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転職25回 ~5回 VOl.1~

前回までのあらすじ
・新卒でブラック企業に就職したものの、約2ヶ月で退職。
・IT企業に就職するも、借金返済が追い付かずに退職。
・ソープランドに転職。過酷&ハイリスクなので退職。
・ボッタクリヘルス店。天才的詐欺師の才能を発揮するが1日で退職。
・イメクラ勤務。風俗嬢Tちゃんとの同棲を解消しボロアパート暮らし。退職。

えー、初めてご覧になった方のために上記を補足しておきます。
20歳そこそこで大借金をしまして、返済のために高給を稼げる風俗店のボーイとして働きました。イロイロあって退職。今後は子供時代からの夢であった「探偵」になるために、人生修行&借金返済の転職を目指すのであった…という所です。

皆さん、探偵になるにはどんなスキルが必要だと思いますか?

「洞察力」、「観察力」、「推理力」→ごもっともですが、ドラマ、映画、アニメの影響を受けすぎです。
「ベスパの運転」、「腕時計型麻酔銃」→ドラマやアニメの影響を受けすぎです。

まぁ、普通の方は分からないですよね。
もちろん、この頃の自分も探偵に必要なスキルなど分かりませんでした。
それでも、イメージ的になんとなく関連しそうな仕事を選ぶことにしました。

ここからは20年も前の記憶なので自分でも定かではない部分もあるのですが、当時の自分は「探偵に関連しそうな仕事→警備員」と考えました。果たして警備員の仕事が探偵業と関係あるのか?

確かに、探偵の仕事の一部には「ボディーガード」もあります。しかし、そのような仕事は非常にイレギュラーでしょう。だいたい、浮気調査ばっかりです。
そう考えれば警備員だってボディーガードの仕事はイレギュラーです。普通は工事現場で旗を振って、車両や人を誘導するのがメインです。探偵と警備員の共通点があるとすれば、「ひたすら立ちっぱなしでいる事」ぐらい。実際にはあんまり共通点もありませんが、当時の自分には知る由もありませんでした。
あ、でもですね、警備業というのは元々は探偵業界の人たちが日本に導入したそうですよ!そう考えると、まんざら無関係とは言えませんな。

さて、そんな感じで警備業界の門をくぐる事にいたしました。
警備会社の正社員ではありません。アルバイトですので一発合格です。
ちなみに一発合格は当然なので別に自慢ではありません。

皆さん、工事現場やビル内での警備業務をしている警備員の方をジックリとご覧になった事はありますか?結構な確率で、お歳を召した男性なハズです。お歳を召した女性も多いです。

そうです、警備業はヤングにはあまり人気が無いのです。
脱線します。私の主観ですが、警備業についているヤングは「太っているor黒縁メガネをしている」確率が非常に高いと思っています。私の周囲だけかもしれませんが、どうしてもそんな気がします。どなたかに統計を取ってもらいたいぐらいですが、脱線はこのぐらいにしておきましょう。

ちなみに当時の警備員の給料は日給7~8千円と薄給です。ただ、「1日2現場」労働することで、1日1万5千円ほど稼げると聞いていました。1日2現場とは実質24時間不眠不休で働く事なので、実際には何回かしかできませんでしたが…。というか、労働基準法的にどうなのか…。

さて1週間ほどの研修期間を経て、警備員として実戦デビューです。
主な配属先は「どこかの工事現場orビジネスモールの駐車場整備」。

一番多かった仕事は、道路工事の片側交互通行でした。
片側2車線の道路の1車線を工事する際、アッチとコッチから車を交互に通過させるアレです。説明がすさまじく雑なのですが、ご勘弁ください。

今でも車に乗っていて道路工事の現場に出くわすと、片側交互通行をやっているオッサンなどをじっくり見てしまう事があります。別になんてことない仕事なのですが(警備員の皆さんに怒られるかもしれませんが、経験者談なので勘弁して下さい)、担当する警備員によって車両を流す効率が変わったりするので不思議なものです。
また少し脱線しますが、私の中に「有能な警備員」と「ちょっとアレな警備員」の見分け方があります。片側交互通行をしている時に、仕事をしながら同じ方向をボーッと見ている事が多い人は「ちょっとアレな警備員」だと思います。逆に、常に周囲の状況を気にしてキョロキョロとしている人は有能のような気がします。たまに警備員が工事車両などに接触する事故がありますが、恐らくキョロキョロしないタイプなのでしょう。
実はこれは探偵も同様です。張り込み中、同じ所をボーッと見ているのはダメ探偵だったりします。

