#13 ジミ・ヘンドリックス
ジミ・ヘンドリックス 。
言わずと知れたギタリストであり、エレキギターの可能性をグンと押し広げたミュージシャンである。
彼よりテクニカルだったり、速弾きだったり、ピンポイントでは上回るギタリストは沢山いるだろう。
しかし彼が他のギタリストと大きく違える点は、他人に伝えたいという大いなる想いの量だと思う。
「客は今日のプレイに拍手をくれたが違うんだ、そうじゃない。俺が伝えたいのはこんなもんじゃないんだ」と、感じたこと、見えてしまったことを100%音に出来なかったもどかしさを常に感じているようなプレイ。
その収まりきれない、怪物のような表現衝動だと私は思う。
そりゃギターも燃やしたくなるだろう。
🎸🔥
そういった得体の知れない「何か」を今のミュージシャンからはなかなか感じ取れない。
勿論、年齢を重ねた者の思い出補正があるのかも知れないが。
近代音楽史に於いて彼の登場は「事件」だったと思う。
この人の出現を「江戸時代にファミコン」と言った人がいたがなるほどと思う。
ロックが単に音楽のいちジャンルに留まらず、それ自体が時代の異議申し立ての武器となったような大きなターニングポイントは1969年のウッドストックだと思う。
当時アメリカではベトナム戦争が泥沼化し、徴兵で駆り出された若者が戦死してゆく。
それに異を唱える若者の間に起こったフラワームーブメントの波が高まりつつ、また反戦運動も起こり始めた頃に催されたウッドストック。
愛と平和、武器の代わりに花をと謳われ、長髪に汚らしいTシャツ、ジーンズというスタイルの若者達を熱狂させたそのコンサートの白眉は間違いなくジミヘンドリックスだろう。
今まで聞いたことのないような爆音とノイズの中、演奏されたスター スパンクルド バナー ・アメリカ国歌。
アメリカの行く末に不安、そして不満を感じていた若者にアメリカ人であることを改めて認識させ、自分達のやり方で世の中を変えていこうと決心させたそのきっかけになったのがジミの演奏であると思う。
ロックという言葉は50年代からあったけれども、音楽の いちジャンルに留まらずカウンターカルチャーとしての大きな柱にもなったその瞬間にジミヘンドリックスはロックアイコンになったと思うし、ロックは別のものに生まれ変わったように思う。
そして時代は1970年代へ突入する。