Project:;COLDに隠されたメッセージ
こんにちは、リー猫と申します。
私の一推しARG『Project:;COLD』。
その魅力について、これまでに幾つかの記事で紹介してきました。
今回は題名の通り、この壮大な企画に隠されたメッセージについての考察記事を書いてみたいと思います。
Project:;COLDの魅力は、斬新な仕掛けや高難度な謎解きだけではなく、何と言っても異常なまでの没入感をもたらす上質なストーリーにあります。
これまでに公開された三つの事件では、その背景となる様々な物語が描かれました。
一見するとバラバラな各事件ですが、ある視点から見ると一つの共通点で結ぶ事ができ、私はそこに隠されたメッセージがあるのではないかと推測しました。
少々長くなりますが、よければお付き合いください。
※本記事はProject:;COLDのネタバレを多分に含んでいます。ご了承ください。
1.Project:;COLDが伝えたモノ
物語とは本来、メッセージを伝えるものではなく、別な世界の出来事を客観的に楽しむためのものです。
いきなりタイトルと矛盾することを書きますが、物語というものはノンフィクション作品でもない限りあくまでも作り話です。
登場人物が何を考え、どう行動し、どういう結果に繋がり、時に命を落としたとしても、私たちはそれを自分とは別な世界の出来事として傍観するだけです。
仮にその物語の登場人物に共感を覚えたとしても、受け止め方は人によって異なるため、たとえ作者が何かしらのメッセージを込めていたとしても、残念ながらそれがストレートに全ての人へ伝わる事はないのです。
しかし、Project:;COLDはARG(現実代替ゲーム)という媒体を用いて物語を描いています。
参加者たちは、事件があたかも現実世界で起きているかのように受け止め、時には登場人物たちと交流する場面もあります。
単なる創作物とは違い、圧倒的に現実に近い形で物語へ『参加』するのです。
Project:;COLDの持つ「参加できる物語」という性質であれば、そこへ何らかのメッセージが込められていた場合、それはストレートに参加者へ伝わるのではないか? と私は考えます。
では、Project:;COLDに隠されたメッセージとは一体何なのでしょう?
結論から言うと、それはcase.613の最終話でイオリ・ハートフィールドが発した「ある言葉」ではないかと推測します。
動画の最後(34:40あたり)に、彼は視聴者に向けてこう言います。
『どうしても解決できないトラブルが起きた時、僕たちはすぐ近くにいる』
この言葉を聞いた時、私はほんの少しだけ違和感を覚えました。
なぜならば、少し冷めた言い方になりますが、登場人物たちがトラブルに巻き込まれたところで、物語の外側にいる私たちには関係の無い出来事だからです。
例えばこの言葉が、今後何かしらの事件が起きた際に再び彼らが解決をしにやってくる、という意味なのであれば「僕たちはまた君たちの元に現れる」とか「また力を借りるだろう」というニュアンスの言葉の方がしっくり来ます。
それに、イオリは100年後の未来からネットワークを通じて映像を届けているだけで、本人がこの時代に居るわけではありません。
それなのに、なぜ彼は「僕たちは『すぐ近く』にいる」という表現を使ったのでしょうか?
初回開催であるcase.613の時点ではぼんやりとした疑問に過ぎなかったこの言葉ですが、前回開催のcase.633を踏まえると、その意味が何となく見えてきたような気がします。
それでは、これまでの各事件を振り返りながら、彼の言葉の意味を読み解いていきましょう。
2.各事件の描いたキーワード
公開済みの各事件を、発端から解決までざっくりと解説し、その事件のキーワードを読み解いていきます。
事件の起きた時系列はcase.611→case.613→case.633ですが、構成上case.611を最後にしています。
細かい設定や背景は省いていますので、詳しい展開は公式サイトのストーリーページ等でご確認ください。
①case.613 血の人形・再来事件
2020年11月27日、一人の少女が亡くなりました。
彼女の名は佐久間ヒカリ。
神奈川県平塚市の六泉ヶ丘高校に通う高校三年生で生徒会長、文化祭実行委員で結成したガールズバンド『都まんじゅう』のリーダーも務める、才色兼備の優秀な人物でした。
その二日後、青島玲子をはじめとした都まんじゅうの残るメンバーたちは一本の動画を投稿します。
動画の中で彼女たちは、平塚市で発生している怪事件『血の人形・再来事件』を調べたために、自分たちは呪いに巻き込まれたのだと説明。呪いを解くために力を貸してほしいと視聴者たちに依頼します。
