雑記

8月某日、ここ数日なんだかやる気が出ない。どうしても身体のスイッチがオフになってしまう。

相変わらず動悸も強いけれど、午後になって外に出る気持ちになりなんとか駅を使い、街へ来た。

空は夕暮れになろうとしていた。街に響く喧騒が若者のものからサラリーマンのものに変わっていった

やみくもに街中を歩いても自分の居場所がないように感じる。それでも以前よりは全然苦にはならなくなったが。

さんざんと、うろうろした挙句、駅ビルの4階にある喫茶店へ向かう。そこは店員さんがメイド服を着ている(けれどメイド喫茶ではない)店の内装も純和風を気取ったところだ。店の前には軽食やケーキ、飲み物のディスプレイが展示されていた。

「本日は午後7時半までの営業ですが大丈夫でしょうか」

スマホの画面を確認すると7時を少し過ぎていた。私は大丈夫ですと答えテーブル席へ案内された。

店員がメニューを持ってきたが、私はすかさず店の前のディスプレイで確認したメロンのケーキとアイスコーヒーを注文した。がちがちに緊張していたので声が上ずってしまった。店員は少しびくっとしてメニューを持ち帰った。

スマホを携帯していたもののバッテリーはあと残りわずかしかない。こういうことは動悸が強い日にはよくあることだ。昨夜寝る前にスマホを充電することができないほど強い不安に思考が侵され、身体が硬直している状態であったということなのである。

周囲には年配のお客さんが数人コーヒーで一服している。何やら歓談しているが、それほど騒がしいわけではない。

ほどなくして注文していたものが来る。店員が説明しながらケーキをおいて、その次にアイスコーヒーを置く。この手間の間、私は店員の方を向けばいいのかテーブルに置かれていくものをただ眺めていればいいのかわからなくなり、その中間を行き来ように頭をキョロキョロさせる。店員はより一層こちらを警戒してみているようだった。

「ご注文は以上ですか?」

「ーーはい、以上です。」

突然の大声の後、声が裏返ったが店員は何食わぬ顔でそっとカウンターの向こうに消えていった。

いくらなんでも緊張しすぎだと思いながらケーキを食する。メロンの八つ切りが上に乗っかっていて、それをフォークで切ることができないため突き差して口元へ持っていく、手を震わせながらのことなのでとてもではないが行儀がいいとはいえない

店内は特段それを見た誰かが場を盛り上げるわけでもなく、淡々と時間が流れた。

食べ終えて普通のブレンドにすればよかったと若干の後悔をしつつ会計を済ませた後(やはり声が裏返り店員はびくっとしていた)、ビルを出て駅の電車に飛び乗った。

車内の乗客たちは何食わぬ顔でそれぞれの家路を目指す。


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