脱・下請けに向けて、自社製品の開発に乗り出したい。最初の一歩は?その1
今回の相談は「長く大手企業からの受注生産がメインでやってきました。その状況から脱却するため、自社製品の開発に乗り出したいと考えています。最初の一歩はどんなことになるでしょうか」。東京都八王子市でプラスチック成形業を営む40代の社長さんのお悩みです。
リファラバの「自社を伸ばすプログラム」のナビゲーターで、売り上げアップの仕掛け人、秋元祥治さん(岡崎ビジネスサポートセンター「オカビズ」チーフコーディネーター)が答えます。
#売り上げアップ
#新規事業
#自社製品開発
に課題を感じている方々にお薦めです。
▼ 自社を伸ばすプログラム「秋元祥治のいいトコ探し塾」
毎日のように湧き出してくる困り事や悩み事。でも、相談できる相手が見つからない……。そんなファミリービジネスの経営者、後継者の方々は少なくないと思います。「みんなの経営相談」は、リファラバのナビゲーターや、ファミリービジネスへのサポート経験が豊富な専門家たちが、皆さんの困り事や悩み事に一つ一つ親身になって答えていきます。
自社の「強み」と「魅力」を見つけよう
長らく大手企業からの受注生産でやってきたから、自社は製品を開発する力に欠けている。そこをなんとかしたいというご相談だと思います。
最初に、少し見方を変えてみましょう。世の中にプラスチック成形のできる会社が数多くある中で、この会社は、高い品質を実現することによって、長く大手企業から選ばれてきたのではないでしょうか。
普段から当たり前に高い品質を実現しているので、経営者ご本人は特別、自覚がないのかもしれませんが、非常に高い成形技術があり、相当な表面仕上げの技術がある。厳しい品質基準を求める大企業に長らく信頼され案件を担当してきたことから、そうしたことが類推されます。
商品開発や新規事業に取り組む最初の一歩として、同業他社に比べて、自社が優れている部分、「強み」や「魅力」を洗い出して、言葉にしていくことが大切だと思います。
自社の強みや魅力にひもづかない領域に手を出してしまう、分かりやすく例えてみると、製造業なのに飲食店を始めてしまう——といったことをすると、やはり失敗の確率が高くなります。成功確率を高めるためにも、自分たちの強みや魅力にひもづけながら、本業を少しずらしたところに新たな可能性を見いだすという手法をお薦めしたいと思います。
過去の「難しかった仕事」にヒントがある
まず自社の業務フローを書き出してみましょう。仕入れ、加工、製品、デリバリー、サポート、資金回収……。その一つ一つについて、同業他社とは異なる点がどこにあるかを思いつく限り、言葉にしていきます。
その際、過去のお客さんに、なぜ同業他社ではなく、自社を選んでくれたのかを教えてもらうことも大切です。「うちより安い業者さんもいたはずなのに、なぜうちに発注してくれたのか」。そうしたことを聞き取ることで、自社の強みや魅力を確認していく。最初の一歩を踏み出す前に、こうした「見える化」の作業をしていきましょう。
さて、そのうえで何をどう始めたらいいのか。ひとつやってみていただきたいのが、過去に受けた仕事の中で、「難しかった仕事」「めんどうくさかった仕事」「変な仕事」を書き出してみることです。
「忘れていたけど、こんな仕事をやったよね」。そうしたことを書き出していく中から、世の中のニーズがどこにあるのか、そこから新たな事業のヒントが見つかることがあります。
安価な中国製に押されて…どうする?
過去にオカビズで相談を受けた事例をご紹介します。
愛知県豊橋市に額縁を製造販売する「美創舎」という会社があります。もともとは、遺影用額縁の製造販売が主力で請負が中心の会社でしたが、安価な中国製に押されて売り上げが急減していました。
新たな事業のヒントを探るため、過去に取り組んだ仕事をどんどんあげてもらいました。
その中で私たちが注目したのは、近所の幼稚園の園長さんから頼まれて作った卒園記念の品。それをヒントにして生まれた新商品が、日本初の収納機能付き額縁「osaMaruue(オサマルーエ)」でした。
これまで下請け仕事が中心だった美創舎にとって初めてとなる自社商品です。ホームページの拡充やネットショップの開設、販路開拓やPRなどすべてが初めてのことばかり。オカビズでは伴走しながら取り組みをサポートしてきました。
収納機能付き額縁「オサマルーエ」が大ヒット
幼稚園や保育園の子どもを持つ親にとって「あるある」なのは、子どもが園から絵をたくさん持って帰ってくるけれど、ちょうどいい収納場所がなくて、段ボールにしまって押し入れに入れておくしかないというお悩みです。
通常の額縁は、絵が1枚収まるだけですが、オサマルーエは厚みが2センチほどあって、最大30枚の収納が可能。紙芝居の枠のような厚みがあり、そこに何枚もの画用紙を収めたインナーケースがすっぽりと収まります。
価格はひとつ9000円以上しますが、新入園・新入学のお祝いギフトと捉えれば十分に勝機はあるはず。全国ニュースや新聞などにも取り上げられ、全国から注文が殺到。東京や名古屋の百貨店でも取り扱われ販売されました。従業員4人の小さな額縁屋さんが生み出した大ヒット商品になったわけです。
この新商品は、過去に取り組んだ仕事の中から、新しいビジネスの可能性を見つけた事例です。
自社製品や新商品の開発というと、アイデアを「外」に求めがちだと思います。そうしたオープンイノベーションももちろん大切ですが、実は「外」に目を向ける前に、自分たちが持っている強みや魅力、自分たちができることをしっかり言葉にして自ら認識する。他社との違いを自覚して、それをベースに発想していくことが重要だと思います。
新商品のヒントは「社内」にある
ご質問にあるような下請けの町工場ということになると、大手企業からやってくる、さまざまなむちゃぶりに応えてきたはずです。そこに新しいビジネスのチャンスがある。
美創舎の「オサマルーエ」は、幼稚園の園長さんの「お母さんたちが子どもたちの絵を収納する場所に困っている。なんとかならないか」という、いわばむちゃぶりから生まれました。そこに額縁を丁寧に作ってきたという、もともとの強みをマッチさせた。つまりゼロから作ったわけでも、「外」の力を借りたわけでもなくて、自らの強みを生かすことで、ヒット商品を生み出すことができたわけです。
まず自社がもともと持っている強みと魅力、これまでやってきた仕事の中から、商品開発のヒントをつかんでいく。こうした手法は、どんな企業でも活用してもらえるのではないでしょうか。
次回は、新商品開発で注意すべきポイント、「試し算」の手法についてお話ししていきます。
<その2に続く>
▼ Refalover(リファラバ)とは?
▼ リファラバ編集部へのお問い合わせはこちらより