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天国に旅立ったスターたち②~音楽プロデューサー酒井政利さん~
構成作家という仕事をして15年以上になります。これまで多くの著名な方々とご一緒する機会に恵まれてきました。中には、残念ながらその後、天国へと旅立たれた方もいらっしゃいます。
多くの人たちを楽しませ、影響を与えてきたスターというのは、実際に会ってみると独特の印象をこちらに与えるものです。何かがキラリと違います。そこで今回も、僕の心に素敵な印象を残した“天国のスター”をふりかえります。
【構成作家T プロフィール】
主にラジオやテレビの台本を書いている30代の構成作家。
趣味はスポーツ観戦。とくに野球が好き。カープファン。
今回は、2021年7月に亡くなられた、稀代の音楽プロデューサー・酒井政利さん。
山口百恵・郷ひろみ・キャンディーズ・松田聖子など、アイドル黄金時代と呼ばれたこの時期に300人あまりのアイドルや音楽グループを世に送り出した名プロデューサー。“レジェンド”という言葉でさえも陳腐に思えてしまうほど、とてつもない功績を残された偉大な人物。そんな酒井さんと、幸運にも何度かご一緒することができました。
ある日、僕の担当するラジオ番組のスタッフから「ゲストに酒井政利さんが決まりました」と聞かされ、「すごい人に会える!」と思った半面、正直「ちょっと怖そうだな」とも感じていました。
実際にお会いしてみると、孫ほども年の離れた僕に対して、「何でも話しますから、遠慮せず聞いてくださいね」と優しく微笑んでくださり、なんて柔らかい印象の方なんだと感激。勝手に怖いイメージを持ってしまった自分を心の中で殴りました。
そして本番はつつがなく終わり、スタジオから出てきた酒井さんに対し、まだまだ伺いたい話がたくさんあった僕は、思わずこう声をかけました。
「ぜひ、またお話を聞かせてください!」
すると、酒井さんは立ち止まり、
「いつでも呼んでくださいね」
と再び優しい微笑みを浮かべ、ラジオ局を後にされたのです。
「ま、社交辞令かもしれないな……」
と思いつつ、しばらくして再出演のオファーを出したところ、スンナリとご快諾。2度目の出演が実現しました。
放送に向けて、電話で事前打ち合わせをお願いすると、電話口からはあの優しい声が。
「何でも話しますから、遠慮せず聞いてくださいね」
そして「こんなエピソードがありますよ」「リスナー的には、この曲の話が聞きたいかなぁ」など、少しでも面白い放送になるようにたくさんのアイデアを提案いただきました。
その後、無事に2度目の出演を終えた後、僕はまた言いました。
「今度は、郷ひろみさん特集でいきましょう!」
身勝手極まりないのは重々承知ですが、番組が盛り上がったのがうれしくてまたお願いしました。すると、酒井さん、
「いいですね。そうしましょう!」
と、いつものように微笑みながら返してくださったのです。
しかし、その約束が果たされることは永遠になくなってしまいました。
「そろそろ3度目のご出演を」と考えていた中で届いたまさかの訃報でした。今も、ただただ悔しい気持ちが募ります。
ただ、僕らにできることはあると思っています。
“酒井政利”という稀代の音楽プロデューサーを次世代に語り継いでいくこと。そして、その音楽をなお楽しむこと。
酒井さん、本当にありがとうございました。
あの優しい微笑み、一生忘れません!
僕が担当する番組にたくさんのアイデアを提案してくれたように、きっとプロデュースした音楽にもたくさんのアイデアを詰め込まれたのでしょう。
泉のように発想が湧く才人でした。
次回も天国にいるスターをふりかえります。おつきあいください。
(つづく)