元住吉に点在する謎のラクガキ「ホモジジ」と向き合った夏
突然ですが、あなたは「ホモジジ」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?
知り合いだったり、いやらしい動画だったり、格好良いキャラクターだったりと、人によって様々だと思います。
人生で出会った数々の物事が、それぞれのホモジジ観を形作ることでしょう。
ちなみに僕はこれが頭に浮かびます。
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「こんなの思い浮かべるのお前だけだよ」
「変なラクガキを見せるな」
「この絵をステッカーにしたい」
大多数の方がこのような感想を抱かれたかと思います。
しかし、その一方で、
「私もこのラクガキをイメージした!」
という方もいらっしゃるはずです。
それも少なくない数。確実に。
どうしてここまで断言できるのか。その理由は後述するとして、まずはこのラクガキ「ホモジジ」について説明させてください。
ホモジジは「元住吉」の電柱に描かれたラクガキです。
元住吉は、東京近郊にお住まいの場合「武蔵小杉の隣駅の街」と言えば伝わる方も多いかと思います。
先の通り武蔵小杉に近く、また「ブレーメン通り商店街」という大型の商店街もあることから、沢山の人で賑わう街です。
かくいう僕も、大学進学を機に元住吉に引越し、その住みやすさから丸6年お世話になりました。第2の故郷と言っても過言ではありません。
元住吉のことはさて置き、ホモジジに話題を戻します。
見た目は、
おでこから上の面積が非常に大きいのが特徴的で、
まるで妖怪の「ぬっぺらぼう」を想起させます。
「ホモ」の意味するところは確定できませんが、
「ジジ」は老人の男性を表す「ジジイ」を指していると推察できます。
愛らしいタッチが癖になりますね。
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お気付きでしょうか?
上に貼った6枚が、
それぞれ別の電柱に描かれていることに。
怖くないですか?
お笑いコンビ「カゲヤマ」の益田さん風に言えば
「怖過ぎやしねえか?」
これは一部に過ぎません。他にも多くの電柱にホモジジは点在しています。
このように、元住吉の様々な電柱に出現するホモジジですが、実はもう一つ特筆すべき特徴があります。
それは消えても必ず復活するということです。
というのも、ホモジジは(恐らく)チョークで描かれているので、雨などが降ると消えてしまいます。
しかし完全に消えてしまっても、数日経つと上から描き直されているのです。
僕が初めて目撃したのは2016年4月で、上の6枚は2023年8月に撮ったものです。ということは少なくとも7年以上、消えては復活し続けているということになります。
これだけの長期間、複数の場所に存在し続けているとなると、多くの方の目に触れているはずです。元住吉に関わりがある方の中では、結構な知名度があるのではないでしょうか。
これが先ほど後述するとした、
『「ホモジジ」と聞いて特定のラクガキをイメージする人が一定数いる』
と断言できる理由です。
試しにインターネットの集合知と名高い「X」で「ホモジジ」をパブリックサーチしてみると、
多くのpostが見つかりました。
ハッシュタグまである始末。
(亜種「騒音爺」は滅多に見かけないレアです)
と、ここまでホモジジについて説明してきましたが、ここからが本題です。
少し自分語りをさせてください。
先日たまたま元住吉に立ち寄った際、久々にホモジジを見かけました。
懐かしさを覚えたのも束の間、
「ーー結局これは何なんだ?」
疑問が脳裏を過りました。
「いつから描かれているのか?」
「誰が何の目的で描き続けているのか?」
帰路についても、疑問が尽きることはありませんでした。
気になる。どうしても気になる。ホモジジが頭から離れない。
SNSやインターネットの掲示板で血眼になって調べましたが、目撃情報はあってもそれ以上は出てきませんでした。
なぜ僕はこんな謎を放置していたんだろう。6年も元住吉に住んでいたのに。
きっと
「いつか偶然描いているところにでも出くわすだろう」
などとでも考えていたのでしょう。
しかしそんなチャンスは終ぞ訪れないまま、僕は違う街へ引っ越してしまっています。
本気で向き合ってない者に真相を知る権利はなかった、ということです。
「沢山の電柱に同じラクガキをし、それが消えたらまた描き直す」
こんなことを何年も続けるなんて、並大抵の覚悟では出来ません。
だったらこちらもそれ相応の覚悟で挑まなければ、謎など解ける訳がない。
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ならば一度本気で向き合ってみようじゃないか、ホモジジに。
例え最終的に真相に行き着けなかったとしても・・・!
