食をテーマに新聞記者や女性として成長していく姿を描いた秀作だ。いや主人公の山岡士郎が食の素材、調理法、食文化を通じて父海原雄山と対峙しながら成長していく物語という人も多いだろう。当時拙は栗田ゆう子推しであった。スピリッツを創刊号から読んでいた私には思い出深い作品だ。もう四十年も前の話だが。
 この漫画に快楽亭ブラック氏は登場する。確かアメリカ人ながら豆腐料理の研究家で、来日した折に主人公達と出会い、益々日本の伝統文化に惚れ込み、落語家になるというキャラクターではなかったか。彼が自分のことを拙と呼ぶのであった。
 拙とは元々「つたない」を意味する。拙速、拙攻など。これより自分もしくは自分に関わる事柄を謙遜して表現する際に使われる。拙宅、拙稿など。一人称の拙は古風な表現で時として滑稽なニュアンスを含む。自分を謙遜して言う拙者の略かなとも思う。明治以降には職人・芸人などの自称として文学作品にも登場する。まぁ遊郭の用語でもあるようだが。
快楽亭ブラック氏も日本の伝統文化を前にして、アメリカ人として自分のつたなさを感じていたのかもしれない。もちろん私も「私のような者が」という意味合いを込めて拙と称している。いっそ、快レグ亭ブラックに改名するか。鼻で笑われそうなので止めておく。

 本日も拙のつたない文章を読んでくださり心より御礼申し上げます。
【REG's Diary  たぶれ落窪草紙  1月9日(火)】


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