【落窪物語③】平安の日本版シンデレラは人の醜さも優しさもエグい
※物語の内容を含みますのでご注意ください。
「落窪の君」と「少将道頼」は「阿漕」の協力もあり、めでたく結婚して二条の邸宅で幸せに暮らし始めます。「道頼」は人望も厚く、将来を嘱望された出世頭で、「落窪の君」を見い出す感性も持った好人物なのですが、ここからの憎き「北の方」への報復はなかなかエグいのです。勧善懲悪的展開なのですが、ここまでやるのという感じです。心優しい「落窪の君」が逆に心を痛め、諫めるほどなのですから。
「北の方」は脱出した「落窪の君」に腹を立てるも、行方は分からず、「道頼」との結婚も知りません。そこへ「北の方」の娘である「四の君」と「道頼」との縁談が持ち上がります。これを利用した「道頼」は、ブサイクな変わり者と悪評高い男と入れ替わり「四の君」と結婚させます。なぜこんなことができるかは、三日三晩男が女の部屋に通い、問題が無ければ三日目に祝言を挙げるという当時の結婚の慣習にあります。三日目の朝、明るい所で相手を見てびっくり、思い込んでた相手と違うのですが、すぐ披露宴なので体裁が勝り、そのまま結婚成立、しかもご懐妊するのです。
「道頼」は「北の方」の娘「三の君」の婿を奪って自分の妹と結婚させてしまうとか、清水寺参拝時に「北の方」一家の予約してあった部屋を横取りしたり、加茂祭見物では、「北の方」一家の牛車を破壊したり、前出の「典薬の助」を文字通りボコボコにしたりとやりたい放題。その度に「北の方」は嘆き悲しみます。結構露骨な手口で次々と報復します。
そして極めつけは「北の方」一家の三条の邸宅への引っ越しの妨害。
「北の方」一家は、「落窪の君」が実母より譲り受けた三条の邸宅へ引っ越すことを考えます。「落窪の君」は生死もわからず行方知れずなので、その家に住もうと、お金をかけて準備をしていきます。家具や調度品も移してさあ引っ越しと言う時に・・・もうお分かりですね。
もともと「落窪の君」の家ですから、「道頼」は証文を楯に引っ越しを止めます。「阿漕」は「北の方」一家の有能な侍女たちも引き抜いていました。ゲームオーバーです。「北の方」は絶望します。
報復はこれで終了、ここから物語は一変します。
「道頼」はどんどん出世していき、「落窪の君」は子宝に恵まれます。
「道頼」と「落窪の君」は「北の方」一家を特別に優遇していきます。
三条の邸宅の進呈を提案し、「四の君」に立派な婿を世話し、「三の君」に冠位を与え、「北の方」の三人の男子もどんどん昇進させます。
「北の方」の夫である「中納言忠頼」(「落窪の君」の実父)を大納言にし、仏教の会や宴、法要なども盛大に催してあげて、何かにつけ高貴なお品をたくさん「北の方」一家に振舞います。これもここまでやるのと言う感じです。ある意味これも報復の一貫かなと勘繰ってしまうほどです。
「道頼」は太政大臣にまで上り詰め、他に女性をつくることなく、人々の尊敬を得て権勢を振るいます。「落窪の君」も「北の方」一家や多くの侍女にも慕われて、沢山の子供に囲まれて幸せに暮らします。
大出世を遂げた「阿漕」は二百歳まで生きましたとさで大団円。
人の極端な、醜さと優しさを同時に突き付けられた感じです。
それにしても私は生まれてこの方、ずっと落窪で暮らしているなぁ。
【REG's Diary たぶれ落窪草紙 3月3日(日)】
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