能書きが長くなってしまいましたがこのnoteでは、
本気でホモジジに向き合い、
その模様を記録していきます。
最高の夏にします。
●向き合い0日目
最初に「本気で向き合う」とは何かを定義します。
何を以て本気で向き合ったとするか。
僕は
「足繁く通い観察すること」
ではないかと結論付けました。
今までは受け身だったから駄目だった。
こちらが動かなくとも答えが降ってくるのではないかという甘い考えを、ホモジジに見透かされていたのです。
描かれは消え、そして再び描き直されていく様をしっかりと見届ける。
そうすることで見えてくる真実があります。
待っててくれホモジジ。僕が必ず “そこ” に辿り着くから。
そう固く決意したところで、この日は向き合いを終了しました。
最高の夏にします。
●向き合い1日目
8月も半ばが過ぎた某日。
早速現地に行ってホモジジを探しに行きました。
その結果見つけられたのが、上に貼った6つです。
一応再掲します。
休憩を挟みつつですが、2〜3時間ほどかかりました。それで6は多いのか少ないのか。
今後このホモジジ達がどう変化していくかを楽しみに、この日は向き合いを終了しました。
最高の夏にします。
●向き合い2日目
向き合い1日目から2日後。
撮ったホモジジ達に変化があったか確認しに行こうと思ったのですが、生憎の台風により断念しました。
しかし、せっかく時間を確保したのに何もしないのも勿体無い。
ということで今日は、家で出来る作業に従事します。
まずは今後の記録をスムーズにするため、6つのホモジジ達に識別用の名前を付けていきます。
名前があった方がより向き合っている感じがしそうですね。
ということで、名付けた結果がこちらです。
描かれていた場所に因んだ名前にしました。
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まあ、識別出来ればいいので。
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気を取り直して次は、ホモジジが描かれていた場所をマッピングをしていきます。
自分で見つけたものとXにpostされてるものを合わせるとまあまあの数になるので、何らかの規則性があることを期待したいところです。
マッピングした結果がこちら。
黄色い丸がホモジジスポットです。
見ての通り、ホモジジ達は全てブレーメン通り商店街の路地近くに描かれてることが分かりました。
ということは、作者(?)もこの周辺に居を構えていそうです。
私も商店街の近くに住んでいたので、1回くらいすれ違っているかもしれません。
数奇な運命に思いを馳せながら、また家にいてもを何かしら出来たことに安堵しながら、この日は向き合いを終了しました。
最高の夏にします。
●向き合い3日目
向き合い2日目の翌日、台風一過した日の晩。
かなり強めの台風だったので、ホモジジ達にも何らかの変化があったはず。
ということで、夜ではありますが元住吉に向かいました。
駅から近い順に、
「OONOYA」→「浜銀」→「蕎麦」→「公園」→「セブン」→「寮」
と巡っていきます。
さあどうなっているでしょうか。
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え・・・
何も変わってない・・・・・・
新幹線とか止めまくったレベルの台風だったのに・・・・・・・・・
雲行きが怪しくなってきました。
気を取り直して次。
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ちょっとは薄くなってるけど・・・
もう少し消えててくれないと描き直されなそう。
次。
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お、これですよこれ。
ここまで消えていたら、描き直しが期待できますね。
残りはあまり変化が無かったので一気にいきます。
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まだこちらの本気度が伝わってないのでしょうか。それとも足りていないのか?