その事件とは、13日おきに一人ずつ「崇拝するシラノの元へ、我が○○を捧げる」と書かれた謎の紙を残して6人もの人間が自殺を遂げた、33年前の平塚市で起きた事件と全く同じ、奇妙な事件でした。
これまでの犠牲者は四人。
佐久間ヒカリが亡くなったのは、三人目が死亡してから13日後でした。
動画の視聴者および彼女たちの手助けをする参加者は『融解班』と称されます。
融解班の力を借り、やがて呪いを解く方法が判明。
大切な友人を一人失いながらも、都まんじゅうのメンバーたちはいつもの日常へと戻っていきます。
ところが、佐久間ヒカリの死からさらに13日後の12月10日、メンバーの岩永静が亡くなります。
呪いは解けてなどいませんでした。
さらに13日後の12月23日、メンバーの星野理也が「事件が起きたのはすべて自分のせいだ」とビデオメッセージを残して亡くなりました。
これで犠牲者は一人のイレギュラーを除き、33年前の事件と同じ6人。
深い悲しみに暮れながらも、残された青島玲子、森いちご、綾城奈々乃の三名は、これで呪いは終わったのだと胸をなでおろしました。
しかし、13日後の1月5日に森いちごが、さらに13日後の1月18日に綾城奈々乃が相次いで死亡。
最後に残った青島玲子も、YouTubeのライブ配信中に車にはねられ死亡してしまいます。
都まんじゅうは、全滅してしまいました。
青島玲子の死亡から二日後の1月24日、彼女たちのYouTubeチャンネルでイオリ・ハートフィールドという謎の人物が配信を行います。
彼は100年後の未来から、過去の未解決事件を調査・解決するためにこの時代へ干渉を行う探偵だと説明します。
イオリからの依頼を受け、融解班たちは都まんじゅうメンバーのスマホのロックを解除するため、パスワード探しに力を貸しました。
そして、融解班の尽力もありすべてのロックが解除され、事件の真相が明らかとなります。
都まんじゅうが『血の人形・再来事件』に巻き込まれる発端。それは、星野理也による母親の再婚相手の殺害でした。
その男は、母親に引き取られた弟に日常的な暴力を加えていました。
それを知った星野理也は、暴力をやめさせようと直談判に行き、逆上した男を消火器で撲殺してしまいます。
事件の隠ぺいを図るため、彼女は『血の人形・再来事件』に見せかけることを思いつきました。
ところが、この行動が宗教的な儀式として事件を遂行していた組織を逆上させてしまいます。その組織は、都まんじゅうをターゲットとして儀式を続行。
予定の6人を超えてもなお、メンバーが全滅するまで殺害を繰り返しました。
星野理也から自らの過ちを聞いた彼女たちは、そのことを一切口外しないと誓いを交わしていました。
警察へ出頭したり、動画ですべてを打ち明ければ、犠牲者は減らせたかもしれません。
しかし、当事者である星野理也が死亡しても、最後の一人になるまで、誰一人その誓いを破るものはいませんでした。
彼女たちを蝕む呪いとは、この「友情の誓い」だったのです。
イオリは、星野理也の殺人を食い止めるため、彼女が事件を起こす前に弟の虐待を佐久間ヒカリへ相談できるよう過去を改変。
母親の再婚相手は警察に逮捕され、星野理也が殺人を起こすことも、都まんじゅうが事件に巻き込まれることも無い未来を作り出すことに成功しました。
・case.613のキーワード
ちょっとしたボタンの掛け違いや、僅かなタイミングのズレから起きたこの事件。
そんな中でも、都まんじゅうのメンバーは固い友情で結ばれ、その絆は2年後も変わらず続いています。
次に解説するcase.633では、事件と並行して大学生や社会人となった彼女たちの仲睦まじい姿が描かれました。
都まんじゅうのメンバー達の固い絆と友情を描いたこのエピソード。
キーワードは『親友』です。
②case.633 惨劇の五芒星事件
2022年3月19日、茨城県水戸市の漆ヶ原中学校屋上で、5人の生徒が互いに刃物で刺し合い意識不明の重体になる事件が発生しました。
この事件は、先の『血の人形・再来事件』で命を救われた佐久間ヒカリによって伝えられます。
その後、佐久間ヒカリのTwitter(現X)に「C」と名乗る謎の人物が現れ、事件の真相を究明するために都まんじゅうのYouTubeチャンネルを貸してほしいと交渉。
彼女はこれを快諾します。
Cは自らを未来人オタクと称し、未来人に関する情報を集めたwebサイトを運営していました。
そして「惨劇の五芒星事件」についても、このサイトに情報を集めていきます。
Cは自身のTwitterで融解班へ協力を要請。
被害者や事件の背景について調べていくことになります。
「監視者(@mtarget_net)」という謎のアカウントの発信により、被害者の一人、榊明日美のスマートフォンが覗き見できたほか、事件の舞台となった漆ヶ原中学校の教職員用サイトが明らかとなります。
