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愛がなんだとかなんとか

RCサクセションの忌野清志郎が生前残した
「コンサート会場の客席を見渡すとみんな清志郎のカッコしてんだよ。不気味だぜ。」 
という言葉がある。

確かに80年代にはRCファンは奇抜なメイクと派手な衣装の清志郎を真似たスタイルでコンサートに押しかけていた。この「愛する人と同一化したい」というファン心理はなんだろう。清志郎はその対象になってゾッとしたようだ。僕は学生時代によく総武線を利用していたので、東京ドームに向かう車中で「今日はKissか」「今日は矢沢永吉か」とその日行われるライブがわかったものだった。ローリング・ストーンズのライブの日にはそこらへんにメイクまでしたキース・リチャーズ風のおっさんがいっぱいいた。キースというか皆さん年季の入ったゲイバーのママみたいだったけど。

僕はコスプレまではいかないが、好きなミュージシャンの曲を「自分でもやりたい」と思いギターでコピーすると、構成・コードなど曲の構造の理解が深まると作り手の考えや演出が見えて来てそれまで知らなかった世界に触れた気がして感動する。絵画の模写をした時も同じように感じたものだ。
最初はただ憧れで後を追っていただけなのが、対象を追体験・同一化することによって自分自身が違うステージに上がるという現象は僕自身実体験としてわかる。

さて、今泉力也監督の『愛がなんだ』を観た。
なんとなく観たらハマりそうな予感がしていたのだが、やはりドンズバにハマってしまった。東京の描写が最高。映画に出てくる女性はみんなチャーミング。
岸井ゆきのもとても可愛かった。

物語の後半から、愛とか恋とかそんなことは超越した境地に主人公は向かって最後に恋してた男と同化してしまう。このラストシーンの解釈は観た人様々かもしれないが、僕はこれは好きを突き詰めた究極のラストではなかろうかと思った。
新作『街の上で』が公開延期になったのは残念だけど、来年の楽しみにしておこう。今泉監督が描く下北沢、面白くないわけがないと思う。


岸井ゆきの



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