警備業で比較的ラクだったのは、マンション外壁のペンキの塗り替え現場でした。マンションの敷地内で、住民の方が危ない所をウロウロしないか見張るのです。住民の方が通るたびに「すみませーん」「ご迷惑をおかけしてまーす」とつぶやくのみ。ただ、1日8時間の勤務時間が16時間ぐらいに感じるのが難点です。まぁ、このヒマさに耐えるというのは探偵業とも大いに共通するのですが…。

所々に探偵の経験談が出てきてしまっているので、いずれ自分が探偵になるという事がバレバレなのですが、気にしないで先に進みましょう。

変わった業務といえば、ド田舎の公園内に住み着いた数十人のホームレス(?)の方々を追い出すというのがありました。警備員が数百人配備される、大掛かりな仕事だったと記憶しています。
どんな仕事をしたのか記憶が定かではありませんが、警備員全員が腕組みをして、ノシノシと行進をした記憶があります。ホームレス(?)の方々を公園の端っこまで追いつめて、輪になって囲みました。するとなぜか、ホームレス(?)の方々が童謡の「ふるさと」を合唱しはじめます。何を書いているかご理解頂けますか?こっちも何が起こったのかいまだに良く分かっていません。でも「ふるさと」の1番だけを延々と聞かされたのだけは覚えています。
今すこし考えてみたのですが、ホームレスというよりは自然派の団体か何かだったのかもしれません。うーむ、わからん。

それから東名高速道路の工事。皆さんご存知の、高速道路をほじって埋めるだけの大作業です。良く分からない仕事のために、高速道路は大渋滞。ドライバーや同乗者の皆さんの怒りゲージをMAXにする毎年恒例のイベントですね。
あれをやっている時の、ドライバーから浴びせられる冷たい視線。声は聞こえませんが、口は明らかに「フザケルナ」とつぶやいております。場合によっては空き缶などが飛んでくるようなので、おちおちしていられません。
皆さんも、高速道路の工事渋滞に巻き込まれても警備員に八つ当たりするのはおやめ下さいな。彼らは薄給で雇われているだけです。彼らがつくった渋滞ではありませんぞ。

思い出深いのは六本木ヒルズの工事現場です。ヤングな方は想像できないかもしれませんが、その昔は六本木ヒルズが建っていなかったのですぞ(あたりまえ)。
工事車両が工事現場に入る時に誘導するだけの簡単なお仕事でしたが、お昼前になると楽しみにしていたイベントが発生します。右翼街宣車の登場です。
お馴染みの軍歌をガンガン流しながら現れる黒塗りのトラック。拡声器で「住民の許可も得ず巨大ビルを建てる〇〇を許すな~」などと激しく盛り上げます。
もともとはド田舎育ちの自分ですので、そのような方々を間近で見る機会はありませんでした。なので、毎日ワクワクしながらお待ちしていたのを覚えています。

そんな感じで3ヶ月が過ぎました。
工事現場の規模によっては警備員が複数名配属されるのですが、その中で最も信頼できる警備員が「隊長」となるシステムでした(ちなみに隊長になると日給が300円ほどアップします)。普通は経験の長いベテランが隊長になるのだと思うのですが、警備員経験3ヶ月でマジメだけが取り柄の自分が隊長に指名されることが多くなりました。
恐らく、経験よりマジメさが評価されたのでしょう。まぁ、そのぐらいやる事が単純なのです。
もはや、警備業に飽きていました。

このまま警備員をやっていても、得られる経験はあまりないなと思いました。
得られるスキルもありません。5時間なら立ちっぱなしでも平気になったぐらいです。

それに、アルバイト求人誌を見ていたらもっと稼げる仕事を見つけてしまいました。
日給1万4千円。警備員の約2倍です。借金返済に追われている自分にとっては、転職は自然な選択肢でした。警備員を辞め、あらたな道へと進みます。
こうして、高給に釣られてしまった自分は、「飛び込み営業」という日本屈指の過酷な戦場へと旅立つことになったのでした。

それでは、また次回。

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