また、その後に見つかった被害者たちのアカウントや学校裏サイトの情報、Cのサイトに追加された謎のシステム(スマホハッキング)等から、以下の事が判明します。
被害者の生徒たちは全員、家庭や学校生活に何らかの問題を抱えていた
榊明日美は漆ヶ原中学校で酷いいじめを受け、転校していた
中学校はいじめの事実を認めず、隠蔽しようとしていた
被害者の生徒たちは「ポラリス」と名乗る人物とやり取りをしていた
「ポラリス」は儀式と称し、生徒たちをマインドコントロールしていた
スクールカウンセラーの堤玲一が被害者全員と面談していた
堤玲一を「ポラリス様」と呼ぶ音声が発見された
そんな中、事件は急展開を迎えます。
スクールカウンセラーの堤玲一が、被害にあった生徒たちにマインドコントロールを行い、お互いを差し合うよう洗脳した殺人教唆の疑いで逮捕されたのです。
彼は警察の取り調べで犯行を認め、Cもこれで事件は解決したと調査の終了を宣言します。
ところが翌日、Cが間借りしている都まんじゅうのYouTubeチャンネルに謎の配信予約が現れます。
配信に現れたのはイオリ・ハートフィールドでした。
彼は、惨劇の五芒星事件はまだ終わっておらず、堤玲一に罪を着せた真犯人が居ると主張。
その証拠を掴むために、融解班たちへ教職員サイトやスマホハッキングのパスワードを解明するよう依頼します。
これを受け、Cも改めて融解班たちへ調査再開を報告し、最後の謎解きが始まりました。
融解班の協力により、必要とされる全てのパスワードが解明され、惨劇の五芒星事件の真相がついに明らかとなります。
事件の黒幕は、漆ヶ原中学校の保険医・菅原麻理恵でした。
彼女は保険医の立場を利用して家庭に問題を抱える生徒の情報を得ると、ポラリスを名乗り彼らに接触。
家族の事情を言い当てることで信用させ、儀式めいた行動を指示することにより徐々にマインドコントロールを施していきました。
そして、ついには転生の儀式と称して惨劇の五芒星事件を行わせます。
彼女がなぜこのような事件を引き起こしたのか。
その動機は、同じ漆ヶ丘中学校に通う息子の菅原伊吹にありました。
菅原麻理恵は配偶者を心臓の難病で亡くしており、伊吹もまた、同じ病気に冒されていました。
学校で、カウンセラーの堤玲一から共有されたカウンセリング音声を聞くと、そこには様々な問題を抱え、いっそ死んで楽になりたいと願う子どもたちの声が録音されています。
かたや、難病によって生きたいと願っても生きられないかもしれない息子。
その相反する二つの願いに挟まれ、彼女の精神は次第に蝕まれていきます。
そして、未来に関するSF小説に興味を持つ息子へ「知り合いの未来人がこれから起こる凄惨な事件を予言している」という嘘をつき、彼に生きる希望を見出させるために、あの事件を実行に移してしまうのです。
イオリは儀式の直前に榊明日美が誰かにメッセージを送信しかけていた事に着目。
「流れ星が流れたら送信ボタンを押す」という言葉を手掛かりに、役目を終えた人工衛星をハッキングし、地球へ墜落させます。
衛星の破片は火球となり、榊明日美の目の前には大量の流れ星が降り注ぎました。
彼女は自身の言葉に従いメッセージを送信。
送信先は、カウンセラーの堤玲一でした。
堤は儀式のために漆ヶ丘中学校の屋上へ集まった生徒たちの元へ駆けつけ、彼らを説得します。
こうして、儀式は直前で食い止められました。
後に、菅原麻理恵は生徒たちへマインドコントロールを施し、自殺を唆したとして警察に逮捕されます。
事件の発覚を機に、いじめを見過ごしていた漆ヶ丘中学校の管理体制も問題視されることになります。
被害者となった生徒たちの生活環境は、専門機関によって調査が行われることとなり、堤玲一も引き続き彼らを支えていく事を誓いました。
・case.633のキーワード
虐待やネグレクト、いじめの隠蔽など、現代社会の抱える様々な問題を浮き彫りにしたこの事件。
そんな中でも、"信じられる大人"は居る。
堤玲一も、子どもたちの悩みと真剣に向き合った一人でした。
榊明日美の日記にも、そう読み取れる記載がありました(現在は閲覧不可)。
という訳で、この事件のキーワードは『信じられる大人』です。
③case.611 県会議員夫婦殺害事件(※)
2020年12月28日、茨城県の県議会議員、北澤拓郎さんと妻の恵美子さんが刺殺体で発見されました。
また、15歳の長女が行方不明となっており、凶器には長女の指紋が付いていました。
※公式に事件名の表記はありませんでしたので、便宜上の名称を記載しています
この事件は、2020年に開催されたバーチャルマーケット5(Vket5)の仮想空間内のモニターで伝えられました。
このVket5内には長女の思念が8枚のポスターとなって点在していて、それらを発見し読み解くことで事件の背景を知ることができます。
