見出し画像

転職25回 〜13回 Vol.1〜

前回までのあらすじ
・新卒でブラック企業に就職したものの、約2ヶ月で退職。
・IT企業に就職するも、借金返済が追い付かずに退職。
・ソープランドに転職。過酷&ハイリスクなので退職。
・ボッタクリヘルス店。天才的詐欺師の才能を発揮するが1日で退職。
・イメクラ勤務。風俗嬢Tちゃんとの同棲を解消しボロアパート暮らし。退職。
・探偵に憧れて、なぜか警備員。飽きて退職。
・高給に釣られてケーブルテレビの飛び込み営業。心が折れて退職。
・再びIT業界。カチャカチャしている内に心の傷が癒えて再び探偵を目指し退職。
・バイク便。ロシア大使館の車両とクラッシュで恐ロシア。退職。
・ADSLサポートコールセンター。金髪になる。飽きたから退職。
・なぜかホストクラブ勤務。ニワカホスト瞬クンとしてデビューするも1日で退職。
・路上でADSLモデムを配布。高給な仕事を紹介されて退職。
・超楽勝&高給の光回線調査。事業所のボスとケンカし自主退職。

えー。20代前半に背負った借金はいまだに残っているというのに、そこそこ高給な仕事をくだらない理由でアッサリ辞めてしまった所から話はスタートです。

仕事は辞めても返済日は待ってくれません。毎度毎度ではありますが、あわてて仕事を探します。
職種はいまさら気にしません。とにかく、そこそこ給料が高くて、できれば週給で払ってくれる会社がターゲットです。そうなると正社員は無理なので、再び派遣会社のお世話になります。

すると見つかりました。またまたマニアックなお仕事が。
それは「アダルトビデオの卸問屋」です。アダルトビデオは…ご存知ですよね?

ちなみに、当時はまだDVDが普及しきっておらず、世の中のアダルトビデオはまさにビデオテープが大半でした。もちろんアダルト動画をダウンロードなんて時代ではありません。アダルトな動画が見たいのであれば、レンタルビデオ店でアダルトビデオを2泊3日なんかしてきて、ご自宅でビデオデッキにアダルトビデオをガチャッとセットするか、普通にアダルトビデオ販売店でアダルトビデオを購入する時代だったのです。
なんか、アダルトビデオ連呼で申し訳ないです。

そんなアダルトな会社ではありますが、もちろん面接&採用&出勤します。

さて、自分の仕事といえばアダルトビデオ卸問屋で取り扱っているアダルトビデオのデータベース管理(在庫管理)がメインです。

基本的な業務内容のご説明です。まず、新作アダルトビデオが入荷されます。パッケージを見て、タイトル、レーベル、出演女優、定価、入荷本数などを入力するのです。
この作業をしていると、たまに困ったことがありました。アダルトビデオのパッケージを見ていたら下半身がスタンドアップした…という事ではありません。当方、ソープランドのボーイやらイメクラで住み込み勤務をしていたアダルト強者です。その程度でスタンドアップするような玉ではないのです。(もちろん不能者でもありませんよ)
困ったのは、アダルトビデオのタイトルがくっだらない時があったからです。今はどうなのか知りませんが、当時はダジャレみたいのが流行っていました。
あまり覚えていませんが、例えば「濡れよんチンちゃん」とか「濡れる大捜査線」、「透けパン刑事」等、ここにはあまり書けないようなトンチキな商品がありました。それを、静かなオフィスで真面目な顔してパソコンにカチャカチャと入力するのです。馬鹿らしくて、つい笑いそうになるのを堪えるのに精一杯でした。
ちなみに、当時は「真面目キャラ」を通していたので我慢しましたが、いまだったら薄ら笑いぐらいはするかもしれません。

