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流竜馬は犬神隼人であり、神隼人は流竜之進だった~竜馬と隼人に関する初期設定とそれに関する色々

フォロワーさんが入手した無印DVDBOXブックレットにより、今までの記事に書いた推測などの答え合わせとなる情報を得ることができた。
過去記事もリンクしながらその情報から得られた事実とそこから生じた考察や推測をこのページにまとめる。
今回はゲッターロボだけでなく魔獣戦線や永井作品バイオレンスジャックに触れる部分もある。


流竜馬は犬神隼人であり、神隼人は流竜之進だった

東映版無印DVDBOXブックレット内の初期設定(永井豪先生によるイラストもある)

リーダー:流竜之進(リュウ)→高等部一年。東京出身。体操部選手。頭脳明晰で理性的。
サブリーダー:犬神隼人(ハヤト)→同級生。九州出身。サッカー選手。足が早いが喧嘩ッ早い。「マユ毛ギザギザ」「口は大きくゆがめたかんじを」の書き込み

「ゲッターロボ DVDBOX」ブックレット 8頁
初期案の変遷の中の最後のものである(おそらく決定稿直前案)
「ゲッターロボ DVDBOX」ブックレット 11頁
「ゲッターロボ DVDBOX」ブックレット 12頁

「嘘だろ」と、正直思ったのだが、何度読んでも記載は変わらない。どうやらこれを読む限り、流竜馬と神隼人は立ち位置と名前、外見をそのままにそれ以外の初期設定をくるっと入れ替える事で成立したキャラクター達である。
元々理知的で理性的な(更に設定画を見る限り明確な美少年)と設定されていた竜之進は犬神の内面を得て、外見だけは可愛らしいが中身は薩摩隼人を地で行く性格となり、荒っぽいアウトローのような設定をしていた犬神は竜之進の理知的な内面を得て、ニヒルでクールな性格となった。(多分美少年設定も一緒に移動して東映版では演出とシチュエーションで押してくる美形になったし、漫画版ではそれを受けてか序盤の竜馬のもみあげと目の表情という石川先生的美形の記号表現が隼人に、犬神に記載のあるギザギザ眉は號以降を見ればわかりやすいが竜馬に移行した)(漫画版での美形記号の移行は入れ替わりの状況証拠ともなる描写だが、同じように状況証拠になりうるのが永井豪先生のバイオレンスジャックにおける陸空海を持つ人物/後述する)
二人の内面などが完全に入れ替わらなかったのは、外見は既に固まっていたからであろう。結果二人は双方の要素を重ねて持つようになり、竜馬は一人分に上手く納まったが、隼人は設定過多となりつつも破綻は起こさずに人物像が構築されることとなった。
私が最初に東映版や漫画版を見て「竜馬の外見と中身に差異がある」「隼人に二人か三人分の設定盛られてる」と思ったのは事実そうだったんだから間違いでは無かったのであるっていやそんな。確かに一瞬まるでそっくり入れ替えてるみたいって疑ったことはあったけどまさか本当にそうだったなんて……事実そうらしいのでもう仕方ないのであるが。

また、このブックレットからは最初の初期案時点で「リュー:空、ハヤト:陸、ムサシ:海」担当であった情報も読み取れた。

先の初期設定が事実であるなら(シナリオ没案まで網羅したDVDBOX特典なので情報確度は高いだろう)、今まで疑問に思っていた事の多くに筋道が通る

①.名前の元ネタ推測での入れ替わり現象

後から中身をくるっと入れ替えた為に、この記事で首を傾げていた名前と出身地、色の不一致をはじめとした噛み合わなさになっていた。
順番的には恐らくではあるが
カタカナ三文字の略称と空陸海割り当て(リュウ:空、ハヤト:陸、ムサシ:海)→フルネームと初期設定→竜之進と犬神で中身を入れ替え、その際に流竜馬と神隼人に名前も変更
という経緯だったのではないだろうか。
しかしこうなると竜=空とハヤト=陸は何故こうなったのか不思議ではある。主人公だけは最初から決めていて戦時兵器から名前を取らなかったのだろうか。また、最初から名前のイメージと空陸担当がチグハグであったのだろうか。

また、連載開始初回の扉絵で隼人がサッカーボールを持っていること、武蔵登場回くらいまでの竜馬と隼人のお顔は初期案の影響が強いことから
初期設定(→バイオレンスジャックの逞馬竜)→入れ替わる→入れ替わり情報だけで石川先生が漫画版を描き始める→決定稿と本放送→漫画版に反映されて竜馬と隼人の外見や人物像が固まる(武蔵登場回以降)
という経緯を辿ったのではないか、とも推測される。
(予告漫画で2が空、1が陸っぽい描き方をされているのも、空陸担当まで入れ替わると思っておられた可能性があるかもしれない)

