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【連作ショートショート】悪魔の花(6)

 俺たちは2台のクルマに乗り込み、一路日光へ向かった。
 ユミコとクワタとじいさん、いや、クワタ先輩は、クワタんちの配達用の軽バンに乗り込み、ケイコと俺は、この前納車されたばかりのポルシェの電気自動車に乗り込む。
 ガソリン車よりも環境に配慮した電気自動車に乗った方が、植物学者としてハクが付くと思い選んだクルマだ。しかし、自宅のマンションの周りをうろつくくらいで、実はまだ遠出の経験がない。カーナビを点けてみる。さすが日光、要所要所に、充電ステーションの表示がある。もし充電がなくなっても、ステーションがあるなら安心だ。 
 俺はホッとして、ハンドルを握り、センターメーターを見た。なんと、バッテリーの残量が半分を切ってた!なんで自宅を出る時に、バッテリー残量をチェックしなかったんだよ!俺!しかもマズイことに、この近くに充電ステーションはないのだ。

どうしたの?クワタ君たち、もう出発しちゃったわよ。

助手席に座っているケイコが、話しかけてきた。

俺はチラッとケイコの顔を見てから、前に向き直って、

そうだな。俺たちも行くか。

そう言ってアクセルをふんだ。大丈夫。騙し騙し行けばどうにかなる。途中の大きなパーキングエリアには、充電ステーションがあるから、ここで充電すれば良い。

 ポルシェは音もなく、滑るように動き出した。

(第6話 レッドプリン)

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