ホモジジたちはあまり変化を見せてくれませんでした。
次来た時には更なる変化(大本命は蕎麦の描き直し)があることに期待して、この日は向き合いを終了しました。
最高の夏にします。
●向き合い4日目
向き合い3日目から2日後の早朝。
ホモジジ達の変化、描き直し、あわよくば作者との遭遇を夢見て、始発で元住吉に向かいました。
わざわざ始発に乗ったからには大きな収穫が欲しいところです。
今回は3日目とは逆の順番で巡っていきます。
まずは1つ目。
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特に変化なし。次。
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こちらは前回より薄くなっているように感じます(願望フィルターでそう見えるだけかもしれませんが)。
これは次回描き直されていてもおかしくないですね。
この調子で次へ行きましょう。
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いつもと少し画角が違うのは、頭上の鳩群による糞害が怖かったからです。
次はいよいよ、描き直しが期待される「蕎麦」です。
ワクワクしながら向かいます。
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何も変わってないですねえ。
おかしいですねえ。
こんだけ薄いなら描き直しますよねえ普通。
こちとら始発乗ってきるんですけどねえ。
そしてまた電車乗って帰って仕事しなきゃなんですけどねえ。
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ホモジジに罪はありませんよね。
取り乱してしまい申し訳ありませんでした。
平常心を心がけながら次。
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次。
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さっき蕎麦に文句を言ってしまった罰が下ったのでしょう。
そうじゃなければ、いくら何でもここまでクッキリハッキリ残っている訳ありません。
この電柱が他よりツルツルした素材なのを加味してもおかs・・・
ここではたと気付かされました。
またホモジジに対して受け身になっていたことに。
始発に乗ってきたことやこの後仕事があるという事実が、僕を甘えた思考にさせていました。
「あわよくば作者との遭遇を夢見て」だの「大きな収穫が欲しいところ」だの、傲慢が過ぎます。恥ずかしい。
今のままでは向き合う前と少しも変わらないじゃないか。
ホモジジに変化して貰うことを望んでいるだけでは何も始まらない。
積極的にいかねば。
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これが、
本気で、
“向き合う” ということだ。
ありがとうセブンイレブン。
次回こそ、何かが起きる。いや、起こす。
逸る鼓動を鎮めつつ、この日は向き合いを終了しました。
最高の夏にします。
●向き合い5日目
向き合い4日目から2日を経た某日。
こちらからのメッセージに応答があるかを確認しに元住吉へ向かいました。
蜜を塗った木にカブトムシがいるか見に行った、あの夏の日の朝を思い出します。
早く確認したい気持ちを抑え、とりあえずOONOYA以外を確認へ。
一気に貼ってきます。
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・・・想定内想定内。
今日はOONOYAだけを見にきたようなものですから。
きっと想いは伝わっている。
確信めいた予感を持って向かう足取りは、いつもより軽く感じました。
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勿体ぶっても仕方ありませんね。
それではいきます。
ご査収ください。
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ちょっとだけ浮き出てくる、ときましたか。
ふーん、なるほどね。
そうですか。
この日は向き合いを終了しました。
最高の夏、無理かもしれません。
●向き合い6日目
今日は前々から楽しみにしていた「Jeanne Trois」のチョコクッキー缶が届きました!
めちゃ美味しかったです!
●向き合い7日目
今日はお笑いコンビ「ニューヨーク」さんの単独ライブ「虫の息」を配信で観ました!
めちゃ面白かったです!
●向き合い8日目
今日はBOOKOFFから買取額アップのクーポンが届いていたので、これを機に不要な本をまとめました!
めちゃスッキリしました!
