【極み文庫】「交差する影」
「交差する影」 短編 池澤 空
昼食後の午後授業はことのほか眠い。14歳の「空」少年の眠気も頂点をむかえていた。社会科の担当はいつも酒を飲んだように赤い「たこちゅう」である。先生の話も先生にも全く興味がない。
始業ベルが鳴って、数分で眠りについてしまった。背が高い訳ではないのに、窓側の一番後ろの席が「空」の指定席。午後のまどろみは気持ちよく、窓を開ければ風も心地いいのだが開けさせてくれない。眠りにつくと、校庭に白い犬がいるのが見える。犬は校庭を時計とは逆の廻り方でぐるぐると廻っている。その姿が、心なしか少しずつ大きくなっていくのが見える。
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