それから、アダルトビデオ卸問屋ならではの仕事もありました。ご存知のように、合法的なアダルトビデオには「モザイク」が必須です。モザイク処理がなされていないアダルトビデオを販売してしまうと、捕まってしまいます。
なので、新作のビデオ(もうアダルトビデオと入力するのが面倒なので、以下ビデオです)については、1本1本、最初から最後までモザイク処理の抜けが無いのかチェックをする業務があったのです。
もしかしたら、「新作ビデオを最初から最後まで見るだけの仕事なんて最高!」なんて思われるかもしれませんが、これがとんだ生き地獄。まず、会社内です。何もできません。それに、必ず数名でチェックをしなければいけないという決まりがありました。それから、どうでも良いシーンを早送りする事もできません。最初から最後まで、イライラムラムラしながらビデオ鑑賞するのです。「もう2度とやりたくない業務ベスト3」があるのであれば、これは確実にランキングします。

まぁ、そうは言ってもやっている事はそんな簡単な仕事ばかり。楽チンなものです。
などと思っていた矢先、この職場では大きな問題にぶつかりました。人間関係です。

前職では、酒の席で事業所のボスとケンカをするという不細工ぶりを発揮してしまいましたが、基本的には自分は人と衝突するという事がありません。どこの職場でも(シラフの時は)良好な人間関係を築いていました。例えば、人間性がちょっとアレな人がいても、何とか話を合わせてナアナアでやっていくスタンド能力と言えます。単にガマン強い八方美人とも言えます。お酒を飲んでしまうとガマン強さのリミッターがぶっ壊れてしまうのですな。

そんな自分ですが、この職場では仕事そっちのけで人間関係の改善に取り組まざるを得ない状況になりました。

自分が入社した時、事務所には2人の女性正社員がいました。
アダルトビデオの卸問屋に勤める女性事務員…。何やら淫靡な響きがありますが、そのような幻想は一瞬で吹っ飛ぶぐらいのキャラクターをお持ちの2人です。そのような業種の会社でお勤めだからなのか、元々そのような性格なのか知りませんが、卑猥な放送禁止用語を日常的に大声で発します。そのような言動をするのはオッサンぐらいだと思っていたのですが、この2人は20代半ば。しかし中身はオッサンのようで、同僚の男性社員に怒鳴り散らして喧嘩を吹っかける狂気のコンビでした。便宜上、ビューティーペアとでも名付けましょう。

このビューティーペアに対抗するのが、自分の隣の席にいる中国人の女性社員です。便宜上、シャオミーと呼びましょう。
彼女は普段は非常におとなしくて、淡々と仕事をこなします。別に早くも遅くもない仕事ぶりでしたが、やはり問題がありました。今となれば「ああ、中国人っぽいなぁ」と思うのですが、とにかく「私の仕事はここまで。後は知らない」というスタンスの強いお方なのです。そして、何か自分に非があったとしても決して認めません。声を大にして反論してきます。

そんなビューティーペアとシャオミーに囲まれて仕事をしていたのですが、ちょっとした事でビューティーペアVSシャオミーの30分1本勝負がスタートします。
ビューティー①「ねぇ、シャオミーちゃん。例の仕事は進んでいるの?」(冷静)
シャオミー  「私、知らないよ。私、忙しいし」(冷静)
ビューティー①「なにそれ?みんな忙しいんだからやってよ!」(激怒)
ビューティー②「この前、シャオミーがやるって話になったじゃん!やれよ!」(激怒)
シャオミー  「私、知らないよ!私、忙しい!」(激怒)

さっきまでシーンっとしていた事務所が、わずか15秒ほどで戦場になります。その件に関しては部外者である自分ですが、いっつもヒヤヒヤしていました。まぁ最終的には、
ビューティー①「じゃあ派遣の人に手伝ってもらって!」(冷静)
自分     「(えっ?!)…はい…」(冷静)
シャオミー  「やっといて!私、知らないよ!私、忙しい!」(まーだ激怒)

そんな感じで、毎度とばっちりの仕事を引き受けていました。

そんなある日、この2大勢力の争いに新たな展開が訪れます。
上記のように、何かと仕事を回される関係で自分の仕事が忙しくなってしまい、もう1人派遣社員を雇うことになりました。
そしてやってきた女性派遣社員。


この女性の登場によって、もともとトンチキだったこの職場にさらなるカオスが訪れたのです。


いいなと思ったら応援しよう!