各所のインタビューで関係者から「石川先生は原案を大事にしてくれていた」という言葉があったのも納得である。
竜馬はサッカー選手を空手にこそ変えたが、「実戦的」「特徴的な掛け声」は薩摩藩由来の示現流からであろう。(1973年公開「燃えよドラゴン」の影響も多大にあるだろうが)
犬と神と隼人は九州でも鹿児島辺りの由来で全て繋がる=薩摩であり、おそらく犬神から竜馬に九州設定が移行するに伴い「九州男児薩摩隼人」そのものが流竜馬のベースに置かれた。カッとなると「喧嘩っ早い」性格も初期設定由来である。
隼人も同じで東京出身、頭脳明晰=IQ300の天才児、体操選手、と実は初期設定そのままであったと言うことになる。(自然最初から隼人は理性的と石川先生は描いていたであろうともなる)
石川先生は実は彼に渡された初期案や原案からあまり変更をしておらず、やはり漫画版と東映版は一番近い存在だったろうともなる。

②.似てるけど似てない

恐らくこの記事に指摘した事はほぼ意図的だったのだろう。
流竜馬は犬神隼人であり、神隼人は流竜之進だった事を、その原案から関わった方々は覚えていて、東映版では妙な仲の良さ、漫画版では各所での不思議な一致や入れ替わり=正反対の同一人物として表現されたと考えるのが自然ではある。
(序盤に関しては入れ替えたことによる後遺症や試行錯誤もあったろうが)
人物像立脚までの間にそういう経緯があるとして、どうして後々の本編にまで引きずってしまったのかは疑問ではあるが。特に石川先生。それほど重要だと認識されていた要素だったのだろうか。

曖昧になった左利き設定(22.11.7追記)

「ゲッターロボ大全G」54pの初期案など、犬神隼人は元々左利きとして設定されていたようである。東映版では決定槁でも腰の装備が銃を含めて竜馬と逆位置と設定され、銃は左側になっている。(ゲッター2のドリルが左手にあるのもこの名残であるかもしれない)
しかし、実放映されたものや漫画版では左利きで統一はされなかった。
この現象も竜馬と隼人で中身を入れ換えた時に左利き設定がどちらにあるのか曖昧になってしまった結果ではないかと思われる。
腕時計の位置が明確に左手とわかるのは武蔵と弁慶だけで、竜馬と隼人はどちらにつけているのか曖昧なのもこのせいではないだろうか。
パイロットスーツでの時計は初期案パイロットスーツから両腕に腕時計のような意匠があったため、共通する意匠として残した可能性もあるが。
(竜馬と隼人は地味に共通する意匠が決定槁にも残されている。左右対称の腰装備、バックル部分の向きが異なるベルト、色違いのマフラーと同じマフラー留め、基本デザインは同じで形が異なるヘルメットなど。これらも意図的に残したお揃い要素だったのかもしれない)

またこの竜馬と隼人の初期設定の入れ替わりと同一人物に近い事を踏まえると以下のような推測が生じた。
(以下には漫画版ゲッターの他、バイオレンスジャックや魔獣戦線のネタバレ部分も含む)

㊀.漫画版竜二について

何故主人公の核であったろう「竜」の字を持たされていたのかとは以前から疑問であった。
恐らく竜二は「竜の字を持った犬神隼人」である。
彼の外見であるギザギザの眉、歪んだ大きな口などは犬神隼人の初期設定に記載がある。
竜二はもう一人の竜馬(竜の字に犬神の中身)であり隼人(元が犬神隼人)ではなかろうか。
そしてそうであるならば、彼が表舞台から消えることもまた必然だったのかもしれない。

㊁. バイオレンスジャック登場人物とゲッター初期案との関係性

前提条件が以下となる。なお私はバイオレンスジャックを全巻読んでおらず(一巻は読んだが)、永井先生の著作や資料にはあまり触れていない。WEB上での情報が中心となるため、触れられていた資料があったり、記載した中に誤情報があればご連絡頂きたい。

Ⅰ.バイオレンスジャックは永井作品スターシステムが基本
Ⅱ.連載開始時期はゲッター放映前73年から
Ⅲ.ゲッターに石川先生が入ったのはインタビューでのご本人の記憶があってるなら73年のはずでそれまでは永井先生比重高いはず
Ⅳ. 再度の無印DVDBOX初期案
リーダー:流竜之進(リュウ)→高等部一年。東京出身。体操部選手。頭脳明晰で理性的。
サブリーダー:犬神隼人(ハヤト)→同級生。九州出身。サッカー選手。足が早いが喧嘩ッ早い。「マユ毛ギザギザ」「口は大きくゆがめたかんじを」の書き込み

