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【実話怪談】百合

冠婚葬祭。
私の場合、結婚式より圧倒的にお葬式に行っている回数が上回っている。
小学校の時に、子供会役員になった途端、立て続けにかかわった先生が亡くなるという事を皮切りに沢山のお葬式に参列。
その中でも、夏休み中に近所の同級生のお兄さんが亡くなったのは今でも印象深く覚えている。
バイクの事故、しかも我が家のすぐ近く。カーブのきつい坂道で対向車と正面衝突。事故直後は意識不明で病院に運ばれたと母から聞いた。
その夜、テレビでは「さよなら銀河鉄道999」が放映されていた。
近所の友人から、亡くなられたとの電話を貰った。お葬式に参列しないといけないから、と。

その同級生と仲が良かったわけではないけど、歳がそんなに変わらない兄弟がいなくなってしまった事に少なからずショックを受けている自分がいた。そうか、死んでしまったのか・・・、と。
そう思いながら、庭を眺めていると白くぼんやり浮かぶものが目に入った。
よく目を凝らすと、白い百合の花が暗闇にぼんやり浮かんでいたのだ。
我が家は山の中で、夜はとにかく暗い。そんな闇の中に何故、白い百合が見えるのか。
しかし、それを見た私「あんなとこに百合生えてたかなぁ」としか思わなかった。
翌朝、百合が見えた場所を確認したが、そこには百合はなかった。
そして、事故現場にお線香をあげに行った。
その事故現場、一輪の白い百合の花が咲いていた。
事故現場の道路に向かって白い花弁を広げていた。

夏になり、百合の花を見るたびこの夏の日を思い出す。

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