ポスターからは、以下の情報が得られました。
長女の名は北澤千春
彼女は死にかけており、魂となって電脳空間に閉じ込められた
彼女は5年前、両親が人を殺す現場を目撃してしまった
それ以来、彼女は自宅に軟禁状態となった
父親はダム建設の反対派で、建設推進派に雇われたヤクザに脅されていた
5年前に両親が殺したのはそのヤクザだと思われる
千春には使用人による見張りがつけられた
千春は「つかさ」という使用人と仲良くなり、両親に内緒で外出するのを手助けしてもらっていた
ある日、その外出が両親にバレてしまい、つかさは激しく叱責され、両親の千春に対する態度も変わった
千春はいつか両親に殺されるという恐怖の中で過ごしていた
12月30日、Vket5内のモニターに一枚の画像が表示され、その謎を解くと次の資料が開示されました。
さらに9日後の1月8日、Twitter上に現れていた「i」というアカウントが次の画像を投稿。
こちらも、謎を解くことで情報が開示されました。
その後、Vket5内のモニターにて犯人逮捕のニュース映像が公開されます。
事件の真犯人は、この家の使用人で第一発見者の土岐つかさでした。
彼女は、就寝中の北澤夫妻を刃物で殺害。
犯行を偽装するため、娘の千春を誘拐し、山中の空き家へ軟禁します。
千春は自力で携帯電話から警察へ通報。この事が、犯人逮捕のきっかけとなりました。
土岐つかさは建設業を営む家庭に育つも、ダム工事が中止されたことにより家業が破産し、両親を自殺で亡くしています。
そして、ダム建設反対派のリーダーであった北澤拓郎への恨みが、犯行の動機でした。
・case.611のキーワード
当初、北澤千春は両親の殺害現場を見てしまったために、自身もいつか殺されてしまうという恐怖の中にありました。
しかし、彼女が見たものは、虐待を受けていた実の親から彼女を守るために、義理の親である北澤夫妻が起こした殺人でした。
そして、土岐つかさもまた、亡くなった両親の恨みを晴らすために犯行へ及びました。
この事件から2年後のcase.633。
融解班の前に現れた「C」という人物は、この時命を救われた北澤千春でした。
彼女の運営するサイトには、自身の過去について綴った隠しページがあり、そこに書かれた内容がcase.611に酷似しているほか、サイトに不正アクセスがあった事を知らせるメールをツイートしてしまったことから、彼女が北澤千春であると判明します。
隠しページには、事件後は遠縁の親戚へ引き取られ、新しい家族に温かく迎え入れられて楽しく暮らしている、と彼女の現状について綴られています。
波乱に満ちた人生を送る北澤千春ですが、血の繋がりはなくとも、彼女を大切にしてくれる家族に囲まれていました。
case.611のキーワードは『家族』です。
3.まとめ
イオリ・ハートフィールドの発した不可解な台詞
『どうしても解決できないトラブルが起きた時、僕たちはすぐ近くにいる』
そして、三つのcaseから読み取った
『親友・信じられる大人・家族』
というキーワード。
もしかして、イオリの言う「僕たち」の部分は、三つのキーワードに置き換えられるのではないか?
と、私は考えました。
つまり、彼の台詞の真意、そしてProject:;COLDに隠されたメッセージは、こういう事なのではないでしょうか。
あの言葉は、本作の主人公でありストーリーテラーでもあるイオリが、融解班に向けて送った明確なメッセージでした。
「キミは一人じゃない」
と、イオリはそう伝えたかったのではないでしょうか。
思えば、Project:;COLDは企画開始直後から融解班同士のコミュニケーションを推奨し、case.633開催時にはTwitterコミュニティやDiscordといった、融解班が集える場所が提供されました。
そういう意味では、『融解班』もキーワードのひとつなのかも知れません。
実際、私もProject:;COLDに参加して多くの仲間ができました。
妄想めいた考察に反応してくれたり、あいさつを交わしたり、私は一人じゃない、と改めて感じています。
本考察も、違和感を覚えた一言のセリフから膨らませた妄想に過ぎず、本当はメッセージなんて込められていないのかも知れません。
しかし「何気ないツイートにも意味がある」という公式ページの言葉のように、一言一言に意味を見出すのも、この企画の楽しみ方の一つだと考えます。
Project:;COLDは、2023年9月に次回展開の発表が予定されており、今から楽しみでなりません。
仮に、次のストーリーにも何かしらのキーワードがあるのなら、これまでに該当の無かった『恋人』や『パートナー』くらいでしょうか……。
そんなことを考えながら、発表を待ちたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?