バイオレンスジャックの逞馬竜→陸、妹みちる、姉の死(隼人:母、竜馬:妹)、荒鷲軍団、弱者に生きる権利のない関東に法を作る

バイオレンスジャックの舞台は関東、東京であり、逞馬竜の出生地と考えられる。鷲はイーグル号に繋がり、彼の動機も竜馬というよりゲッターロボの根本が「生きる権利の獲得のための戦争」であろう事に似通っている。
成長後の彼は隼人に似た長髪の美青年であるらしいとも聞いた。
陸こそ合わないが、ゲッターロボの初期案における流竜之進を元にキャラメイクされてはいないだろうか?
(またこの逞馬竜という名前が漫画版アークに逆輸入され流拓馬となった可能性も出てくる)

調べたところ海堂と天馬が出てくるのはG終了後の77年以降連載分からとなる。
そのため、この二人の設定については決定稿や実放映、石川先生の漫画版の要素も反映された。

海堂猛志→海、「命を引き換え」にジャックに依頼する、竜の仲間になる。(どうも見た目は竜馬とかに似ている)
天馬三郎→空、三郎(大全の初期案を見る限りゲッター3が竜の乗機だった可能性がある)、元々荒々しい戦い方をしていた(犬神初期設定)が、けいこ先生という女性の死をきっかけに穏やかになる(入れ替わり後)、最終的に竜と志を共にし関東に平和が訪れる。(どうも武蔵っぽい外見をしている)

最初は逞馬と天馬が覇を争う予定だった(そうプロローグだかにあった)が取り止めになったことも
73年初期案時点では空(竜之進)と陸(犬神)でバッチバチにやりあいそうな雰囲気だった(犬神の左利き設定もそうだが、対立軸で組んでいそうな雰囲気が感じられた。あくまで主観だが)のが、紆余曲折の末に竜馬と隼人になり、仲が良くなりすぎて喧嘩とかおまけ程度の関係性になったのでやめた
という背景は無かっただろうか?

㊂.チェンゲにおいて真理阿は誰だったのか

先に書くが今川監督が先の情報を知っていたかどうかはわからない。
チェンゲは石川先生の著作である魔獣戦線の要素が非常に濃い作品である。当初の設定、全体構想は今川監督であったが事情により降板され、彼の考えていたものは最後まで描かれなかった作品である。
一話時点で竜馬には慎一、早乙女博士には慎一の父、源三が投影されているだろうとは両作を知っている人間なら異論は無いだろうと思う。しかし、不思議な事に魔獣戦線においては非常に重要なキーパーソンである真理阿が誰なのかがわからないまま、今川監督から交代され魔獣戦線の要素はあまり回収されないまま終わってしまった。
今川監督は真理阿を誰のつもりで話を展開しようとしていたのだろうか。
ミチルではないかと最初は思っていたが、彼女は事件の始まりとなる人物で作中本編には大きく登場しない。魔獣戦線なら慎一の母、静江であろう。既に死亡しているのに神は目覚めていない/世界は滅亡していないという点でも真理阿とは一致しない。
號でも無いだろう。彼のイメージ元は5000光年の虎に思えた。
渓もまた違うだろう。漫画版で二号機乗りの系譜であったのはそうだろうが、竜馬との接点は漫画版にしろチェンゲ内にしろ少なすぎる。
真理阿は最終的には「慎一とほぼ同一人物であると描かれる」人物である。

「真理阿はおれのもんだ」

電子書籍版「魔獣戦線」3巻 154頁

「お前は俺のすべてだ!! 俺のおふくろであり!! 俺の体であり 俺の血 目 鼻 耳だ!!」

電子書籍版「魔獣戦線」3巻 201頁

「私はあなたのもの」

電子書籍版「魔獣戦線」3巻 222頁

性別こそ違えど、竜馬の同一人物は誰だったのかと言えば先の初期設定から言えば隼人に他ならない。
慎一にとっての真理阿は、竜馬にとっての隼人だったのではないだろうか。

なお、魔獣戦線は75年から76年にかけて連載された。ゲッターが始まった翌年からの開始であり、
・慎一さんの序盤のお顔が竜馬によく似ていること
・宿している動物が鷲・ライオン・熊・蛇とゲッターの123+蛇を想起させること
・天涯のおじいちゃんの台詞からすれば「慎一、真理阿、富三郎」で三人だったこと(慎一、静江、源三も該当する)
など、そもそものイメージベースや慎一と真理阿の同一人物的関係性にゲッターや竜馬と隼人の設定が影響している可能性を私は否定しきれない。

(今川監督が初期設定を知らなくても先の記事にある入れ替わりやチグハグは91年連載の漫画版號までで描写されていたものが多いため、気付きさえすれば竜馬と隼人に正反対の同じもの的なイメージは持つ事ができる)
一見突飛といえる推測であるのは理解しているのだが、可能性のひとつとしては消しきれないのではないかと思う。

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