●向き合い9日目
実はこの数日、わざとホモジジから離れて過ごしていました。
今の精神状態のままホモジジと接しても、互いのためにならないと考えたからです。
ホモジジとは無縁なことを、精一杯楽しみました。いや、楽しもうとしました。
しかし、
「Jeanne Trois」の超豪華版パイの実みたいなやつを食べている時も、
ニューヨーク単独の幕間V「嶋佐軍団合コン」を観ている時も、
父親から借りパクしている町田康著『告白』を売るか迷っている時も、
頭の片隅にはいつも、ホモジジがいました。
僕は弱い人間です。
すぐに人を見限り、遠ざけてしまう。
今回だってそうです。
自分の都合を押し付けた挙句、勝手に裏切られたと感じてしまった。
なのに、結局忘れることができませんでした。
こんな僕に、ホモジジと向き合う資格はあるのだろうか。
そんなモヤモヤを抱えながらふとiPhoneのカメラロールを見ると、
照れ臭そうに笑うホモジジと目が合いました。
そうです。
いつだってホモジジは、
こちらに微笑みかけてくれていました。
ごめんよホモジジ。
僕もう一回、君と本気で向き合ってみるよ。
明日、また元住吉に行ってみます。
例え一切の変化がなかろうと、そんなの関係ありません。
他者と真剣にぶつかり合った。その過程が大切なのですから。
自分の中で何かが変わろうとしている前触れに身震いを覚えながら、この日は向き合いを終了しました。
最高の夏にします。
●向き合い10日目
最後に元住吉に訪れた日から、ちょうど1週間経ったひと日。
元住吉駅に着くと、かつてない程の人混みに出迎えられました。
駅近くの「住吉神社」で夏祭りが催されているようです。
出店で買ったであろうイカ焼きやかき氷を食べ歩く人々を尻目に、目的地に向かいます。
思えば向き合いを始めてからは1-2日置きに見に行っていたので、こんなに期間を空けたのは初です。ホモジジ達に人見知りしてしまうかもなあ。
そんなことを思いつつも、不思議と足取りは重くありませんでした。
まずは前回非道い対応をしてしまったOONOYAに謝りに行こうと思います。
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↓
え・・・
もしかして・・・・・・
次を急ぎます。
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・・・・・・
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描き直されてる。
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・・・
僕は自然と走り出していました。
少しでも早く、
ホモジジ達に会いたい。
その一心で。
やっぱりホモジジは僕を見捨ててなかったんだ。
描き直された姿で待っててくれていたんだ。
待たせてごめんね。ただいま。
走っていた数十秒間、僕とホモジジが一つになったのを感じました。
この数週間の記憶が、走馬灯の如く駆け巡っていくーー
すると瞬間、脳内に閃光が走り、
僕は真理に触れました。
ホモジジとは、
ホ 本気で何かと向き合いたいと考えている
モ 者の前に現れてそのチャンスを与える
ジ 慈愛の大明
ジ 神
を意味していたのです。
そうだったんだね、ホモジジ。
あの日見かけたのは、偶然じゃなかったんだ。
君と、いや貴方と過ごしたこの2週間は、僕を成長させてくれました。
ありがとう。
最高の夏になりました。
【終わりに】
何者かになりたい。でもどうすればいいか分からない。
一向にチャンスは訪れないし、待っているだけの自分に嫌気が差している。
そんなモヤモヤを抱えている方。その気持ち、痛いほど分かります。
分かり過ぎるからこそ、安易なことは言えないし、言う資格も持ち合わせていない。
それを承知で、あえて言います。
少しでも何かを変えたいという気持ちがある方は、一度ホモジジを見に行ってみてはいかがでしょうか。
ホモジジを見てピンときたら僕と同じく本気で向き合ってみればいいし、何も感じなければそのまま帰ってもいい。
どんな選択したとしても、ホモジジはあなたを慈愛で包んでくれることでしょう。
照れ臭そうな表情を浮かべて。
・・・じゃあ騒音爺は何?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
〜ホモジジforever〜