見出し画像

雨ニモ負ケズ難民・移民フェス開催記

文・カバー写真=水野喜之(みずの・よしゆき)

 11月23日は随分前から雨予報だった。気象庁の予報は100%雨、それならウェザーニュースはどうかと見れば80%雨予報でこの20%差に一縷の望みを持ったものの、近づいても近づいても22日と24日は晴れ予報なのに23日は雨予報なのであった。何故なの?なんか恨みでも?と思いながら日は刻々と迫って遂に前日、その日は早く寝ようと思っていたのに、ついついW杯を見て夜更かしして迎えた23日はハッキリとした雨音で目覚めたのだった。おお万事休す!
 私の担当は練馬で開催された第1回に続いてアフリカのJさん手作りの手提げの販売だった。それにJさん手描きの猫のイラスト入りTシャツとリンガラ語イラストバッジも販売する。
 当日は気合いを入れて9時には川口西公園(リリアパーク)に到着した。激しい雨にテーブルは拭いても拭いても濡れる始末にトホホとなりながらも、ボランティアの方の助けを借りて開店準備を進めていった。今回は午前中はトモさん、午後はタミさんがボランティアで応援に入ってくれて、タグ作り他はボランティアの獨協大学の学生さんにも応援いただいたのだ。多謝。さて、雨音に掻き消されステージの開会の挨拶も聞こえず、11時になったものの机の上の手提げの値札付けなどしていて、ふと顔を上げると傘傘傘、目の前は沢山のお客さんで溢れていてまさに驚愕したのだった。え、どうしたの?と狐につままれた様な気分のまま、私にとってのフェスは始まった。
 6月の練馬フェスではテント周りに手提げを吊って皆さんに見ていただいたが今回はなにしろ雨なのでテント内にいくつか吊った以外は机に積み上げて、なんだか百貨店特売場の特設台の様になってしまった。しかし次々に来るお客さんは意欲的でよく選びよく買ってくださる。朝の雨を恨む心は何処へやら、呼び込みし、この柄はいかがですかと勧めまくる。オクラ柄やJさん作のきもかわいい猫のイラストにリンガラ語でNIAW KITOKO(猫可愛い)と書いたものをシルクスクリーンで印刷した手提げがどんどん売れていった。Jさんも嬉しそうだ。実のところ、彼は雨だからダメだろうと思っていたのか午前中雲隠れしていたのだけれど、午後は店にいてくれてJさんが声をかければお客さんも喜び、よく売れるんで心強かった。なにより彼は勧め上手なんだな。そうそうこういうこともあった。白杖の若い男性が来られ、同行者から「ここではカラフルなバッグを売ってますよ」と説明を受けられていた。私やタミさんがNIAW KITOKOの手提げを、「青地にアフリカの男性が描いた猫の絵が白く描いてあるんですよ。その下にはリンガラ語で『猫可愛い』と書いてありますよ。」と説明し、Jさんも挨拶すると彼は「買います」と嬉しそうに言い、大事そうに鞄にしまってくれたのだった。彼の笑顔と共に忘れられないエピソードとなった。
 依然として降り続く雨の中を時々、ステージからドラムの音や子供たちの楽しそうな歌声が流れてきた。午後になってタイミングを見計らって私も何度か売り場を任せて会場を回る。雨の中どのテントも賑わっていて、飲食ブースには長い行列が出来ていた。広場の真ん中に今回新設された「チャイハネ ー無料歓談スペース」も休憩する人、食事をとる人、難民の方の話しを熱心に聴く方で満員の盛況だった。薔薇の香りがするというイラン式のお茶も冷めた体に一杯いただきたかったがグッと我慢して次へと回る。ポルべニールブックストアさんでは今回も雨にも負けずよく本が売れているようだったし、ビーズアクセサリー(REN)では細かいビーズ細工の実演を食い入るように見る人たちがいた。前回販売をお手伝いしたアフリカのアクセサリーショップでは楽しそうに選ぶ女性客の姿が見受けられ微笑ましかった。13時過ぎに回った時にはクルドやチリその他の料理やお菓子はほとんど売り切れ状態だった。知り合いのチリ人のPさんも満面の笑顔であった。雨なのに凄いなあ、と感心するばかりだ。
聞けば今回は本降りの雨にもかかわらず前回を上回る1,200人もの方が来場されたそうで、もし晴れていたらと考えると空恐ろしい。みんなどれくらい準備したらいいのだろう。
 それと今回も知人友人もたくさん来てくれてありがたかった。なかには30年振りに再会した元同僚もいた。川口に住んでた筈とメールしたら来てくれたのだ。みんなミートパイやビリヤニ、タマゴカレーにフォー、それにチキンフライポテトセットと色々食べて美味しくNatondi(リンガラ語でお腹いっぱい)になったというし、ステージのサヘルさんの話しや子供たちの踊りも見られたりと満足してくれた様子。そして口々に雨なのによくこれだけの人が集まったね、と言ってくれたが、それはこちらも全く同じ思いであった。
 さて、終了時間が雨もあり14時半に早まって、じゃあ片付けと思う頃にはバッグも9割方売れていてめでたしめでたしであった。疲れたけれどやって良かったなあとしみじみ感じ、Jさんとグータッチしてから家路についた。
 しかし、帰宅するまでトコトン雨であった。天よ、もし明日朝快晴なら靴を投げてやるから覚悟しておけよ。(翌日は実際快晴だった。靴は投げなかったけどね。)
 ああ、早くも次回が待ち遠しい。

水野喜之(みずの・よしゆき)浪曲を唸り、「散歩堂」の屋号で一箱古本市出没中。本業はサラリーマン(らしい)。

***

難民・移民フェスを支援する窓口です。
運営は皆様のご寄付で成り立っています。サポートにご協力いただけましたら嬉しいです(noteからもサポート可能です)。

いいなと思ったら応援しよう!