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再会
この話は、私が生まれて初めて飼った犬
のお話しです。名前は星丸。ちょっと大きなクリーム色のポメラニアンです。
暑い夏もそろそろおしまいのある日の朝、いつも散歩に行く公園で、星丸に会いました。彼は実家にいた当時のまま、リードは勿論、首輪も着けず、勝手に一人でテクテク、私の前方を歩いてました。
私の視線に気が付いたのか、星丸は私の方にくるりと向き直り、此方に向かってかけて来ました。
お前に会いたくて、近くの公園に来てみたよ。元気だったか?
ありがとう。何十年ぶりだろう?
首輪もリードもしてない犬は、あんたしかいないから、直ぐにわかったよ。
今はこういうのダメなんだろう?
うん。昔の私達みたいに、ルーズに散歩してる人なんて、今はいないんだよ。
そうだ。パパ、元気だぞ!あと亀のデミオも。
え!デミオも?
そうだよ。お前の大事な亀だったんだろ?
俺の後に死んだ奴らは、みんなオレが面倒みてんだよ。
星丸は、胸を張り威張って答えました。
だけど私は、星丸が世話してるんじゃなくて、多分、みんながお世話してくれてるんだろうと思い、みんなの手をやかせてる星丸を想像したら、ちょっとおかしくなって、くすりと笑ってしまいました。
そんな私を星丸はチラリと見ながら、
更にこう言いました。
だからさ、お前が今飼ってる奴も
オレが面倒みるから安心しろ。それから
ママも
ママと言ったあと、星丸はちょっと悲しい顔になりました。
今ママは、星丸がいる公園から、ずっと離れた場所に住んでいます。私は、
会いに行ってみたら?
と言いました。
いいよ。今は猫いるだろ?
オレは猫が苦手なんだよ。
猫を見かけると、狂ったように吠えてたね。
あいつらのシャーって言う
鳴き声が嫌いだよ。
そう言うと、星丸は草の匂いをクンクンかいで
じゃ、オレもう行くよ。
オレさ、朝は小さい公園。夕方は
大きい公園にいるから。いつでも会いに来てくれよ。
そう言うと、星丸は私の目の前から
スーッと消えてしまいました。
目の前には、枯れて落ちた
ねむの木の花が落ちていて、
微かに秋の虫の声が、聞こえてるだけでした。
ふと足元を見たら
黒色のバックスキンのスニーカーに
星丸の金色の毛が付いていました。
やっぱり夢じゃなかった。星丸は私に会いに来てくれたのでした。
少し涼しくなったら、母と懐かしい公園を
訪ねてみよう、そう思ったとき、星丸の金色の毛は、サッと吹いた秋風が、何処かに運んで行ってしまいました。
(了)
昔普通のポメラニアンにしては少し大きく、クリーム色をしたその犬は、私が昔飼っていた犬にそっくりだった。