S2 Week 2

【今週の出来事】
2月16日~21日 授業+LfA French


Public Management & Delivery

Lecture

◇ New Public Management (NPM) について

New Public Management(NPM)とは、ハイエクの新自由主義(ネオリベラリズム)にインスパイアされて、サッチャーやレーガンが大鉈を振るった「小さな政府」への改革に代表される、1970年代以降の行政改革のムーブメント。

4Es:efficiency(効率性), economy(経済性), effectiveness(効果的), equity(公平性)を掲げ、行政運営への市場メカニズムの導入や、権限移譲、パフォーマンスの可視化等によって、行政コストを削減した効率的な行政運営や、市民へのアカウンタビリティの確保を目的とする。プロセスよりも結果重視。

Seminar

◇ NPMのアイデアを用いたケーススタディ
◇ 各国のNPMの比較

1980年代のイギリスの大学群をケースに、コスト削減&パフォーマンス向上のためにどのような改革を行うのがよいか、小さなグループで議論。一番多かった意見は、やはりパフォーマンスの指標を導入し、大学同士を競い合わせるというアイデア。でもやはり、

  • 指標の定め方、パフォーマンス評価の困難性

  • 市場の商品の比較(たとえばチョコレートバーの食べ比べ)のように、一人称での比較ができない

といった意見なども聴かれた。

先のセメスターのLeading and Managing ChangeでもNPMを扱っていたので、既にいくつかのアカデミックな論文に触れているわけだが、NPMに対して批判的あるいは否定的な文脈のものが多いという印象を受ける(講師の意図なのかもしれないし、私がバイアスかかっているだけなのかもしれないし、たまたまなのかもしれない)。特に、今回の課題図書(Hood & Dixon, 2016)の、「この約30年、イギリスにおいてNPMがもたらしたものは、『苦情』と『コスト』の増加だった」という指摘が興味深かった。

同じグループのイギリス人学生が、「イギリスの鉄道会社が、安く、質の良いサービスを提供していると思うかい?」と言っていて、残念ながら「説得力がある」と思ってしまった。


Principles of Policy Process

Lecture

◇ Bardachの政策分析(Eightfold Path)
◇ ポリシー・プロブレムの特定

政策分析を行うにあたっては、まずは社会又は現行の政策における「問題」を特定する必要がある。

  • 頻度、確率、過不足など、事実と証拠から、社会に潜む危険や損失の認識

  • 問題が起こる条件、原因、連鎖の解明

  • 政府による介入の必要性

  • 社会の理想の状態&本来の政策の目的と、現実のギャップ

講師のアクセントが聞き取りづらいのは相変わらずなのだが、スライドで使われている文言もハイコンテクストなので、ノンネイティブにとってはかなり難易度の高い講義である。

Seminar

◇ 演習:ポリシー・プロブレムの特定

前半は、講師が用意したポリシー・プロブレムの例(ティーンエージャーの大麻使用、オーストラリアのチャイルドケア)について議論。問題の背景や原因の解明はもちろん、問題が解決した場合、どのような結果や連鎖が予想されうるかまで特定する必要がある。

後半は、各自持ち寄った課題についての議論の時間。どうやら講義の中でセミナーまでの課題が与えられていたようだったが、見事に聞き逃していた(あるいは聞き取れていなかった)。同じグループでは誰も課題をやってきていなかったので、セミナーの後半はほとんど沈黙の時間であった。

後々講義の録画を(字幕表示をオンにして)見返したところ、確かに講義の冒頭で、セミナーまでの課題について口頭で触れられていた。今後は、毎回セミナーの前に必ず講義の録画を見返すようにしようと思った。


Public Finance

Lecture

◇ 政府の規模の拡大と役割の変化
◇ 財政のツール

前半は、近代の官僚的国家から現代の福祉国家への変遷について。Public Management & Deliveryの内容と重複する部分もあるが、こちらはもう少し経済学寄り。アダム・スミスやマルクスに始まった、経済思想における国家の役割に関する議論:ケインズ、マーシャル、シュンペーターなどの思想の紹介。その他、政府支出を増加させた歴史的要因などについて。

後半は、財政のツールの紹介。規制(支出の使途の指定)、インセンティブ(補助金、減税)、監視(支出のチェック)など。

Seminar

◇ 政府の役割の変化
◇ 税と福祉の関係

課題図書の論文2本について、アウトプットの場。他の授業のセミナーでは、課題図書で読んだ内容について意見を出し合って議論をするのに対し、この授業はどちらかというと「答え合わせ」に近く、日本の学校の授業に近い。読んだ内容について、正しく理解し、記憶に定着できているかを確認する場であった。やりとりもの方法も、学生同士の議論ではなく、講師の投げかけに対し学生が答えるというスタイル。

論文の1本目は、Davis and Walsh(2016)のイギリスの省庁間における「力関係」の変化(財務省の「力」の拡大)に関するもの。2本目はRuane et al,.(2020)の税制は福祉政策の一部であるという主張の論文。

他の授業のリーディングよりも、インプットの量と質を求められるスタイルなので、より気合を入れて取り組む必要がありそうだ。


LfA French

◇ 時間とルーティーンの表現

時計の読み方と、「いつも何時に~する」という表現の紹介。今回の授業では、複雑な文法が登場しなかったので、比較的苦労せずに取り組めた。ただ、リスニング問題は全然何を言っているのかわからなかった。


S2 Week 2 総評

今週から、どの授業も本格的な内容に踏み込みはじめた。全体的にセメスター1の授業よりも、実務的かつ専門的で、やや難易度が上がったように感じる。それに加えて、これまでとは違った方法で講義やセミナーを進める講師の登場に戸惑う一週間でもあったが、各講師や授業のスタイルはおおよそわかったので、来週からアジャストしていけると思う。

そういえば、木曜日にセメスター1の期末論文の成績が開示されるという話であったが、まだ結果が出ていない。イギリスなので、気長に待つことにする。


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